11雫目・街角
一話完結です。
オルゴール曲、第二弾です。
…久し振りに放浪の旅に出たい…。
その日、僕は旅に出た。
夜行バスに乗って、何の目的もない旅だ。何度か来たことのある僕の好きな街を、ただ流されるように歩くのが好きだった。
平日の街は時間帯によって人の流れが変わる。
朝の通勤時間、昼食時、夕方の帰宅時間は、雑多な人混みに酔いそうになる。少し時間をずらせば案外のんびりできるが、実は観光名所になっているこの街は、やはり故郷より人が多い。
一息つくために入った喫茶店で、ぼんやりと表通りを行き交う人たちを眺めていて、ふと、あなたのことを思い出した。
人通りの多い道で、あなたの影が人混みに紛れ、雑踏に掻き消されていく。
僕は見失なわないように追いかけたけど、あなたとの距離の差は広がる一方で。
もし、ほんの少し立ち止まってくれたなら、僕の伸ばした手は届いたかも知れない。
長い影法師がビルの狭間に伸びて、夕陽のオレンジ色に染まる。ガラスに映るのは見慣れない人ばかり。あなたの影はいない。
行き交う人の流れをぼんやり見ていると、急に一人きりが寂しくなった。
あなたは、一人で寂しくない?
もし、あなたが今、僕と同じように寂しい気持ちを抱いているなら。
どうか僕を呼んで。
必ず、人混みの中のあなたのことを見つけるから。
ありがとうございました。
半分、実話です。
この時、ものの見事にホームシックになりました(笑)
…旅行から半日で…。