忍び寄る脅威11
久しぶりの連続更新になります。
それから1週間、魔物の討伐や漁を続けた。
その結果、病気で動けなかった人も徐々に日常生活に戻り始め、どうにかカレオラの街はこれまでの日常を取り戻した。
もちろん病人は全ていなくなっている。復興が済んだとなると、俺がこの街に居続ける必要も無くなってきたため、そろそろフィーゲルの街に帰るのもいいかもしれない。
そんな事を考えていたところ、突然領主であるピアソン男爵に呼び出された。
特に用もなかったので直ぐ領主の館に向かうと、ピアソン男爵に出迎えられた。
「用という事だったが、何か有ったのか?」
「いえ、何も無くなったからこそ、お呼びさせていただきました」
ピアソン男爵に用件を聞いてみると、良くわからない返事をされた。首をかしげていると、ピアソン男爵は言葉を続けた。
「病気も食料不足もどちらの問題もほぼ解決へと至りました。今ならばアーク様の手も空いているかと思いまして、是非とも我が娘テレサにご挨拶をさせていただきたいと思いまして」
「そうだったのか。もう元気になっているのか?」
「はい、お陰様で病気になる前よりも元気になっておりまして、早くアーク様に会いたいと日々せっつかれておるくらいですよ」
この街で一番重症だった彼女も無事に回復しているようだ。カレオラを離れる前に、一度は顔を出しておこうとは思っていたのでいい機会かもしれない。
「そうだな、特に急ぎの用事も無い。丁度いいから挨拶をしていこうか」
「わかりました。テレサを連れてきますので庭でお待ちいただけますか?以前休まれていた場所でお待ちください」
そう言ってピアソン男爵は屋敷へと戻っていった。
ピアソン男爵と別れた俺は、庭に向かって移動する。先日ここを訪れた時にはなんというか暗い雰囲気があったが、今はそんな気配は微塵もない。
やはり街全体の問題が解決に向かっているからそう感じるのだろうか。
そんな事を考えていたら、直ぐに庭の一角にたどり着いた。少し横になって待たせてもらおうか。
「アーク様、申し訳ありませんが起きていただけませんか?」
それほど時間が経ったようには思えないが、日差しが心地よくいつの間にかうたた寝をしてしまっていたようだ。
「すまない、寝るつもりはなかったのだがつい気持ち良くてな」
「こちらこそすいません。この1週間街のために働き続けていただいたと聞いています。知らず知らずの内に疲れが体に溜まっているのかもしれません。助けていただいている私達が言える事ではありませんが、休息をとられてはいかがでしょうか」
「そうだな、まあ今日は元々ゆっくりするつもりだったから、後で休ませてもらうよ」
肉体的な疲労は感じてはいないんだが、気疲れとか精神的な疲労は有るかもしれない。一度しっかりと休むとしよう。
改めてピアソン男爵の方を見ると、一人の女性を連れてきていた。容姿を見るにピアソン男爵よりは遥かに若い。彼女が娘のテレサだろう。
治療の時には容姿もわからない程に痩せこけてしまっていたため、
貴族らしいドレスに身を包み元気になったその姿を見てもわからなかったが、腰まである長い銀髪には見覚えが有った。
ピアソン男爵に促され、その女性が前に出てくる。
……ふと思ったが、怖がられてはいないのだろうか?会いたいと言っていたそうだから大丈夫かな。
「アーク様、先日は治療をしていただきありがとうございました。また私のみならずこの街をも救っていただいたと聞いています」
「あまり大袈裟に考えないでくれ。俺は冒険者として依頼を受け、こなしたにすぎない。きちんと代価はもらっている」
これは俺の本心だ。冒険者ギルドの評価という代価のみならず、この街では自由に活動が出来るようになった。
「それでしたら、こちらも勝手に恩に感じているだけです。アーク様が思っている以上に、私達は助けられているのです」
だが、俺は十分だと思っているのだが、テレサとしては気が済まないようだ。ピアソン男爵を見ても同じ気持ちなのか首を縦に振っている。
「何か困り事が出来ましたら遠慮なく私達を訪ねてきてください。私は命を救っていただいた恩を忘れる事はありませんから」
帰り際、テレサは俺にそう言っていた。
3日後、俺はマーカスと共にフィーゲルの街へと帰る準備をしていた。元々は薬を送り届けるだけの予定だったのだが、2週間もこの街にいた事になる。
この街で何が起きていて、俺がどういう活動をしていたのかはカレオラのギルドマスターが書面にしてくれたそうなので、達成報告までかなり時間がかかってしまっているが、評価が下がる事は無いとの事だったので一安心だ。
この3日間は特にする事も多くなかったので、カレオラの街の中の様子をゆっくりと見せてもらっていたが、いく先々で人々の歓迎を受けた。
人々を救った事で、俺の存在がカレオラの人に認められたようでとても嬉しかった。
それに、カレオラの教会の司祭から、聖魔法をいくつか教えてもらう事が出来た。俺が聖魔法を使えるが、使える魔法の種類が多くない事を聞いて教えてくれたらしい。使える状況が限定されるものも多かったが、この先俺の助けになってくれるに違いない。
午後になり、俺達はフィーゲルの街に帰る事にした。ピアソン男爵を始め、カレオラの街の多くの人が見送ってくれる中、俺達はフィーゲルの街への帰途についた。
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