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忍び寄る脅威13

 翌朝、日が上る前にマーカスは起き出してきた。早めに休んだ事もあって、起きるのも早くなったようだ。

 予定よりも大分早く起きてきたので、疲れが残っていないか心配だったが、しっかりと休めたようで、顔色などに疲労の色は見えなかった。

 手早く朝食を済ませ、日の出と共に飛び立つ。ひょっとしたらマーカスも早く帰りたいと思っているのかもしれないな。


 

 日も上り、朝と言うには遅い時間になった頃、遠くにフィーゲルの街が見えてきた。出発を早くした事によって、昨日マーカスが言っていた時間よりも早く帰り着く事が出来たようだ。


「ようやく帰ってきたな。門の前に降りればいいのか?」

「ちょっと待ってくれ。どうも様子がおかしい」


 出発の際には冒険者ギルドの前から飛び立った事を思い出してマーカスに尋ねると、何やら気になる事が有るようで少し緊張したような声が返ってきた。

 

 「日中にも関わらず、南門が完全に閉じられている。まるで戦時下みたいだ。何か大型の魔物が出現したのかもしれない」

「どうすればいいんだ?」

「とりあえず飛んだまま門に近付いてくれ。見張りが居るはずだからどうなっているのか話を聞こう」


 マーカスの言葉に従い真っ直ぐ南門へと向かう。

 近付くにつれて街の様子がよく見えてくる。南門の外壁には多くの兵士が詰めていて、慌ただしく動いているようだ。

 何人かは俺に気が付いていて、こちらを指差し何かを叫んでいるようだ。

 ふと思ったんだが、非常時に近付いたりしたら攻撃されないかな。

 そんな懸念を持ったが、幸いにも攻撃されるような事もなく、外壁のすぐ横にたどり着く事が出来た。


「冒険者ギルドのマーカスだ。カレオラの街に薬を届けて帰ってきた。南門が閉じているようだが何かあったのか?」


 マーカスの呼び掛けに、恐らくこの場所の責任者と思わしき兵士が声を返す。


「街の北側からアンデッドの大群が押し寄せてきているんだ。外壁を越えられるなら、そのまま乗り越えて冒険者ギルドに向かってくれ」

「アンデッドの大群だと!?」


 兵士の声にマーカスが驚いた声を出すが、俺も驚いた。どうやら大変な事態の最中に帰ってきたようだ。

 街の中に入る許可をもらった俺達は、高度を上げ、外壁を飛び越える。そして真っ直ぐに冒険者ギルドに向かった。

 飛び続けていくと2週間ぶりの冒険者ギルドが見えてきた。

 いつもであれば、この時間は人の出入りもほとんどないはずなのだが、今日は多くの人間が慌ただしく出入りしている。

 冒険者ギルドの真上に着くと、気付いてくれたのか冒険者ギルドの前にスペースを開けてくれたので、そこに着陸した。

 するとそこへ1人の女性が駆け込んできた。俺の専属受付嬢のマイラだ。


「マーカスさん、アークさんお帰りなさい。アークさん、帰ってきて直ぐに申し訳ないんですが、冒険者ギルドからの強制依頼を受けてください。実は」

「わかっている、アンデッドの事だろう。焦らなくても協力するから少し落ち着け」


 挨拶もそこそこにアンデッドの件について話そうとするマイラを少し落ち着かせる。


「南門の兵士に、北からアンデッドの大群が来ているのは聞いている。俺はどうすればいいんだ?」

「ご存知なら話は早いです。北側から来ているのはゴブリンのアンデッドなんですが、数が多すぎて正面から迎え撃つ事が難しい状況です。

 アークさんなら空中から攻撃する事が出来るので、囲まれる事無く戦えると思います。アンデッドの侵攻の激しい所のサポートに回ってください」

「攻撃?上から岩でも落とせばいいのか?」


 依頼の内容については理解できたが、肝心の空中からの攻撃手段に心当たりがなかった。さすがの俺もアンデッドの大群の中に降りて戦うのは、出来れば遠慮したいのだが。


「ああ、すいません。うっかりしてました。アンデッドに対しては、聖魔法の浄化(プリフィケーション)が有効です。アークさんなら使えると思います。まだ覚えていないようでしたら、今から教会の司祭様を連れてきますので教わってください」

浄化(プリフィケーション)なら、カレオラの街で教えてもらったから使えるぞ。北門に向かえばいいのか?」


 浄化(プリフィケーション)の魔法なら、都合よくカレオラの街で教えてもらっている。その時の説明では怨念を晴らす、みたいな事を言われていたが、アンデッドに特効だとは思わなかった。


「それはよかったです。でしたら直ぐに北門に向かってください。そちらに辺境伯様がいらっしゃいますので、辺境伯様の指示に従ってください。すでにアンデッドは北門までたどり着いている頃だと思います」

「わかった。……ちょっとまて、北門にたどり着いているという事は、俺の家はどうなっている?」


 ふと気になった事をマイラに聞いてみると、すごい勢いで顔を逸らされた。


「まさか……」

「……門を壊される可能性が有ると聞いています。恐らく家なら一瞬で飲み込まれるかと」

「そ、そんな……」

「ま、まだ残っているかもしれません。それにこの戦いが早く終わるほど、家が残っている可能性も高くなります」


 落ち込んだ俺を見かねてマイラが励ましてくれるが、恐らく俺の家はすでに壊されてしまっているだろう。

 おのれアンデッドめ。家の恨みだ、討ち滅ぼしてくれるわ。





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お読みいただきありがとうございます。

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