21話
私はテンマサマはモキュメンタリーホラーの素材にピッタリだと思いました。
だけど、タタリ神だということも留意しないといけない。
私は悩みました。
テンマサマを題材にしても良いのかと。
だから、私は直接神様に聞くことにしました。といっても、神社に行って参拝するだけです。
一応、名前は伏せますが、テンマサマが関係する神社です。
私はそこで、こう願いました。
「テンマサマを題材に小説を書きたいと思っています。もし、許可をいただけるのであれば、そうだとわかるように何か特別なことを見せてください」
この日、私はテンマサマに関わることを現地調査したいと思っていました。
山に関わること、水辺に関わることだったので、ダムに行こうと。
地元には二つのダムがあります。天間ダムと作田ダム。
まず始めに行ったのは天間ダムでした。
車を走らせ、国道に出る。有料道路の方に進むと橋の手前に脇に逸れる道が出てくる。
そちらの方に進み、砂利道を走り、山を登るように行くとダムが姿を現した。
ダムには溢れんばかりの水があり、空気が澄んでるようにも感じられる。
目一杯深呼吸をして、ゆっくりとダムの景色と空気感を楽しんだ。モキュメンタリーホラーの題材にするなんてことは忘れるほどに素晴らしいところだった。
天間ダムを楽しんだ後は作田ダムに向かうことにした。
国道を南に走らせ、七戸の道の駅まで行く。そこを曲がり、ひたすらまっすぐ行くと作田ダムがある。
アスファルトから砂利道へ。景色は林から森へ山へと変わっていく。そして、トンネルが見えてきた。
このトンネルを抜ければ、ダムが見えてくる。
昔、一度だけここに来たことがある。女の子と夜のドライブをしていた時だ。
頭の中ではエッチなことを考えながら、適当に走っていたら、たどり着いた場所。
ちょうどトンネルに入るところだった。車のライトに照らされて、一瞬何かが見えたような気がした。
小学生くらい女の子。夜遅い時間にいるはずはない。
そう思い、見なかったことにした。
トンネルを抜けて、ダムのところにまで出て、駐車する。
だけど、さっき見た光景がチラついて、女の子とイチャイチャする気はなれなかった。
そんなこともあったな。
昔話を思い出しながら、トンネルを抜けようとした。
久しぶりに見るトンネルは景色が違って見えた。
昔は夜だったから、その異様さに気づくことはなかった。
灯りのない少し長いトンネル。どこか寒気がするような気がする。
ここに来た後で、一度調べてみたことがある。ガラケーの時代だったから、調べられることにも限度はあったが、それでも見つけられた。
このトンネルは心霊スポットとしてホームページに載っていた。
そんなことを思いながら、トンネルを抜けて、ダムに出る。
天間ダムとは違い、観るようなところはほとんどない。よっぽどのダム好きじゃないと、ここは来るような場所じゃない。
そう思い、帰ることにした。
そして、帰りの道中で『それ』は現れた。
神の使い、ニホンシカだ。
二匹のニホンシカが目の前を横切っていった。一瞬の出来事だったが、見間違えることはない。
青森県にはニホンシカはいない。たまに特別天然記念物のカモシカを見ることはあっても、ニホンシカを見ることはない。
というか初めて見た。初めて見た日が神様にお願いをした日だった。
「何か特別なことを見せてください」
その願いはテンマサマに届いていた。
私はテンマサマを題材にして、小説を書くことにしました。
ですが、私は取り扱い方を間違えてしまっていた。
でも、この時は知らなかった。
テンマサマがタタリ神だという本当の意味に。




