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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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自分は正真正銘の●●です!

 キスをしたい、抱きしめたい。

 沸き上がった感情そのままに、初夜へ突入する。そう思われたが――。


「アイリは初夜について不安であり、心配だと言いましたよね」


「! 会って三日で初夜をすることが、不安で心配だった、ということではありません」


「ええ、分かっています。初夜でどんな行為が行われるか分からない。だから不安だったということですよね。それは自分も同じでした」


 ライルはあの時、私の父親に急かされ、婚約から三か月の結婚式を受け入れたことを「大きな間違い」と言っていた。その意図を今、詳しく教えてくれた。


「アイリと結婚できるのは、嬉しいことです。三か月後の挙式を提案された時は、早過ぎる……よりも、単純に喜ばしく感じていました。でもそれは本当に一瞬のことです。自分としては、アイリとちゃんと思い出を作りたい気持ちがあったので」


「思い出……?」


「デートについて、いろいろ話しましたよね」


 これには「あ!」とすぐに応じることになる。

 確かにライルはデートと、そこで作りたい思い出について、とても沢山語ってくれた。それはとても心温まるもので、全てのデートをしてみたいと思えたのだ。


「時間をかけ、思い出を重ね、そしてお互いを深く知り、結婚できたら……それが自分の理想でした。でも妹君の件もあります。結局、三か月後の結婚式を受け入れました。ですがそれは、お互いに準備が足りない結果になったと思います。初夜に対する準備が足りなかったと」


「それはつまり……」


「初夜に対し、アイリは不安で心配していました。そのアイリの不安と心配を取り除くことが、自分にできたかというと……。その時の自分では無理でした。これではダメだと思ったのです。きちんと初夜での行為について学び、アイリが不安に感じ、心配になるなら、それを解消させられないとダメだと」


 ライルは何てできた人なのだろう。

 私の不安や心配を取り除きたいと思っていてくれたなんて。

 その優しさに、胸が熱くなる。


「そこで無理に初夜を決行する必要はないと思ったのです。きちんと学んでから行えばいいと思い……。まさか結婚式を挙げたその日の夜であることが、ここまで重要であるとは、認識していませんでした。あの演劇を鑑賞したことで、自分がまだまだ勉強不足だったと気付かされ……。本当に申し訳なかったです」


 ライルが私の手を取り、両手で握りしめ、甲へと唇を押し当てた。

 深い懺悔の気持ちが伝わってきて、胸が熱くなる。


「ではライルは……改めての確認となりますが、私と初夜をやる気がなかったわけではないのですね」


 ライルは顔を上げ、その澄んだ碧眼を私に向け、真剣な表情で告げる。


「本能の赴くままに抱いていいのなら、あの日の夜、そうしていました。アイリを欲しいという気持ちは強くあったので。でもそんな風にはしたくなかったのです。アイリのことがとても大切なので。不安や心配な気持ちで震えるアイリに無理強いするなんて……できませんでした」


 ドキドキするような言葉が、真摯な表情のライルからぽんぽん飛び出してきて、私の心臓は爆発しそうだった。


 同時に。


 私は完全に白い結婚だと思ったけれど、そうではなかったのね……!


「きちんと学ぶことができたので、領地にいる間に初夜のやり直しをするつもりでいました。ですがタイミングがあわなかったので……」


「え、領地にいる間にやり直しを!? というか、学ぶことができた……そんなに良き指南書に出会えたのですか……?」


 するとライルは顔をかなり赤くして、視線を伏せる。

 またも乙女ライルになってしまった。

 しかも黙り込んでしまったので、私が話すことにした。


「私が月のものなってしまったので、初夜のやり直しは、すぐにできなかったわけですね。そして王都に着いてからは、任務で共に過ごす時間がとれず……」


「はい。そうなのです。そして初夜での行為については、本で学んだのではありません」


「……?」


「メイドが……領地の屋敷のメイドの話を聞いてしまい、誤解されたくないのですが……。でも打ち明けます。王都でもどこにでも必ず街にあるのは、娼館です。……ご存知ですか?」


 ここにきて娼館という言葉が登場し、私は大いに驚くことになる。

 いろいろ言いたくなるが、そこは我慢し、ただ「知っている」の意味で頷く。


「恋人や妻がいるのに、娼館通いする男性は嫌われる……そう、メイドの話で理解しました。自分は娼館へ二度ほど行きましたが、欲求を満たすために、足を運んだわけではありません!」


 これにはハッとする。フィオナが布石を敷いていたが、ライルにはバッチリ、聞いて(効いて)いたのね! だがしかし。


「では何のために娼館へ……?」


「それは勉強するためです!」


「べ、勉強、ですか……?」


 予想外の言葉に、声が上ずってしまう。


「はい。初夜で行う行為を詳しく習い、どうしたら女性が気持ちよくなれるのか。いろいろ教えていただきました」


 これには思わず喉がごくりと鳴る。

 そして不躾だと思うも、聞かずにはいられなかった。


「勉強のために、娼婦を抱かれたのですか」


「!? 抱いていません! 自分の初めては、アイリに捧げると決めていますので!」


 なんて質問をしてしまったのかしら、私!


 赤面だが、喜びは足元から這い上がってきている。

 ライルは娼館へ足を運んでいたが、娼婦を抱いたわけではなかった。

 そして……。


 初めてを私に捧げる……って、これまたライルは乙女みたいなことを言い出すのだから!


「実演がなしでは、練習したとは言えない、机上の空論だ!とは言わないでください! ベルナードは『男の体は女性とは違い、経験の有無なんてバレることはない。そんなに不安なら、一度試しで抱いてみたら』と言ったのですが、そんなこと、自分にできるわけがなく! 決して娼婦を抱いてなどいません。信じてください。自分は正真正銘の童貞です!」


「ライル、大丈夫です! 信じます。信じますから!」


 “野獣”(ビースト)とは思えない、貴公子のような風貌で、誠実で優しさに溢れるライル。

 初代ウィンターボトム侯爵であり、王立イーグル騎士団の団長である彼に。

 「自分は正真正銘の童貞です!」と言わせてしまうなんて!


 申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


 それにこれで謎は全部解けた。


 ライルはそもそも白い結婚にするつもりはなかった。

 ただ夫婦の夜の営みについてよく分からず、きちんと学ぶ必要があると感じた。何より私も不安で心配そうにしているのだ。ゆえに初夜の中止の判断は、彼としては妥当なものだった。


 それに領地いるうちに、やり直しを考えてくれていたのだ。

 ところが私が月のものになってしまい、先延ばしとなってしまった。


 かつ高級娼館にも、男娼を抱きに行ったわけではない。

 初夜の行為について学ぶために、足を運んでいただけだった。


 さらにエドガーと私の関係が気になり、抱きしめたり、キスをすることためらっていた。


 なんて乙女なのかしら。


 いろいろと気配りができ、とても繊細。

 しかも真面目で勉強熱心。


 そしてライルは本当に心から、私のことを想ってくれていたのだ……!

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