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その頃フィーゲルの街では3

「では確認するが、間違いなくゴブリンは殲滅できたのだな?」

「はい、数こそ万にも届こうかというほどでしたが、ただ群れているだけでしたので、端から包囲して討伐しました」


 ゴブリン討伐から帰還した冒険者の報告を聞いて私はホッと胸を撫で下ろした。

 辺境伯様との話し合い以降、帝国の関与の可能性ばかり考えていたが、無事に討伐できたという事は、今回の件に帝国は関与していなかったと言えるだろう。

 良かった。と思ったところで、何かが引っ掛かった。

 何かがおかしい気がする。何がおかしいのかはっきりしないが、何かが……。いったい何だ?


「それでギルドマスター、報酬はいつもらえるのでしょうか?多くの者が氾濫(モンスターハザード)の脅威から解放されて飲みに行きたがっていますので、出来るだけ早めにしていただきたいと……ギルドマスター?」

「あっ、ああ済まない。報酬だな。参加者も多かったので明日の朝から支払いを始める。各パーティーの代表者が取りに来るように伝えてもらえるか?」

「わかりました。その様に伝えておきましょう」


 何がおかしいのか思い当たりそうになったところで声をかけられて、考えが雲散霧消してしまった。

 まあいいか。本当に大事な事なら後で思い付くだろう。


 この時の考えを、何に引っ掛かっていたのかわかった時、後悔する事になるとは今の私は思ってもみなかった。



 翌日、冒険者ギルドには朝から多くの冒険者が詰めかけていた。その風景事態はいつもと変わらないものだが、何をしに来ているのかという点では、いつもとは違う。

 いつもであれば、依頼を受けに来ている者も今日ばかりは依頼に見向きもせずに冒険者ギルドの受付に向かう。そう、多くの冒険者は、昨日まで行われていたゴブリン討伐の報酬を受け取りに来ているのだ。

 参加した冒険者の数は500人程。1人当たり金貨1枚の報酬を約束しているので大体金貨500枚の支払いとなる。

 その他にも上位種を倒した者には追加の報酬が支払われるので、冒険者ギルドの支出はかなり大きなものとなる。ひょっとしたら金貨が1000枚近く必要になるかもしれない。

 辺境伯様にも事態の重大性を鑑みて、幾らかの支援を約束して頂いてはいるが、しばらくはギルド職員にも節約をお願いしなければならないだろう。

 それでもフィーゲルの壊滅の危機を脱するための支出だったと考えれば安いものだと言えるのだろうな。



 その2日後、今回のゴブリン討伐で発生した支出の計算が終わったそうなのでその報告を受けた。受けたのだが……。


「金貨600枚だと……。間違いはないのか?」

「はい、今回のゴブリン討伐に参加した全ての冒険者に支払いが終わっております。これが今回のゴブリン討伐で発生した全ての費用となります」


 思ったより安くすんで良かったですねー。なんて報告した者は喜んでいるが、私はそれほど喜べなかった。

 支払いに使われた金貨があまりにも少なすぎるからだ。


「上位種の討伐への報酬を含めてもこの金額なんだな?」

「ええ、申請のあった分は全て支払っていますよ」


 いったい何を聞いているんだろうか、とでも思っていそうな目の前の職員に、私は頭を抱えたくなった。

 ここまで言ってもわからないなんて、こいつは一から勉強をさせ直そう。

 こうまで言っているという事は、本当に支払われた金額はこれで全てなのだろう。

 基本的に冒険者というものはお金に汚いため、お金がもらえるとわかっている事を見逃すなんて事はあり得ない。むしろ嘘の申請が大量に出るのではないかと危惧していたくらいだ。

 万に近いゴブリンの群れに、上位種が僅かにしか居ないなんて事は普通あり得ない。

 だが、現にそのあり得ない事が起きている。そしてそれが示している事は1つ。何かしらの力が働いているという事だ。例えばよその国の干渉などが。

 そして今更ながらに冒険者の報告の何に引っ掛かっていたのかが、思い当たった。ただ群れていただけ。上位種がいたらそんなことにはならないはずだ。

 何かが起こっている。そう考えた私は、冒険者に『恵みの大森林』の再調査を命じた。



 再調査を命じた後、私は直ぐに辺境伯様の屋敷へと向かった。通常であればいくら冒険者ギルドのギルドマスターであろうと、アポを取らなければ直ぐに会う事は出来ないのだが、非常事態だ、と伝えると直ぐに会う事が出来た。


「どうかしたのかフリーダ殿。非常事態だなどと。ゴブリン討伐は無事に終わったと聞いているのだが?」

「その件につきまして至急ご報告させていただきたい事が出来ました。今回の件、間違いなく外部からの干渉が有ります」

「干渉?だが帝国の関与が有れば、これほど容易く殲滅など出来ないだろうというのが、お互いの意見ではなかったか?」

「確かにその時はそのように考えました」


 干渉、と聞いて辺境伯様は直ぐに前回の話し合いの事をおもいだしてくれたようだ。その時の意見について肯定し私は話を続ける。


「ですが、報告の内容におかしな点が有りました。群れているだけだったので、簡単に討伐出来た、と。

 群れの数が増えれば、それに見あった数、上位種も増えます。ですが褒賞金として支払われた金額を考えると、今回は群れの規模に対して上位種の数が少なすぎます。

 何が起こっているかはわかりません。ですが何かが起こっていると思い、冒険者に再調査を命じています。辺境伯様も何か有ると考え、心積もりをしておいてください」



誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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