第一話 「旅路の答え」
辺りは真っ暗だった。涼しい風の音とか人の足音も聞こえない。ただ真っ暗な空間が広がっている。
でも唯一聞こえてくるものがある。
ジャラジャラ……
遠くから鎖が鳴ってる音がする。
どこからかは分からない。ただその鎖の音が俺に何かを訴えてるような気がした。
不思議にも鎖の音は不愉快に感じない。むしろ心地良いとおもった。
ジャラジャラ……
どんどん音が近づいてくる。一体どこから鳴っているんだ。
音が鼓膜を破る程に近づいてきた。でも……なんかやっぱり……
“気持ちいい“
起きたら大きな満月が窓越しに光っているのが分かった。
むくっと体を起こす。
毎度ここで目が覚める。鎖の音が自分の近くで鳴って、鼓膜がその音でいっぱいになるところで起きてしまう。
こんな事が大体10年前からあった。
でも、それをストレスとは感じなかった。
なんでこんな夢を見ているのか、どうして鎖の音がするのか全くわからない。
まぁそんなことはぶっちゃけどうでもいい。まだ15年しか生きてないし、ストレスなんか抱えたらここぞという時に体が鈍るしね。
それに俺はこの世界にとって弱者でしかないし……。
日課のトレーニングが終わった時、家のインターホンが鳴った。
「リテルー!」
玄関前なのにハッキリと聞こえてくるその声は聞き飽きるほどうるさかった。
俺が住んでる街はレキア王国の”メコオ”という小さい街だ。
小さい街と言っても文明が遅れてる訳じゃない。
他の王国や街のように石で造られた家が並んでいる。
決して田舎ではないため深夜から大声を出せば近所迷惑になる。
嫌々玄関を開けると案の定彼女がいた。
「迎えにきたよ!今日作戦の日なんだからさっさと準備して!」
「わかってるよ。今着替えるから待っとけ。」
彼女はメイガ・レイディン。一応俺のバディだ。
俺たちは“革命軍“と呼ばれる組織に所属している。
本来俺の年齢ぐらいになると学校に行って将来について考えたり。勉強したりする。
でも、俺とメイガは学校に行く事ができない。
理由はただ一つ。俺たちが‘’無能力者“だからだ。
そもそもこの世界の⒐5割は“能力者“というなんらかの能力を持って生まれてくる。
能力の種類は多種多様で手から炎が出たり、口から水を出したりする。
そんな能力者とは別に0.5割の確率で生まれてくるのが無能力者。
要は何もできない凡人ってことだ。
なんでもできる能力者と、なにもでない無能力者。
そんな世界の中で問題になっているのは無能力者格差。
つまりこの世界で生きていくためには能力は必須であり、能力を持たない無能力者は必然的に世界からは不要とされる。
能力者が無能力者をいじめることは不思議ではないし、俺自身も経験がある。
学校も能力の使い方や自分に合った能力に合った職業に着くために行く場所だから、無能力者は学校には行けない。
というか無能力者だけが行ける学校があってもいいんじゃないか?
