遥か東より来た騎士20
道なりに馬を飛ばすと、すぐに城が見えた。開け放たれた城門から乗り入れる。すると、入ってすぐの広場で、徒歩の騎士が独り、やはり徒歩の騎士8人と睨み合っていた。辺りには騎士が20人ほど倒れており、所々に血溜まりもできている。
「兄上!」
メローラが叫ぶ。それを横目に見て、騎士が剣と盾を油断なく構えたまま答えた。
「メローラ、無事だったか」
「加勢に参りましたぞ、ガレス卿!」
ヨシタカ卿も声を掛ける。
「ヨシタカ卿、ご無事で何よりです。巨人は片付いたのですか?」
「いかにも」
答えながら抜刀するヨシタカ卿。ガレス卿の左翼を守る位置に就く。
「ラムロック卿はどうされましたか」
「従騎士たちを医者に見せに行かれました。傷が軽ければ間もなく来られましょう」
すると、敵が4人増えたうえ、さらに増援が来そうと見たか、強盗騎士たちが和睦を持ちかけて来た。
「ガレス卿、卿は立派に戦った。その武勇に免じて、剣を納めようではないか」
「その必要はない。このまま決着を付けよう」
ガレス卿が静かに答えると、強盗騎士がたじろいだ。
「だが卿は既に10人以上と戦っている。疲れた騎士を倒しても、我らの名誉にならぬ」
「名誉? 名誉だと? 一騎打ちの最中に横槍を入れたのはそちらではないか!」
吠えるガレス卿に、強盗騎士たちが怯んだ。
「剣を捨て投降するか、このまま我らと戦うか、二つに一つだ。さあ選ぶがよい!!」
ガレス卿の言葉を聞いて、ヨシタカ卿たちも馬を降りる。騎乗したまま徒歩の相手と戦っても名誉にならないからだ。強盗騎士たちが顔を見合わせ、頷いた。
「数も数えられん馬鹿め、命拾いするチャンスを貴様は自ら捨てたのだぞ!」
「元より死ぬとは思っておらぬ、さあ行くぞ!」
言って、ガレス卿が盾を構えて突進した。
「右翼へ回って互いの死角を守れ、背後を取られるな!」
メローラたち従騎士に指示して、ヨシタカ卿もガレス卿の左側面へと駆け出す。一方、ガレス卿と相対する強盗騎士は、盾を構えたガレス卿に斬る隙を見出せず、盾を蹴って押し返そうとした。だが駆け寄って来たガレス卿の勢いに負け、逆に体勢を崩される。その間にガレス卿が間合いを詰めて頭に一撃すると、強盗騎士は事切れた。そこへ斬りかかって来た敵の剣をガレス卿は盾で受けつつ、こちらも兜を打って倒し、次の敵を探す。左翼はヨシタカ卿に任せ、右翼に付いたメローラたち従騎士の負担を減らそうと考えるガレス卿。メローラに斬りかかろうと剣を振り上げた敵の脇を鋭く突いて体勢を崩してやると、メローラが頭に一撃入れて倒した。メローラに小さく頷いて左翼を見れば、ヨシタカ卿も1人倒している。残る敵4人は、一か所に引いて固まっていた。ガレス卿がつかつかと歩み寄って行くと、1人が飛び出して突いてきた。それを剣で払い上げ、そのまま脳天へと剣を振り下ろすと、強盗騎士は倒れて動かなくなった。瞬く間に仲間5人を倒されて、形勢不利を悟った強盗騎士3人が剣を投げ出した。
「降伏する! 身代金は払う、どうか殺さないでくれ」
「いいだろう。だがそなたたちは城代のヴィクター卿と卿の家族を殺したな。その責めは負わねばならぬ。王の法廷で裁きを受けてもらうぞ」
恐らくは反逆者として極刑に処せられるであろう。ガレス卿の言葉に、強盗騎士たちはうなだれた。
「此奴らを見ていていただけますか。私の従騎士にまだ息があるか確かめねば」
言いながらガレス卿は、倒れている騎士の1人に近付いていく。
「お任せください。ローラン、城に入って使用人に此奴らを縛るよう命じろ。おらぬとは思うが、残敵に気を付けろよ。それと、アグラヴェイン卿を解放させるのだ。メローラ、此奴らの武器を集めろ。エレンはガレス卿を手伝うのだ」
ヨシタカ卿の指示に従って、従騎士たちは動き出した。




