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「少女は恋人に戯れのようにキスをした」
ウンディーネ、それが娘の名前らしい。
老いた漁師夫婦の拾い子だという。
道はふたたび激流に閉ざされ、
湖の岬は離れ島となっていた。
舟を出すことも出来ず、
帰る手立てがなかった。
透明な青に抱かれて、
したたるような緑で、
色とりどりの花々が、
咲き匂う離れ小島は、
喩えようなく美しく、
そこでの生活は、
夢のようだった。
少女は蝶のように気まぐれで、
黙っていれば戯れかけて来る、
捕まえようとすれば身を翻す。
騎士は少女に魅せられ、
弄ばれるが儘になった。
網に囚われた魚のよう、
彼は少女の虜であった。