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忍び寄る脅威8

 俺がカレオラの街で治療を始めて3日目、この3日間で治療は順調に進んだ。治療を始めた翌日こそ、数十人の再発患者が出たもの、その後は数を減らし続けている。

 現在でも再発した患者や、新たな患者はまだ残っているものの、その数は若干名であり、この騒ぎが沈静化に向かっている事を多くの人が感じていた。


 しかし病の流行が沈静化してきた事で、新たな問題が表面化した。食料不足である。

 元々枯木病は完治した後、これまでの反動のように食欲が増加する。枯木病に似たこの病も、その点は変わらなかった。

 だが考えてもみてほしい。カレオラの街では多くの住人が病に倒れ、その病人の看護にも多くの人が駆り出されていた。

 病に倒れた人と、看護をしていた人、多くに人が本来の自分の仕事が出来ない状態だった。


 現代とは違い、この世界では多くの人が一次産業に携わり、自然から富を得ている。農業、漁業などがわかりやすいだろう。

 そのように自然から食料を調達していた人達も病の影響で仕事が出来なくなっていた。病気になった人は食事が出来ない状態だったため、影響は目立たなかったが、完治した後食事量が増えた事によって一気に表面化した。

 俺が治療をしたことで、これまで看護をしていた人達が自由に動けるようになると思ったが、病で痩せ細った人達が日常生活を行うのにもサポートが要るようで、あまり自由に動ける人は増えなかった。

 病気になった人達も病気は治ったとはいえ、それはそのまま死ぬ事がなくなっただけであって、体は痩せたままであるので、これまでのような生活に戻るには今しばらく時間がかかるだろう。


 

 3日目の昼前、俺は治療を終え、領主の屋敷へと戻ってきていた。

 治療を始めたばかりの時は、患者の数も多かったため、治療に回るのに半日近くかかってしまっていたが、患者の数が減ってきた今では、1時間もあれば治療を済ませる事が出来るようになった。

 つまりは午後の時間が丸々空く訳で、食料事情の改善に何か手を貸せる事はないだろうかと、領主であるピアソン男爵に相談をしようと思ったのだ。乗りかかった船でもあるし、せっかく助けたのだから最後まで面倒をみるつもりだ。


「これはこれはアーク様。治療の方をありがとうございます。おかげさまで領民の多くは病から解き放たれました」


 面会を申し込んで直ぐにピアソン男爵はやって来た。相変わらずの様呼びで俺はまだ慣れていない。


「何やらご相談との事でしたが、何かありましたか?」

「ちょっと聞きたい事があったのだが、その前に、テレサは元気になっているか?」


 食料不足に対して手を貸せる事を確認する前に、テレサの様子が気になったので聞いてみると、順調に回復しているのか、ピアソン男爵は表情を緩める。


「ええ、おかげさまでだんだんと良くなっています。もうすぐ歩けるようになるのではないでしょうか。もう少し良くなったら直接挨拶をさせてもらえればと思います」

「そうか、それは良かった。だが無理はさせないようにな。それで本題なのだが、この街が食料不足になりそうだと聞いてな。何か手伝える事はないだろうかと聞きにきたのだ」


 テレサの様子を聞いた後、当初の目的だった食料不足の話題を出すと、ピアソン男爵自身も憂慮していたのか、緩んでいた頬が引き締まった。


「確かに食料不足の可能性が出てきています。ですが今動ける者が総出で食料確保に動いておりますので、多少食事の量は減るでしょうが何とかなると思います」

「病気が治った者は大量の食事を必要とするとも聞いたが、それでも問題ないのか?」

「それは……」


 俺の問いかけに言葉を濁すピアソン男爵を見て、元患者の事を考えると食料の量が足りていない事を察っした。


「患者の数も減ってきたので、俺も自由に動ける時間が出来た。採集は出来ないが狩りなら出来るから、場所と獲物を教えてもらえれば協力できるぞ」

「お気持ちは非常にありがたいのですが、これ以上アーク様に迷惑はかけられません。それにあまり手を借りすぎてしまいますと、今度何か有った時に自分達で解決する事が出来なくなってしまうかもしれません」


 色々言ってはいるものの、結局の所、恩義を感じている俺にこれ以上手間をかけるなんて申し訳無い、という思いが強いのだろう。今でも治療のために拘束し続けているのだから……と。

 

 だがその気遣いは間違っていると思う。命の危機が迫っている時に、遠慮などするべきではない。使えるものは何でも使うべきだ。

 とはいえ正面から説得しようとすると、かなりの時間がかかってしまうだろう。あまり時間をかけたくなかった俺は言い方を変える事にした。


「せっかく助けたのに死なせるようなまねは許さん。俺が治療した者が死ぬようなら俺は勝手に手を出させてもらうぞ」


 俺の言葉に俺の意志の強さが伝わったのか、最終的にピアソン男爵が折れ、食料確保の手伝いをする事になった。

 その中でせめて少しでも俺に得が有るようにしたいという事で、今回の手伝いは領主からの依頼という形で、冒険者ギルドを経由して受ける事になった。




誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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