可能性のその先
「オラァ!」
「チッ!」
「タヌピス」が振った剣で地面がえぐれる
「くっそ…我ながらめんどくさい性能してるな…」
タヌピスの魔王の剣は持ち手によって性能が変わる
今「タヌピス」が持っているのは白く光り輝く魔王の剣その状態は「相手」を悪だと認識した物に特攻が付与される、つまり神聖状態になる
一方タヌピスが持っているのは禍々しい闇の剣これは全てを侵略する闇の力が備わっている、つまり「自分」が悪だと認識した時にこの状態になる
「もう諦めたらどうだ?俺に勝てないのは自分でもわかっているだろ」
「確かに、単純な相性の差なら神聖を手にしてるお前に俺が勝てるはずはない」
しかしタヌピスはニタリと笑った
「お前の知らん間に俺の中で新しい力が生まれてたとすれば、どうする?」
「へぇ…未来の俺の新能力か」
そんなものはハッタリだ、マロンが中にいると知ってはいるが特に新能力が解放されている節は無い
かと言ってここを打破する能力が解放されているわけではない
「これは消耗戦になりそうだな」
「消耗戦?これは一方的な虐殺決定だよ!」
「タヌピス」が再度突進を仕掛けてくる
横薙ぎに振った剣をタヌピスは飛んで避ける
が
「ウォラア!」
「なっ!」
横に振って少しラグがあると思ったらすぐさま切り返して上に払ってきた
「呼応せよ!邪を滅するがために!」
「まずい!呼応せよ!聖なる輝きを
「遅せぇ!」
突き出した剣先から光のレーザーが飛ぶ
「グッ…ァァァァァァア!!!!!!!!」
直撃したタヌピスは空中から地面に落ちる
「どうだ?超回復を持っている俺でも神聖の攻撃は早々に回復しないだろ」
「あっ…がっ…はっ…」
もう呼吸する事も辛い
一撃喰らうだけでここまでのダメージとは本人も考えてはいなかった
それもそうだろう今目の前に立つのは自分自身なのだから
(俺と戦うことになるとは全く想定してなかったからな…これはさすがに堪える…)
魔王化をしたい所だが今タヌピスの中には魔王はいない現実の世界で留まっているのだ
「おいどうした?未来を変えるんじゃなかったのか…?」
「ハッ…ハッ…ヒュー…」
「チッ、興ざめだなもう声も出ねぇか」
スっと剣を持ち上げる
「死ね」
「と、言うと思ったぜ俺なら」
「何!?」
「痛みの反射!!!!!!!!」
瞬間、タヌピスの手のひらから電流が走る
それが「タヌピス」に突き刺さった瞬間、弾けるような痛みが走る
「クッッッッッッッッツソォォォオ!!!!!!!!」
「痛いか?それが俺のくらった技の痛みさ」
「なーんちゃって」
それを「タヌピス」は何事も無かったように受けきる
「なんで…何で効かないんだ!」
「痛みの反射いい判断だと思ったが、お前は使い方を理解していない、あっちの俺は真実を知らないみたいだが俺は知っている」
「俺の知らない効果…?」
「そう、この技は『そのまま』自分が受けた攻撃を相手に与える、だ」
つまりさっきくらった攻撃は神聖の攻撃
今のタヌピスにはノーダメージなのだ
「そんな…」
「だからお前に残された勝ち筋はその剣で俺を斬ること、他の技で対抗しようと思うなよ?同じ力だからいつまで経っても終わらんぞ」
手詰まりだ
そう思ってしまった
ガシャンと手に持っている剣を地面に置く
「俺の負けだ、潔くてめぇに斬られて死ぬとしよう」
「フン、最初からそうしておけば良かったのに」
「タヌピス」が再度突進を仕掛けてきて
横薙ぎに首を斬ろうとする
「じゃあな、俺」
(すまん…俺の負けだった…お前らは俺抜きで生きてくれ)
スっとタヌピスは目を瞑り今までの事を思い出し覚悟を決める
ガキィン!
