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冒険者生活7

「お、おい!?大丈夫か?」


 いきなり倒れたマイラに近寄り声をかける。よくわからないまま触っていたピンクのキノコ、あれはひょっとして毒キノコだったのだろうか?毒キノコだった場合、どうすればいいのだろうかと思っていたら、マイラから反応が有った。


「だ、大丈夫です。心配しないでください」


 返事もしっかりしているので本当に大丈夫そうではあるが、いきなり倒れたから心配だ。いったい何があったのだろうか?


「いきなり倒れたから驚いたぞ。いったいどうしたんだ?」

「すいません、急に力が抜けてしまって……ぽっ」


 そこまで言ってマイラの言葉が止まった。俺の方を見ているし、最後の方、嫌な予感がするんだが。


「アークさんよく見るとかっこいいですね」


 起き上がったマイラは、そう言って様子を見るために近付けていた俺の顔に手を添えると、


チュッ……チュッ、チュッチュッチュッ♡


 俺の顔にキスの雨を降らせてきた。顔を火照らせ、瞳を潤ませ、言葉を続ける。


「好きです。結婚してください」


 これはアレか!?さっきのキノコが媚薬とかそういう効果を持っていたということだろうか。ピンクで媚薬って凄いわかりやすいけれども。

 慌てて尻尾をマイラの腰に巻き付けて、顔から引き離す。


「あんっ、アークさん昼間から大胆です。でもそんな大胆な所も……チュッ」


 俺は決してそんな大胆とか言われるような事はしていない。俺から引き離されたマイラは、尻尾に掴まれている事も気にせず、今度は尻尾にキスの雨を降らせ始めた。

 状況を考えるに、間違いなく先程のピンクのキノコが原因だろう。

 間違いなくマイラは正気を失っている。これ以上はマイラの人としての尊厳に関わってきてしまうだろう。一刻も早く治してあげないといけない。


 しかし、俺には治療方法などわからない。こういう類いのものは時間経過でも治るとは思うが、そこまで待っているときっとマイラの心に消せない傷が残ってしまうに違いない。

 だから治療の出来そうな人間を連れてくるしかないのだが、この街に来たばかりで、街の住人と録に交流も持っていない俺には、そんな心当たりは無い。

 だが治療の出来る人間を知っていそうな人には心当たりがある。フリーダだ。冒険者ギルドギルドマスターの彼女なら冒険者が怪我や毒に侵された時の対処法にも詳しいはずである。

 正直なところ、前回の事が有ってから余り会いたくはないのだが、背に腹は変えられない。


「あんっ、アークさん外に行くんですか?今から結婚式ですか?」


 正気を失ったマイラを抱えて外に出る。この状態のマイラを他の人に見られるのは、本人のためにも出来る限り避けたいのだが、1人にすると何を起こすかわからないので仕方ない。もっとも、今の様子を見る限り離してくれるとも思えなかったが。


 門の所まで行き、門番に、マイラがおかしくなったので、フリーダを急いで呼んでもらうように頼む。残念ながらその僅かな時間に、


「私アークさんと結婚するんですー」


 とか叫んで俺の尻尾にキスを続けていたので、俺の配慮は無駄になったかもしれない。

 だが、その言動を見てマイラがおかしくなっているのがよくわかったのだろう、門番は直ぐに呼んでくると約束してくれた。これ以上マイラの評判に傷がつかないように、急いで家へと戻る。


 家でフリーダを待っていると、それほど時間もかからずにやって来てくれた。


「大丈夫かいアーク君。マイラがおかしくなったって聞いて来たんだけど?」

「危険は無い。だがこのままではマイラが可哀想だ」


 そう言ってフリーダに尻尾に抱きついたままのマイラを見せる。相変わらずキスしたり頬擦りしたりしている。

 そんなマイラを見て、フリーダはうつむいた。


「さっきからこの調子なのだ。早く治してやらなければ。原因何だが「くっ」……どうした」


 原因を説明しようとしていると、フリーダの方から声がした。見るとうつむいたままだが、肩が小刻みに震えているような?マイラのあまりの変わりようにショックを受けているのだろうか。

 フリーダの方も心配になってきたのだが、突如顔を上げた。そして、


「くっくっく、アーハッハッハ!可笑しい、お腹がよじれる!ダメだ耐えられない。助けて、マイラに笑い殺される!」


 腹を押さえ、マイラを指差し爆笑し始めた。


「ギルドでも行き遅れで心配されているあのマイラが!大好き~とか言ってキスしまくってるなんて。アー可笑しい、これ以上私を笑わさないで」


 こんなのが上司だなんてマイラが可哀想だ。これからはもっと優しく接しよう。

 5分程笑いまくっていると、ようやく治まったのか、フリーダがこちらに近付いてきた。


「あー、こんなに笑ったのは久しぶりだよ。どうしてこうなったのか教えてもらえるかい」

「そこにピンクのキノコがあるだろう。マイラでも何のキノコかわからなかったんだが、あれを触っていると突然倒れて、起きてからはこの調子だ」

「ああこのキノコか。なるほど、確かにこうなるのも当然だね」


 マイラがこうなった原因を説明していると、フリーダはピンクのキノコに近付き、無造作に掴み上げた。


「お、おい。お前まで変になるぞ」

「心配しなくてもいいよ。このキノコはエルフには効かないから。こいつの名前はビヤクダケ。その名の通り媚薬の材料になるキノコだよ」


誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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