その頃フィーゲルの街では1
本日2話目です
フィーゲルの街
冒険者ギルド ギルドマスターフリーダ視点
「囲まれるぞ!!突出するな!!防衛線を乱さないように注意しろ。ここを抜けられたら終わりだぞ!」
目を離すと直ぐに前に出ようとする冒険者達を押し止め周囲を見渡す。
いつもは静かなフィーゲルの街の周辺だったが、今は戦いの音が響き渡っている。
続々と襲い来るゴブリンの……いやゴブリンの成れの果てであるゴブリンゾンビの群れ。その群れは視界を覆い尽くす程にまで膨れ上がっていた。
倒しても倒してもきりがないどころか、ゴブリンゾンビ達はどんどんと数を増やしているようだ。
ギルドマスターになってから、これ程大規模な戦闘に参加することは無くなっていて、戦いの勘を取り戻すのに結構な時間がかかってしまった。こんな事になるのなら、もっと頻繁に戦いに出るのだったと後悔する。
このままではフィーゲルの街はゴブリンゾンビの群れに飲み込まれ滅びてしまうだろう。
どうしてこのような事になったのか。私は事の始まりを思い出していた。
時はアーク君がカレオラの街へ薬を届けに行った翌日まで遡る。
その日私は、『恵みの大森林』でゴブリン討伐の依頼を受けていたパーティーが戻ってきたとの報告を受け、彼らから話を聞いていた。
「ではまだ倒しきれていないという事なんだな?」
「ああそうだ、あまりに数が多すぎる。それに俺達が倒していたのは、本隊じゃなくて巣から溢れ出てきたやつらのような感じがした。多分俺達が把握している以上にゴブリン達の数がいる。討伐隊を組んで全力で討伐しないと氾濫を起こすかもしれない」
報告内容は想像していたよりも悪かった。倒しきれなかっただけでなく、氾濫の可能性まで出てくるとは。
氾濫というのは、魔物の群れがその生存限界数を越えて多くなった際に、食料を求めて暴走する行動の事を言う。
繁殖力の強い比較的弱い魔物が、偶然天敵が少ない時に爆発的に増えて発生すると言われている。魔物単体の力は弱くても、その数は驚異となる。
万をも越える魔物の群れは街1つなど瞬く間に飲み込み、対処するには国が動く必要が出てくる。
パーティーに帰ってもらった後、私は部屋で1人考え込んでいた。
これが駆け出し冒険者からの報告であれば信憑性は低くなる。彼らからしてみれば、100匹の群れでも万の群れに見える事があるからだ。
だがこの報告は違う。4星ともなればベテランの部類に入る。見間違えたという事はないだろう。
仕方があるまい。間違いだったとしても笑い話にしてしまえばいいのだから。
「誰かいないか!フィーゲルの全冒険者に強制依頼を通達するぞ」
「諸君、ここに集まってくれた事に感謝する。
まずは今回の緊急依頼の内容について説明する」
その日の夜、私はフィーゲルの街に今現在いる2星以上の冒険者パーティーの代表者を冒険者ギルドに集めて緊急依頼の説明をしていた。
緊急依頼と言うのは、通常の依頼とは違い、冒険者ギルドに所属している者は基本的に断る事の出来ない依頼だ。今回の氾濫のような、冒険者達の力を集結させて問題解決に当たらなければならないような事態になった場合に通達される。
そのため、緊急依頼が通達されると言う事事態が、現在非常事態になっていると言う事を示している。
集まった冒険者達もその事を良くわかっているようで、いつもは騒がしい連中も今回ばかりは静かに私の声に耳を傾けている。
「先日から『恵みの大森林』でゴブリンが大量発生しているという話を聞いた事のある者もいるだろうが、今日その件の調査依頼を受けていた者達が帰ってきた。
その者達の報告によると、ゴブリンの数は千を優に越え、万にも届かんばかりの数になっているらしい」
私の話を聞いて冒険者達が息を飲む。万という数は氾濫の1つの目安となっている数だ。駆け出しを抜けた冒険者ならば誰しもが知っている事柄でもある。
「そう、諸君達が考えている通り、私はゴブリンの氾濫が起きかねない状態になっていると考えている。氾濫が起きてしまえば、このフィーゲルの街は壊滅してしまうだろう。
そこで今回の緊急依頼では、氾濫が起きる前に、ゴブリンの殲滅を依頼する。出発は明日の明け方とするので、それまでに準備を済ませてもらいたい。もちろん準備に使用した資金は冒険者ギルドが立て替えるので後で請求してもらいたい。
また報酬についてだが、今回は参加した全ての者に金貨1枚を出す。さらに群れをまとめていると思われる上位種を討伐した者には、働きに応じて更に追加で報酬を出す事を約束しよう」
金貨1枚あれば、1月は贅沢な生活が出来る。それが参加するだけで支払われるとあって、冒険者達は目の色を変えた。討伐対象が最弱の魔物であるゴブリンだという事もあってか、恐怖感を感じている者もいないようだ。
「君達の力でこの街を守ってもらいたい」
私の言葉に冒険者達の歓声が沸き起こった。
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