まぁ今更どうこう言っても意味なんてない。
無能力者として生まれてきた時点でそもそも戦うことすらできない。
能力者同士の喧嘩に巻き込まれても、いじめにあっても抗えない。
この世界は理不尽だ。
一体誰が能力なんて生み出したんだろう。
考えてもなにも結果なんて出ない癖に毎度考えてしまう。
「まだー?早くしないとリーダー怒っちゃうよー?」
「ごめん、今出るから。」
街を出る時も注意しないといけない。なるべく人通りの少ない時間帯に出ないと、街中の人から哀れな目で見られるし、急に能力で襲ってくることもある。
ほんとに差別の度がすぎるよな。
家の屋根とかを経由して俺とメイガが所属している革命軍の基地についた。
革命軍は無能力者が集まった組織で、世界の不要物である無能力者が能力者が引き起こす犯罪、通称“能力者犯罪“を止める組織だ。
能力がなくともこの世界で生きていきたい。
能力がなくても能力者と戦えるようになりたい。
そんな人たちが集まっている。
アジトの扉を開けて仲間に挨拶する。
「おせーな。何分待たせるんだよ。」
「すみませんって。でも遅刻はしてないんでそんな怒らないでくださいよー。」
「はぁ、まぁいい。でも気持ちもう少し早めにこいよ。作戦の決行日は毎度お前を待ってるぞ。」
「はーい。」
「メイガもリテルをもっと早く迎えに行ってやれ。」
「え!私のせいですか?」
「そんな事は言ってない。ただバディなんだからちゃんと面倒見ろって言ってんだよ。」
「もうすでに面倒見てるんだけどなー。」
「大体メイガが組みたいって言ったから組ませてやったんだろ。」
「ちょ!リーダー!」
なんでメイガが赤面してるか分からないけど、やっぱりここの雰囲気はいいな。
今話しているのは革命軍のリーダーのノヴァさん。
組織の創設者で革命軍を率いている人だ。
ってそろそろ作戦の話しないとな。
「ノヴァさん。そろそろ作戦の話を。」
「ああ。その前に突然だが新メンバーを発表する。」
「マジですか!?」
革命軍は全員で23人。
ノヴァさんと革命軍のメンバーがいろんな街から無能力者を集めて今の人数だ。
一般的に能力者犯罪を取り締まる組織は40〜50人以上の構成員でできている。
23人、それも無能力者だけの組織なんて集めるだけでも苦労するのに、よく見つけてくれた。
流石ノヴァさんだ。
「え!?やったー!新メンバーだ!」
「新メンバーなんて何ヶ月ぶりですかね?!」
周りがざわついている。
実際俺もテンションが上がっている。
「おい、入って来い。」
「は、はい!」
ぎこちない動きをした男が歩いいる。
いや、緊張してるにも程がないか?壊れた機械かよ。
「初めまして。本日から革命軍に加入しました。レクター・リオルンです。足が他と比べて速い方ってだけですけど精一杯頑張ります。」
初々しい挨拶だな。なんか懐かしい。
「一応今日は作戦の日だが、レクターにも作戦に参加してもらう。」
「え、大丈夫なんですか?」
「一応レクターにも了承は得ている。」
「はい、早く戦力になりたいので。」
「まぁ本人が言うならいいですけど。」
と言うのも今回の作戦はかなり規模がでかい。
加入したばかりの新人がついていけるかな。
「一応革命軍は2人1組のバディ制にしてるが、レクターが入って25人。1人余るから、どっかのバディにプラスでレクターって感じにしようって思ってる。」
「あ、そっか。23人で11組のバディにプラスでリーダー単体だから1人余っちゃうってことですね。」
「そう言うことだ。とりあえずリテルとメイガのバディのところに入ってくれ。」
「え、俺たちのところですか。」
「ああ、ついでに新人の教育も頼んだ。」
「私は大丈夫です。」
「俺も大丈夫ですけど、今回はノヴァさんが教育しないんですね。」
「ああ、作戦の都合上俺のところは危険だからな。」
新人教育は毎度ノヴァさんがやりたがるし。俺も別に反対してない。結局一番強いのはノヴァさんだし。
でも、任せられたからには責任持って教育しよう!
「よろしくお願いします。えっと……。」
「リテル・ブリンガーです。リテルでいいよ。」
「私はメイガ・レイディン。メイガって呼んで!」
「はい!足引っ張らないように頑張ります。」
もしもの時は俺が守ってやらないと。
もう、誰も失いたくないしな。
「よし、じゃあ1時間後作戦を決行する。レクターはリテルとメイガに作戦の内容を聞いてくれ。」
「分かりました。」
「よし……では各バディ散会しろ。」
『はい!!』
さて、今回もサクッと終わらせますか!
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この時の俺は知る由もなかった。
この作戦が何万年後も語り継がれる出来事だということ。
この瞬間……いや、何百年も前からこの物語は動いていたということ。
世界の仕組み
<能力者と無能力者の関係>
昔、能力者と無能力者はそこまで関係は悪くなかった。能力者犯罪は起きていたが日常会話をする程度の仲ではあった。しかし80年前の能力者戦争の影響で無能力者が能力者によって大量虐殺された。それ以来能力者と無能力者の関係はさらに悪化した。




