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忍び寄る脅威14

 家の恨みに燃えながら北門へと向かう。

 北門に近付くと、人が多く集まっている場所があった。恐らくあそこに辺境伯が居るのだろう。

 そちらに向かって声をかける。


「冒険者のアークだ。カレオラから戻ってきた。辺境伯の指示に従うように言われてこちらに来たがどうすればいい?」


 俺の呼び掛けに少し周囲がざわついたが、やがて辺境伯が姿を現した。


「アークか、カレオラから戻ってきていたのか」

「つい先程な。冒険者ギルドのマイラからは、攻撃の激しい場所を空中から援護してくれと言われた。浄化(プリフィケーション)なら使えるから、外壁の外から援護できるぞ」

「おお、そうか。なら……」

「辺境伯様!ギルドマスター殿がアンデッドに囲まれ孤立しそうです!」

「なんだと」


 辺境伯に俺が浄化(プリフィケーション)を使える事を説明していると、突如として兵士が現れ、辺境伯へと報告を入れた。

 その報告内容は、俺としても無視できないものだった。


「防衛戦じゃなかったのか?なぜ囲まれるような状況になっている?」

「冒険者ギルドの立てた作戦の一環だ。余裕の有るうちにアンデッドの端を削って数を減らし、危険になったら南門に逃げるとの事だったが、想定外の事が起こったのだろう」


 俺の問いに辺境伯が説明をしてくれているが、俺は正直それどころではなかった。フリーダはちょっと困った性癖が有るものの、俺が冒険者として生活していけるように様々な便宜を図ってくれた。

 それにこの先の冒険者生活にとっても、冒険者ギルドのトップが俺に対して好意的であるというのは、今後俺に計り知れない利益をもたらすだろう。


「俺が助けに行こう。構わないな?」

「構わない。助けに行ってやってくれ」


 一応許可を取るように辺境伯に尋ねたが、断られても従うつもりはなかった。俺の気持ちを知ってか知らずか、許可を出してくれたので助かったな。

 いや、辺境伯としてもこの非常時に冒険者ギルドのトップが居なくなるのは痛手だろうから、助けに行くという選択は当然だったのかもしれない。


「フリーダはどこに居る?案内を……いや、直接飛んでいった方が早い。方角だけ教えてくれ」

「こっちです。こっちの方角になります」


 辺境伯に報告をしに来た兵士に尋ねると、彼は外壁の一点を指差した。方角さえわかればそれで十分だ。

 俺は一気に飛び上がり、外壁よりも高度をとる。すると壁の外の景色が目に飛び込んできた。

 見渡す限りのアンデッドの大群。平原が広がっていたはずのそこは、一面がアンデッドに埋め尽くされていた。

 聞いてはいたがとてつもない数だ。この数を相手に外で戦うなど無茶が過ぎる。

 外壁を飛び越えて直ぐに視線を下に向けると、フリーダと数人の冒険者の姿があった。まだ戦っているようだが、完全にアンデッドに取り囲まれている。

 何はともあれ、まだ無事のようで何よりだ。フリーダ達とアンデッドの間に割って入るように着地する。


「アーク君!?帰ってきていたの?」

「ついさっきな。説明は後だ、今は逃げるぞ。殿(しんがり)は俺が引き受ける。血路を開くんだ」

「わかったわ。あなた達、聞いていたわね。アンデッドの少ないこちら側を切り開くわよ!」


 俺の姿を見たフリーダは驚いた様子だったが、俺が声をかけると何を優先するべきかを直ぐに理解してくれたらしい。取り残された冒険者に指示を出して脱出のための行動をとり始めた。

 この辺りの対応は、流石はギルドマスターと呼べるものなのだろう。

 俺はといえば、尻尾で一帯を振り払った後、念のためフリーダを含む冒険者全員に治癒(ヒール)をかけた。これまでの戦闘で怪我をしていたとしても、これで完治したはずだ。

 冒険者達も治癒(ヒール)をかけてもらった事で、多少の怪我なら治してもらえると理解したのだろう。動きがみるみる良くなっていった。


 道を切り開くフリーダ達の後方に陣どり、彼等を後ろから攻撃しようとするアンデッドが現れたら尻尾で振り払い、怪我人が出たら治癒(ヒール)をかける。

 そんな事をしばらく続けていると、ようやくアンデッドの切れ間が見えてきた。


「頑張れ、もうすぐ囲みを抜けるぞ」


 視線の高い俺以外は、もうすぐアンデッドの囲いから出られる事がわかっていないだろうから応援の意味も込めて伝えたところ、彼等も気合いが入ったようだった。

 そして間も無くフリーダ達はアンデッドの囲みを突破した。


「まだ休むには早いわよ。急いで南門から中に入らないと」


 気の抜けそうになっている冒険者達を叱咤し、フリーダは南門に向かって走っていく。

 ここまで来ればまたアンデッドに囲まれるような事は無いだろう。とはいえ、安全に外壁の中に逃げ込めるようにもう少し時間を稼いでおくとしよう。


「浄化(プリフィケーション)、浄化(プリフィケーション)、浄化(プリフィケーション)……やっぱりいまいちだな」


 ここまでにも合間をみて浄化(プリフィケーション)の魔法を使ってみたが、どうにも効率がよくない。いや、魔力的には全然問題ないのだが、時間の効率が悪いのだ。

 浄化(プリフィケーション)の魔法は単体を対象とする魔法のため、俺が尻尾を振るった方が効率がいいくらいだ。

 これはあれを使った方がいいかもしれない。



誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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