表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/74

Ep68 Chapter“2” Scene“3” Cut“6” Take“5” 禁断症状は唐突に

「あっ!思い出しましたぁ!せんせぇ、あのイケメンさんですよぉ。

 確かぁ、この近くにあるぅ、コンビニ“風”スーパーでぇ……」


「森園さん。それってスーパー“風”コンビニの、“ばすまいけっと”の事?

 それだったら、御劔さんが前にバイトしてた場所に入った新人かな?」


 夕樹菜はそれでオナカブラックの行動に合点がいった。彼の探索地は廃墟街だったにも拘わらず、この街(新町)に現れた事も納得がいく。

 そして、自分もそのイケメン(シノサキ)の接客を受けている。……と、なると――


アイツ(オナカブラック)!私と分かっていながら知らないフリしてたってコトぉ?

 まったく、本当に腹が黒いな」


「先生どうします?“学園”が接触するよりも早くオナカブラックをこちらに取り込んでしまわないと。

 それに小森さんにも、手が回る可能性があります。小森さんはこちらの情報を漏らさないと思いますが、絶対はありませんから」


 「やはり稜真は頭がキレる」……と、夕樹菜は自分の思考に付いてきた彼の柔軟な思考性を評価していた。

 要するに、どこかの誰かさん()とは“大違い”という(評価)だ。


「少なくとも今回の件は、早々に報告書を上げる必要がある。梢のコトも記載しておかないとマズい。だが、オナカブラックの本名を明かす必要はない。

 「どんな戦いだったのか?」それを詳しく(ゆずりは)に伝えて、ド肝を抜いてやればいいさ。

 ところで梢は、どうやってオナカブラックを倒したんだ?」


「え……えっとぉ……それは……」


 戦闘を見ていたのは稜真だけだ。梓は音しか聞いていない。よって、稜真の口から伝えられなければ、知る由はない。


「金的……です」


 男性からすればそれは、“タマヒュン案件”だ。よって稜真は話すのを躊躇ったが、その事実を知った梓は、驚いた顔で両方の手のひらを口に当てていた。

 そして夕樹菜は()()()()()()()――



「どれどれ?SNSに上がったりしてないか?」


 戦隊ヒーローが金的で悶絶して負けるなんて事は、本来ならば()()()()()()()()()

 だから夕樹菜は是非ともその目で確かめたかった。


「ん?可怪しいぞ?誰も上げていない。オナカブラックが倒れている写真はたくさんあるのに、戦闘シーンは何一つない」


「確かに、小森さんは映っていませんね。それに、彼女について書いてある投稿もないような……」


 それはこの場に差した一筋の光明。暗雲に飲み込まれそうになっていたこの部屋が、明るさを取り戻すキッカケとなったセリフ。

 少なくとも夕樹菜と稜真は()()()()()()()


 梓だけはそこに取り残されていたが、“不器用(ポンコツ)乙女・梢が金的”というパワーワードにいつまでもツボっている様子だった――



「先生、小森さんの事を報告書に書きますか?」


「実に悩ましいな……。


 ――うん。そうしよう。

 梢の事は出来るだけ伏せ、外見的な特徴を、梢だと分からない程度に記載して茶を濁せば、なんとかなるだろう。

 だから報告書には、(ゆずりは)の興味がオナカブラックにだけ向かうように書き上げてくれれば問題はない」


 概ね二人の見解は一致している。だから稜真はコクっと頷くだけに留めていた――



 ―― To the Next Scene ――



 ミチルは心が折れかけていた。これほどまでに“推しアニメ(ランポーくん)”を、リアタイしなかったのは久し振りの事だったからだ。


 今テレビを点ければ、丁度オープニングが流れている頃合い。あと三十分でバイト(バ先)に行く時間。それまでの至福の一時を成就する事も叶わない現状。

 ミチルの心は既にライフが“ゼロ”になり掛けていた――



 ――ぷるぷるッ


 それはまるで禁断症状に苦しむ中毒患者のようだった。リアルランポーくん(善次郎)と知り合った事で、“推し活(ランポーくん)”を、例え見れなくても耐えられると考えていたのは、やはり間違いだったのかもしれない。

 もしもこの場に、“彼”がいれば耐えられる。だが恋する乙女(ミチル)は、そばに()()()()()ランポーくんが居なければ、耐えられないくらいに疲弊していた。

 自分のせいとは言え、勉強漬けの毎日では、ミチルのハッピーポイントは上がらない。どれだけ寝てもイヤなコト一つ忘れられない。いや、その前に寝る時間もあまり無い。

 悩めば悩むほど、ペンを持つ手とは反対の指先が、リモコンを目指していた――



 ――ふるふるッ


 ミチルは極限の禁断症状に耐えるべく、首を横に激しく振った。そして少し気分転換がてら、外に出る事にした。今日はバイトが終わったら、“リアルランポーくん(善次郎)”に勉強を教えてもらう約束をしている。

 既にお迎えの準備は入念に行った後。床にはチリ一つ落ちていない。乙女の秘密(洗濯物の山)も、お風呂場でぐっすりと眠ってくれている。以前のような失敗は繰り返さない。

 あと三十分。あと三十分この“地獄”に耐え、バイトを難無くこなせば、至福が味わえる――



 ――ガチャ


 「――ッ?!」


 なんで、気分転換なんてしようと思ったのだろう?

 そんな事を考えた数分前の自分を殴ってやりたかった。

 ミチルは廊下の先で、仲良さげに笑う二人を見てしまったのだった――



 ―― To the Next Take ―― 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