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11−7 サーバント川を超えて

 知らせを受けた南岸の司令部は慌てて設営隊を北岸に渡らせた。川原から石を運んで、低い石垣の壁を作って土手の近くに橋頭保を築いた。近くの町に偵察隊を出したが、町長は無条件降伏を申し出た。クリフォード男爵の家臣達は慌てて逃げて行ったんだ。


 男爵家だけで北部討伐の騎士団を相手に出来ない。魔獣だけが頼りだったんだ。但し、実際にはこの地に集まっていた部隊はクリフォード男爵の家臣だけではなかった。ラッセル候が命じてその他のラッセル派の貴族にも兵を出させたんだ。彼等は魔獣が聖女テティスの敵ではない事を領主に報告した。


 早々にお忍びで宰相に面会を申し出た貴族がいた。

「おや、ラムリー伯爵、貴方は急病で領地に向かったと伺ったが、体調は好転したのですか?」

「宰相、嫌味は止めていただきたい。このタイミングでこちらからの急用と言えば、当然王家へのとりなしと決まっているではないか」

「おや、貴方方の親分に何かありましたか?」

「いや、そういう事ではない。やはり大義なき蜂起には参加出来ないと判断したのだ」

「そう言えばクリフォード領での戦闘は、聖女テティスの一方的な勝利に終わった様ですな。その報でも入りましたか?」

「…彼女は聖女の範疇に収まらないと考える。彼女を偽物と言う事に理があるとは思えない」

「まあ、サーバント川の流れを変える様な者を聖女と扱うべきか、国一番の魔術師と扱うべきかは考慮の余地がありますな」

「だから、王家と西部教会の判断を支持する。王家の忠実な僕として再び誓いを捧げる事、陛下に上申していただきたい」

「申し上げますが、手土産があれば尚よろしいかと考えますな」

「分かっている、我々に与えられた兵力は魔獣だ。ケンタウロスの繁殖を行っているが、これの統制についてはラッセル候からの情報で、多分我々に伝えられない制御の方法があると考える。ラッセル候に向けた兵力として使用するのは危険と考えている」

「ケンタウロスの繁殖についての機密情報を書面でいただきたい。上申時にはそれを添えたい」

「分かった。明日までに概要をまとめて提出しよう。詳細は領地で纏めさせるから、後日とさせていただきたい」


 こうしてラッセル派の貴族が雪崩を打って王家へ忠誠を誓い直した。討伐が始まっていたコーンウォリス子爵にはクリフォード領での戦闘の結果が伝わらなかったから、王家側の戦力の誘引を続けるために無駄な犠牲を出し続けた。


 そしてクリフォード男爵の領主の館に第二騎士団が接近していた。

「閣下、敵軍勢が明日にはこの地に到着する予定です。ご指示をお願いします」

「もちろん、籠城する以外にない!ただし、各方面の味方に助勢の催促を続けよ!」

「ラッセル候からの助勢は何時いただけるのでしょうか?」

「閣下はこの地で押し返せとのお達しだ。その為には味方からの助勢が必用なのだ!」

「このままでは手遅れです。お味方からは自領の防衛準備で兵は出せないとの返事で一致しております」

クリフォード男爵は机を叩いた。

「この地を抑えられたら、もうラッセル候の領地に敵兵が辿り着いてしまうのだぞ!味方達は何を考えて居るのだ!?」

何を考えているのかは明らかだったが、それを口にして領主の不興を買うのが嫌だから皆黙っていた。ラッセルと言う気まぐれで無責任な扇動政治家に従う者は、やはり同じく感情論者で刹那的な利益を重視する者達で、気に食わない部下を従える度量は無かった。だからこの領主の周囲にも、領主の機嫌を損ねる事は言わない者が揃っていた。


 クリフォード男爵としてはもう頼れる者はラッセル候しかいなかった。

「ラッセル閣下に再度申し入れよ!」

そう言う訳で、クリフォード男爵の周囲は上司の顔色を見て発言を修正する者達ばかりだったから、ラッセル候に面会が出来たとしても候が顔色を変えればもう何も言えない、そういう上申になる筈だった。そもそも、ラッセル候は男爵如きの生死など何とも思っていなかったから、再度の上申の使者に会うとは思えなかった。


 クリフォード男爵の領主館に対する戦闘を明日に控え、近隣の農村近くの天幕で行われた軍議の席でリチャード王子は情勢を報告した。

「王家に対してラッセル侯爵、コーンウォリス子爵並びにクリフォード男爵以外のラッセル派の貴族は恭順を示した。横からの介入は無い。クリフォード男爵勢の殲滅に専念して欲しい」

第二騎士団の偵察報告が続いた。

「クリフォード男爵の館からは後方へまた使者が出た様です。前に出た使者も無駄になっている事から、今回も支援があるとは考えられません。館と周辺の陣からは脱走が続いております。逆に残っている者達からの離反・降伏は少ないと思われます。いずれにせよ、兵力配分を間違えなければ各陣地へは優勢に攻撃を仕掛けられると考えます」


「聖女テティスはどの様に考えるか?」

リチャード王子がこちらに話を振る。どうって言われてもね…

「ブリアレオス、ラッセル領からこちらへの敵戦力の分布はどうなっているの?」

「ラッセル領は検問所を放棄している。都市の防備を固めている様だ。クリフォード男爵領では領主の館の後背からの攻略を警戒して細かい偵察を出しているが、逆に兵が分散して大勢の敵と戦える状態では無い」

「魔獣の配備状況は?」

「ラッセル領では本拠地に集中している。クリフォード領では領主の館付近に4頭のミノタウロスがいるだけだ」

天幕内がどよめいた。まだ魔獣がいるとは思っていなかったんだね…


「とりあえず先鋒と同行してこちら側の魔獣を倒します。何時に出発するかは事前に教えてください」

「明朝8時に指揮官がこの地を出る。それに同行して欲しい」

「分かりました。ヨハンは何か言う事はある?」

「同行するが、牛を炭にしたくなったら早めに言ってくれ」

リチャード王子が間髪を入れずに口を挟んだ。

「それは最後に取っておけ。聖女テティス、貴女に期待している」

私としては聞こえないくらい小さな溜息を吐くしかなかった。

「ご期待に沿える様、努力いたしますわ」

「頼んだぞ」

 はつもうで 8時半では 遅すぎる


 6時に目覚ましをかけて日の出前に家を出ようとしたんですが、二度寝しました。8時半まで順調に車が進んだので、あの信号さえ過ぎれば!と言うところで30分ほぼ動きません。警察か民間の誘導が始まり、何とか10時過ぎに神社の周囲の有料駐車場に入れました。おみくじは引いたけどお守りは諦めました。


 明日も更新します。


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