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泣き虫吸血鬼は最後の恋をする〜ミイラを拾って水(血)をやったら超絶イケメンになりました〜  作者: 甲野 莉絵


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23話 大家さんとのランチ2

 ん……? そう言えば玄関でショーンさんに挨拶した時、緊張のあまり本名を名乗ってた。俺って博物館に展示されてた影響か、この辺りではそれなりに有名だから、偽名だと思われたのかも。もしそうならどうにか出来そうだ。


「ええと……元々ジョージと言う名でして、親が再婚した影響で偶然この名前になりました。決して吸血鬼などではありません」


 多少嘘っぽいけど、事実は小説より奇なりとか言うくらいだ。これで疑念が晴れたか? ……いや、表情が全く変わってない。そんな事は無さそうだ。


「そうか。それでは昼食が出来るまで腹を割って話しをしようじゃないか」


「はっ、はいっ!」

 

 ショーンさんの目つきが一層鋭くなった。冷や汗が背中を伝う。

 

「……アオイさんとは上手くやっているようだが、馴れ初めは? 吸血鬼だとでも名乗って近付いたのかね? 君はアオイさんの事をどのように思っているんだ? それからその口調も無理しているのだろう。私の前だからと肩肘張らず、君らしく話してくれて良いのだからね?」


 こ、怖い。質問が矢継ぎ早だし、まるで腹の内で何を考えてるか分からない京言葉みたいだ。ショーンさんの声のトーンに視線、もしかして俺は蒼を弄ぶ詐欺師とでも思われてるのか? 悔しいけどその可能性は充分あり得る。


 蒼はウォルシュ夫妻を第二の親同然に想ってると言ってた。それは目の前のこの人も同じだろう。ウォルシュ夫妻は、トーマスが出て行った理由を聞いて大層ご立腹だったらしい。


 そこへ仕事もしてない俺が現れた。蒼に言わせると俺は『完璧な造形』らしい。ショーンさんからすれば、さぞ胡散臭い男に見えるだろう。ここは慎重に答えないと。やっぱり誠実さアピールは必要だよな。嘘は良くないけど――。


『先程は否定しましたが、実は吸血鬼です。蒼と出会った時、私はミイラ状態で蒼の血を啜ろうと襲いましたが負けました。蒼の事が大好きで、今はヒモをやってます!』


 なんて口が裂けても言えない……。うわぁ、どう言ったら一番良いんだ? 一旦落ち着こうと小さく深呼吸をしながら、テーブルの下で腕時計――御守り代わりに蒼から借りた物――をそっと撫でる。


 その時、ふわふわしたグレーヘアーのふっくらしたおばさんが現れた。ポテトサラダが載った大皿を持っている。


「ショーン。そんな意地悪な聞き方をしたら彼が可哀想よ。ジョージ君だったかしら? こんにちは、私はメアリーよ、プリンありがとうね」


 慌ててメアリーさんに会釈する。MAXだった俺の緊張は、メアリーさんの柔らかい笑顔を見てだいぶ和らいだ。でもショーンさんは未だ眉間にうっすらと皺を寄せたままだ。


「お前は黙っていてくれ」


「あら良いのかしら? 彼の話をするときのアオイはずいぶん柔らかい声をしてたわ。トーマスの時は無かったくらいね。何より彼に私の好物を教えたのはアオイなのよ。それだけ彼を応援してるって事でしょ?」


 蒼ぃ〜本当ありがとう。大家さんの圧に負けないように俺、頑張るよ。


「うぐ……それは初耳だぞ」


「それはアオイから電話を受けてるのは私なのに、人の話を良く聞かないで誰かさんが勝手に『私が見定めてやる!』って空回ったからいけないの」


「だ、だがアオイさんがこの男に騙されている可能性も充分あるだろう? 私はアオイさんが心配なんだ」


 俺を指差すショーンさんの目はまるで『こんな見た目だけの男』と言わんばかりだった。


「それならこうしましょう。彼を私のパブで雇ってあの家に住まわせる。こうやって偶にランチに誘うのも良いわね。そしてアオイと私で彼の人柄を見定めるの。あなたは彼を信用出来ない、私はアオイを応援したい、そして彼は仕事を探してる。ウィンウィンでしょ?」


「だがアオイさんと同棲させれば、それこそこの男の思う壺ではないか? 言葉巧みにアオイさんを言いくるめる可能性だってある」


「私には彼が貴方に虐められる可哀想な青年に見えたけど? きちんと話せはするけど、詐欺師のような言葉の巧みさは感じられないわ。それにアオイだって大人よ、本人が望むのなら私達が過度に口出しすべきでは無いの」


「……分かったよ」


「それじゃあ決まりね。私のパブは改装工事中でね、九月二〇日のオープンに合わせて丁度何人か雇い入れようと思っていたの。だけど仕事をしてもらうまで、まだ一か月くらいあるわね……。そうだわ、その間ジョージ君の家賃は免除するって言うのでどう?」


「ありがとうございます!」


 メアリーさんって凄い。どんどん話をまとめていく。俺としては蒼と一緒にいられて、働けるなら万々歳だけど、メアリーさんがやってるパブってどんな感じかな?


 パブって言うくらいだからきっとテプンルバー通りにあるんだろう。それはしょうがないとして、願わくば料理にあまりニンニクを使ってないと良いな。

お読みくださりありがとうございます。

次回、第24話は、例のアンティークショップに潜んでいる赤い目の持ち主が登場します。5/30、20:10頃投稿予定です。

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