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エピローグ ーレイー

 



「どうだ?」

「大丈夫そうです。猫又さま、ありがとうございました」


 私は四階の窓際からのぞいていた首をひっこめると、隣にいるぶち玉の貫禄のある猫又さまに、にゃあと頷いた。


 ならよし、と猫又さまはうなずくと、雨どいの立てかけに足をかけ、よっ、はっ、と屋上までゆっくり上がる。

 私はちょっと太めな猫又さまが落ちないか内緒で見守ったあと、ささっと駆け上がった。


 振り返ってふーふーと息が上がっている猫又さまのとなりにちょこんと座る。

 五月のさわやかな薫風と共に階下に広がる街並みと海岸の風景が、私のひげをぴくぴくと揺るがした。


「嬉しそうだな」

「はい、それはもう」


 半月ほど前、ご主人さまがさかって接吻し美玲さまが頭をぶつけてしまった時、実は美玲さまの魂が半分抜けてしまったのだ。


 私が猫又さまを音楽鑑賞に連れてきていたからよかったものの、そうじゃなかったら美玲さまはおそらく打ちどころがわるく、という事になっていただろう。


 私はとっさに猫又さまにお願いした。

 美玲さまが助かるようにと。


 猫又さまは、いいっちゃいいけど、お前さんの魂を半分貰うよ、と言われたのだ。

 私は一、二もなく頷いた。


「お前ほどの徳がある猫なら、猫又になれたかもしれないのになぁ」

「いや、私はご主人さまのそばに居るのが一番ですから」


 捨て猫の私を拾ってくれたご主人さまは、私にレイと名前をつけてそれは可愛がってくださった。


 後でしったのだが、ご主人さまはだいぶ前から美玲さまを見初めていたらしい。ときおり美玲さまのお名前をだして、私に優しく、ときにおもしろく語りかけてくれた。


 その時に私は思ったのだ。

 ああ、きっと私の名前は、美玲さまの事を思ってつけたのだと。


 私は私の寿命よりも、美玲さまを救ってほしかった。美玲さまがいなくなってしまったらきっと、ご主人さまはなにもかもなげてしまう。


 あまり何も執着をもたなかったご主人さま。

 あんなにピアノが上手なのに、そんなに上手じゃないよ、と肩をすくめるご主人さま。


「音を追求するのは好きだけど……誰かの為には弾けないから、向いてないよなぁ」


 ある時ぽそりと言った時のご主人さまは、なんだか寂しそうだった。


 そんなご主人さまが唯一気にかけた美玲さま。私の魂との混ざり合いはうまくいった、と猫又さまは教えてくれた。


「混ざりすぎたときにゃぁ、どうしようかと思ったけれどなぁ。ちょっとお前さんの方に来ていたみたいだけどよ。その後は、安定したからいいんじゃねぇか?」

「はい、私の方は気がつきもしませんでした。大丈夫です」


 私はにゃあと頷くと、猫又さまと共に家路へと歩き出した。先に雨どいからベランダへしゅたんと立つ。

 お、降りる方がおっかないの、どうにかならんもんかねぇ、と腰が引けている猫又さまを下からにゃあと励ましながら音楽鑑賞の部屋を覗くと、もう電気が消されて二人はいなかった。


 帰られたかな、とベランダから下を見ると、丁度、ご主人と美玲さまが出てくる所だった。なにやらしばらく話していると、ご主人さまは手を出したようだ。美玲さまはきょろきょろと辺りを見回すと、そっと近づいて手を繋いだ。


 私はにゃふふ、と微笑んだ。


 ご主人さまと美玲さまが落ち着いて楽しそうなら嬉しい。それが私の幸せ。


 いつか美玲さまがご主人さまの所にきて、美玲さまにもお祝いのすりすりができるのを楽しみしている。








 完



お読みくださりありがとうございございます!


本作はアンリさま主催の「クーデレツンジレドン」企画作品です。


レギュレーションとして

ツンジレ・囲いドン


をシチュとして入れ込みました。

キュンまでいけたかは分からないです。すみません(汗)


企画にはこの他にも素敵なドン作品がたくさんありますので、よかったら覗いてみて下さい。



また、感想欄にてサイレンサーピアノについて質問がきたのでこちらにも記載しておきます。


サイレンサーピアノは後付けで外部機器を取り付けてヘッドホンで音を聞き、消音できるピアノです。


メリットとしては名前の通り消音できるのですが、デメリットとしては厳密にいうと音色とタッチが変わります。


中級以上、そして音大を目指す方にはおすすめは致しません。


今作ではそこまでの事が書けなかったのでこちらに明記しておきます。



最後までお読みくださりありがとうございました。

今日という日がみなさまにとって良い日でありますように^_^


なななん

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