59 気持ちとはうらはらに
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雨の音がする。
なんかものすごい降ってる?
ハンパないこの雨音。
ああ、自転車無理かな、通勤。
歩くにもこの雨だと店につく頃にはびしょ濡れだ。
バスか。バスしかないか。
今何時だろ・・。
六時半・・・。
もう少し眠って・・・・・・、
?布団が違う??
わたしの家じゃないぞ、ここ!!
わたしは飛び起きた。
服を着たまま寝てしまったのでこのままの格好だが、せめて髪を整え、顔を洗って、最低限の身支度をした。
《台風は勢力を増し進路を変え、現在は━━━》
ニュースの音声を頼りに朝食をとるだろう『一の間』にたどり着いた。
「おはようございます!重ね重ねすみません!」
「おー、起きたか。ゆっくり寝てていいんだぞ」
「おはようございます」
和服の組長先生とYシャツにスラックスの若頭がいた。
組長先生はダイニングテーブルの中央の席で新聞を広げて読んでいる。若頭は立ったまま、すぐとなりのリビングの大型テレビの台風のニュースを観ていた。
「いえ、あの、仕事があるのでお店に」
「休みじゃねえか?物凄い暴風と降雨量で外出は控えろって政府発表と市長からも発表があったぞ」
組長先生が新聞から目を離し、わたしに教えてくれた。
「・・、そんなに・・?」
戸惑うわたしに、若頭が
「連絡がきていませんか?社長から」
と言った。
「確認してみます」
わたしはもう一度寝ていた部屋に戻りスマホを開いた。
メッセージに着信マークがついていた。
『今日、明日、臨時休業。あさっては午後一時から本店のみ営業予定。何か不安があったらいつでも連絡しろ。堀内』
一人暮らしだから気遣ってくれてるのか。社長。
『承知しました。お気遣いありがとうございます。とりあえず大丈夫です。何かあったら連絡します。』と、わたしはすぐ返信を送った。
窓の外は確かに物凄い。
木が今にも横倒しになりそうな暴風。そして雨。
自転車・徒歩では当然帰れない。
タクシー呼ぶ?来てくれるかどうか。
窓の外を眺めて考え込んでいたらコンコンとノックの音がして、わたしは振り向いた。
「・・メッセージはありましたか?」
若頭が部屋の入り口に立っていた。
「はい。今日、明日は臨時休業であさって本店のみ午後一時から営業予定だそうです」
「そうですか。では朝食ですのでどうぞ」
若頭に促され部屋を出たところに、
「あ、みふゆちゃん、ちょうどよかったわ。これこれ!」
楓さんが何やら大きな袋を持って現れた。
「京司郎、みふゆちゃんは私が連れてくからいいわ。先に行ってて」
「ではお願いします」
軽く会釈をして、若頭は先に『一の間』に行った。
「さあ、お部屋のクローゼットに入れるから手伝ってね」
「はい?」
部屋のクローゼット?
楓さんはわたしが寝ていた部屋のクローゼットを開けると袋から次々洋服を取り出す。下着まである。
「急だったから、ごめんね、うちのサンプル品なんだけど気軽に着てちょうだい。サイズがいろいろあるから合わなかった服はこっちにかけておいてね」
「あの、楓さん、これ・・」
「着替えやいろいろ必要でしょ?たぶん明日も外出は無理よ。私、女の子に服を選んであげるのが夢だったの、前にも言ったけど。でも生まれた子は全員男なんだもの腹立つわ!だから・・・せめてこういう時だけでもつきあって!!サンプル品だけど品質は確かよ!」
か、楓さん、顔近い近い。
そういえば楓さんは組長先生の事業のアパレル部門を担当してると聞いたことがある。
「飯食うぞー!」と、組長先生の声がした。
楓さんは「はーい!いま行きますー!」と答えて、「食べたらまた片付けましょう」とわたし達は朝食のため『一の間』に行った。
「ガキ共はどうした?」
「寝てるわよ。昼まで起きてこないわよきっと」
「しょうがねぇな。みふゆ、あとで黒岩の三人息子を紹介する」
「は、はい」
どうしよう。どんどん深みにはまっていく。本当にここから出られなくなったら・・!?
いや、そんなことはない。落ち着け、落ち着くんだ。お母さんも言ってたじゃないか。
『大変な時こそ落ち着け』と。
それにしても次から次へと予想外のことが起こる。
進もうとする道が塞がれる。
わたしは胡蝶さんの言葉を思い出した。
『神様のお導きかもしれなくてよ』