すると今は有り得ない音が聞こえた
金属音だ
聞こえるはずのない金属音が聞こえた
「てめぇ…何してやがる!!!!!!!!」
「タヌピス」はそいつに向かって叫び散らす
誰だ?と思いタヌピスは目を開く
「お前…どうして…」
「さぁ?どうしてだろうな、お前を見ていたらこっちが本物なんじゃないか?と思ってきてな、体が勝手に動いちまった」
その言葉を聞いてタヌピスはニッコリと笑った
「やっぱり…お前は頼りになるよ、どっちの世界でも」
「そんな言葉は、こっちのタヌピスからは聞かされてなかったな、やっぱり俺の信じていたタヌピスは偽物だったようだ」
「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!なんでてめぇがそっちの助太刀をしてるんだって聞いてるんだ!」
「だから、お前が本物だと思わなくなったからって言ってんだろ、話を聞け」
「タヌピス」がその場から少し離れる
「立てるか?」
「あぁ、サンキュー」
そいつに手を借りタヌピスは再び立ち上がる
「頼りにしてるぜ、相棒」
「任せとけ」
「てめぇ…マジにそっちに行ったのか、クロマァ!」
そう言われるとクロマは怪訝な顔をした
「てめぇを見てたら虫唾が走るぜ、どうしてもな。俺から見たらお前が悪だ」
そう吐き捨ててタヌピスの肩を持つ
「今の俺がどうなってもいい!てめぇみたいな悪とつるんでこの世界が続くくらいならこのタヌピスの手助けをして未来を繋ぐ方が1000億倍くらいマシだ!」
「そうか…ならてめぇも死ね!!!!!!!!」
「悪いな、なんもお礼できねぇぞ」
「気にすんな、あっちの方で脂っこいもの食わせてくれよ」
「約束だ、必ず守ってみせる」
「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!」
「タヌピス」が剣を叩きつけてきた
それを2人は左右に避ける
「クロマ!作戦タイプA!」
「それを知ってるってことは正真正銘お前が本物ってことだ!」
クロマはグニャりと身体を変形させてタヌピスにまとわりつく
「な、なんだ!?その技は」
「行くぜ!全身の鎧!」
ピッタリとタヌピスに張り付き
鉄の鎧と化するクロマ
「やはり俺は拳で戦うに限る」
「防衛面は任せとけ、信念が折れない限り俺は守り続ける」
「ほざけェ!!!!!!!!クロマァ!!!!!!!!」
「タヌピス」が大剣を振り落とす
が、タヌピスはそれを避けようとはしなかった
でかい金属音が鳴り響くが
「ハッ、こんなもんかよ」
タヌピスにはノーダメージだった
「なんで、どうしてだよ!!!!!!!!」
ガンガンガン!何度も剣を斬りつけるが一生掛けても削れる気がしないそれほどクロマの信念は固まっているという事だ
『てめぇの事はこうも守ろうと思ったことはねぇ、だが相棒と言われてそれを無下にする俺じゃねぇのさ!』
「そういう事だ!鉄の拳!」
タヌピスの繰り出した鉄の拳が腹に突き刺さる
バキバキと骨が折れる音が聞こえる
「ガハッ…!」
そのまま地面に叩きつけられる
「タヌピス!」
「来るな!!!!!!!!」
「タヌピス」が心配する仲間に再度叫び散らす
「テメェらに守られるほど、俺は弱くねぇ!!!!!!!!」
「やっぱりな、同じ世界でも『俺』としての形成は全くをもって違うようだ」
目の前に見える自分の姿を見てそう感じた
「俺は、仲間を傷つけたくなくても、仲間を要らないもの扱いすることは絶対にねぇ。」
『そこが、俺達の絆の差だ、分かったか偽物』
「うるせぇ!!!!!!!!」
「タヌピス」が禍々しいオーラを体に纏う
「人魔接続オォォォォォォオ!!!!!!!!」
辺り一面に闇が広がる
「俺は、負けられないんだ!!!!!!!!」
スッと「タヌピス」は拳を構える
「そうか、お前がそれで勝負するってなら、俺もそれで応えよう」
「魔王の一撃!!!!!!!!」
「タヌピス」が放った一撃は地面を抉りながら突っ込んでくる
「それじゃぁ俺は殺せねぇ!何にも負けないパンチィィィィイ!!!!!!!!」
それをタヌピスの最強技で消し飛ばしそのまま顔面へ突き刺す
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「タヌピス」はそのまま地面に叩き伏せられ顔面はグシャグシャになって倒れてしまった
「勝った、が、まだだな。」
『どういうことだ?タヌピス?』
「こっちに来るときに気が付いたことがあるんだが、もしこっちでもそうなら。」
ヒュ、っと風を切ったような音が聞こえた瞬間、タヌピスはしゃがんだ
するとその場から斬撃が飛んで行ったのである
「やっぱりな、こっちの方の奴には残ってるわな」
「ほう、その感じからすると、あっちの俺から何か聞いているな?」
『こいつは?』
「こいつは俺の中にいる魔王、まぁこっちのタヌピスの方のだけどな」
「おそらく俺の魔具を使ってこっちに来たな?」
「未来を変える、だか何だか言ってたが、まぁそういうことだ。だけど魔王、俺とお前は戦う必要はないはずだぜ。」
「確かにな、お前はやることを終えたから、もうすぐ自分の世界に戻るはずだ。その前にお前にちょっかいでも出してやろうと思ってな」
「相変わらず、性格の悪いこって」
それを聞いたクロマが鎧から元の姿に戻った
「じゃあさよならだ、クロマ。おかげで助かった。」
「ここの世界ではタヌピスはいなくなってしまうけど、まぁそれもそれだ。」
二人は固い握手を交わした
「さぁ行け、だが自分が思っている未来が待っていると思わんことだな」
「あ?それどういういm
タヌピスの視界は言い終わる前に真っ白になってしまった。
「ん…?ここは…?」
「気が付いたか!タヌピス!早くそっから立ち上がれ!」
「なに…ガッ!?」
クロマが叫んでいるのが聞こえたがそれも間に合わず。
禍々しい手でタヌピスは首をつかまれた
「な…なんだこいつ…!?」
「なんだこいつ…?それは結構な挨拶じゃねぇか。」
白く長い髪、その間から見えたのは
「舞…!?」
口調も姿もすっかり変わってしまった舞がそこにいた
「ハッ!」
その間に魔王が割って入った
舞はパッと手を離し自分の腕が切断されるのを回避する
「おい!舞は戻ってきたんじゃねぇのか!?」
「残念ながら。しかし舞にお前の魔王の力が流れることは無くなった。が、万が一流れていたら最悪の事態だったってことだけは教えといてやる。」
ふと、思い返した
「おい…あいつらは…?」
「……」
「おい!なんで黙ってんだよ!」
「……………後ろを見ろ」
そう魔王がいい、タヌピスは後ろを振り向いた
すると
地獄が見えた
「なっ…」
声が出なかった
ぺるしぃとペンは両腕を切断
きょっけとしょまうは右足を切断されていた
無事なのはクロマただ一人だった
「ち、ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
タヌピスを中心に黒いオーラが立ち込める
「待て!そのまま憎しみに身を任せたら!闇に堕ちるぞ!」
「構ワネェ!俺ノ魂ダケデコノバガ…収マルナラ!!!!!!!!!!!!!!!」
「RAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そのまま意識を失うと思った次の瞬間
「よかった!解けたぞ!」
ペンが言ってるのが聞こえた
「よくやった、お前達。タヌピス、帰ってこないと思ったぞ」
目の前に見える光景は同じものだった、が後ろを見ると皆五体満足の状態で残っていた
「俺は…?」
「そこの奴にお前に幻術をかけて、真の魔王の力を開放させてからここに戻そうとしていたんだ」
「そうか…おい…お前一つだけ俺の質問に答えろ。」
目の前に立つ白く髪の長い女は無言で首を縦に振った
「お前、最初から俺のことを騙していたのか?」
その言葉を聞いて女が一瞬固まった
そのあと首をゆっくりと縦に振った
「………そうか。」
タヌピスが指をパチンと鳴らしてこの村全体にかけている結界を解いた
「どっから入ったかは知らんが、これでお前の転移も使えるはずだ。今回だけ見逃してやる。」
「おい!何してんだ!こいつはお前のことを!」
「いいんだクロマ、さぁ行けよ。」
その女の足元に魔法陣が浮かびそこから消えていった
その消えたとこに一片の紙を見つけた。
タヌピスはそれを拾いあげて読むとそれは人の文字というには少し無理がある文字だったがタヌピスには、はっきりと見えた。
「ゴメンネ」と書かれた紙だった。
「馬鹿野郎…謝るくらいなら…こんなことすんなよ…」
その紙を握りしめ、くしゃくしゃになった紙を見つめ涙をこぼした
「タヌピス…それで結果は…?」
「クロマ、とりあえずは最悪の事態を回避した。ということだけは伝えておこう」
「じゃあアイツは…!」
「そっから先は言わないほうがいいさ。さぁもう疲れてるだろうから今日は寝よう」
そういうと皆は渋々自室に入ろうとして行った
しかしタヌピスは一人声をかけた
「ちょっと付き合え」
その夜、タヌピスとクロマは二人で街の屋台にいた
そこはこの異世界にもあったという、見つけ出した村の近くの屋台だった
暖簾には「らぁめん」と書かれている
「いいのか?タヌピス、ここのラーメン屋結構値段するんだぜ?」
「今の俺に金欠の心配はしなくていい。この世界では金持ちだからな俺。」
「マジかぁ、じゃあおっちゃん!ここの店で一番こってりしたラーメン!油マシマシ!チャーチュー多め!特盛!」
「俺は逆に一番あっさりした奴、あ、煮卵多めでお願いします、だいぶ麺は硬くていいです」
おっちゃんは一言「あいよ」と言ってそのまま作業に移行した
ここはちょっとした居酒屋みたいな店だった
「そういやお前脂っこいの苦手なんだっけか」
「そう、あんま食いすぎるとすぐにもたれちゃうからさ」
その場に出された水を喉が渇いていたのかクロマはグイっと飲み干した
「なぁ、ここでなら話してくれるんだろ?何があったのか」
「あぁ、お前にはあっちで命を助けてもらったからな。幻術の中で何があったのかも教えてやる。」
「そうか…そんなことが…」
「そう、つまり未来の俺をぶったおして未来を変えようがあいつ、舞は帰ってこなかったってことさ」
「今までその力をギリギリまで隠してここまで来たと…?」
「…いや、ちょっと違うな。正しくはあいつの記憶が改ざんされていたんだと思う。」
「それって親父さんを探しに来たってことが間違いだったってことか?」
「それも違うと思う。おそらく親父を探しに来てたのは正しいのだろう。けどその親父が」
「魔王サイド…ってことか。」
「俺の予想だと、記憶を変えられて俺に魔王の力を悟られないようにして俺と合わせたんだろう。偶然を装って、な。」
「それでお前の力を奪えるときに」
「そう、俺の力を奪いこの世界を終わらせるつもりだったんだろう。今のところは最悪の事態は免れたって感じだな。」
話の区切りがついたところでおっちゃんが「どうぞ。」と言ってラーメンを出してきた
「おぉ!うまそう!」
「しっかし、この異世界にラーメンがあるなんてな。この世界にはないと思っていた食い物だったんだけどな。」
「ズルズルズルズル…んんまあああああああああああああい!!!!!」
「おぉ、確かに美味いな、俺らの世界で食ってたやつとそう変わらん。」
そういうとおっちゃんは何かに気が付いたように話しかけてきた
「お前さん、もしかして親父を探してたりしないか?」
「ん?おっちゃん、その話おっちゃんにしたっけ?」
「いや、そうじゃないんだが。昔俺は人に助けられたことがあってな。そいつとお前がそっくりなんで。」
「けどそれじゃ俺が親父を探しているってことにつながらないんじゃ?」
そういうとおっちゃんは一つの手紙を出した
「こいつは、俺が助けられたときに預かった手紙だ。ここに宛名がある。これはお前さんの名前だろ?」
その手紙には「タヌピス」と書かれた横に書かれた文字を見て驚いた
「そうだ…これは確かに俺の名前だ…」
「こいつをお前さんに渡せと言われてな。それは何十年前の話になるか」
数十年前
「クソッ…何だってんだ!」
その日男は魔王軍の魔物に追われていた
せっかくの休日が魔王軍の進軍のせいで台無しだ
やはり今日は厄日だったんだろう
すると目の前から違う魔王軍の魔物が出てきた
「チッ…これは俺も運の尽きだな…やっぱり今日は厄
「諦めんじゃねぇ!そこの青年よ!」
すごい勢いで拳を飛ばしてくる白髪の男がいた
その拳は、熱く、そして燃えていた
「俺が来たからにはもう安心さ!さぁ青年よ、立ち上がれ!」
「あんた!そいつは魔王軍の奴だ!あんたじゃ勝ち目も
「ないってか?甘いぜ」
その男は燃える拳を天に掲げると、そこから光が放たれた
すると周りの魔物は消滅した
「あんた…一体…何者だ…?」
「俺か?俺は…そうだな、勇者だ。」
「あんた、助けてくれてありがとう。だが、まだ家には…」
「まぁ帰れないわな、すまねぇ。まだ町は制圧しきってなくてな。今日はここでキャンプだ」
「キャンプ…?なんだその言葉。初めて聞いたな」
「あー…野営…?なら通じるのか…?」
「そうか、そういうことか」
そういうと男の腹がグーっとなった
「ん?お前腹減ってたのか。それなら先に行ってくれればよかったのに。」
勇者はテントの中からあるものを取り出した
鍋と具材だ
「肉となんだこれは」
「こむ…じゃなくてとりあえず粉を固めて麺状にしたもの。それからスープだ。」
「こいつは?」
「それは煮卵つって、卵をゆでたやつだ。こっちでは食わんのか?」
「卵は焼くものだろう。煮たらドロドロに溶けちまって食えたもんじゃないだろう。」
「チッチッチ、殻のままゆでたら卵は固まるのさ。」
そういって男は料理を作った
「こいつは?」
「ラーメンっつー食い物だ。こっちでは見ない食いもんだろ?」
男は食べ方がわからず、おろおろしていた。
「いいか青年よ、ラーメンはこう食べるんだ。」
ズルズルッ!と勇者は麺をすすった
「うん!我ながらうまい!ささ、青年も食べなよ」
そう言われ、男はズルズルと麺をすすった
「ほぉ…こいつはうまい。」
「だろ!」
その夜が明け、次の日になると戦いは終わっていて男は家に帰ることができた
「いや、勇者さん。昨日は助けられた。お礼と言っては何だがうちでゆっくりと」
「すまねぇ、それはできない青年。俺にはまだやるべきことが山ほど残っているんだ。」
そうか。と男は言ってなら仕方ないと、少し寂しそうな顔をして言った
「あ、じゃあ青年に一つお願いがあるんだ。」
そういうと勇者は何もない手の平から光を放ったと思えば
その場に屋台と調理セットと暖簾を作り出した
「このセットで、あるところでラーメンを作っていてほしい。そしていつか必ず俺の息子がやってくる。」
すっと勇者は手紙を渡してきた
「こいつを、息子に渡してほしい」
「ほんとに来るのかい…?俺は農作業をしているだけだからそのらぁめんとやらをを作って稼ぐことに切り替えてもいいが」
「きっと来るさ、何ていったって俺の息子にはラーメンが好きな友達ができる、と予言で言われたからな。」
「本当かい、それは。」
「うっそー、ただの勘だよ青年。」
そういうと勇者は歩き始めた
「気を付けるんだぞ!勇者さん!」
男は笑顔で手を振り続け
勇者はちょっと手を挙げて振ってそのまま振かえらずに歩いて行った
「それが俺とその男との出会いだった。」
「そうか…俺の親父はやっぱりここに…」
ドキドキしながらタヌピスは手紙を開けた
そこには
「覚悟を決めろ」と一言書かれていた
「覚悟を決めろ…?」
「なんだそりゃタヌピス」
「覚悟……そうか、なるほど。」
「なんかわかったのか、お前さん。」
そう聞かれ、タヌピスはフッと笑った
「俺も、端くれでも悪に堕ちる可能性がなくもないってことか。上等じゃねぇか親父ィ…」
「まぁ、なんだかんだでその手紙を渡せてよかったよ。」
「おっちゃん!今日はもう食って食って食いまくると決めた!お代わり!」
「あれお前いつの間に食った!?」
「伸びるぞ、クロマ。」
「おう!……ってもう伸びてるゥ!!!!」
「さっさと食わないからだ」
「大丈夫だ、まだ替えならたくさんある。じゃんじゃん食ってくれ」
その夜は、とても長く感じる夜だった
親父はここにいるとわかったこと、それから。
もしかすると、親父と戦うことになるのかもしれない、と。
そう考えることのできた夜だった。




