モブNo.234∶「それは理解してます。だからこそ恨みますからね」
今回の依頼の現場であるエドネイア宙域は、イッツから向かう場合はゲートの関係で1日かからないが、エドネイア宙域からイッツに帰ってくる場合には、同じくゲートの関係で、最短でも5日もかかってしまう。
しかも到着が銀河標準時で23時に近かったために、ローンズのおっちゃんもゼイストール氏もいなかったので、すぐに家に帰った。
その日の夕食は船のなかで済ましたので、家に帰ったら風呂に入ったあと、久しぶりに緊張しなくていい夜を実感しながら眠りについた。
それから1週間は休暇ということにして、初日の午前中は船をドルグ整備工場に預けに行き、午後は『アニメンバー』で色々と買い込んでから帰った。
そして翌日からは、ネトゲに動画視聴にアニメ視聴と、立派なオタク生活を満喫した。
そしてその休暇中に、おめでたい? ニュースが報じられた。
離反し、『鬼神艦隊』という反帝国勢力になってしまい、不在になっていた第7艦隊の再編が完了したというニュースだ。
旧第7艦隊は、平民と植民地民ばかりで構成されていたにもかかわらず、最強の部隊といわれていたこともあって、一部の貴族軍人達からは敬遠されていた。
同時に、第7艦隊の所属隊員達も貴族軍人達を敬遠していたという話だ。
そんな内部の不和の原因を解消するべく、今回の再編では身分を問わず、能力重視で人員を選抜したそうだ。
その新生第7艦隊の司令官は、綺麗なライトグリーンの髪をギブソンタック(低い位置にロール状のお団子を作るスタイル)にした黒い瞳にファッションであろう眼鏡をかけた30代くらいの女性だった。
名前はアリッサ・ローズライン。
見た目の雰囲気は事務方のお局様みたいだけど、ゴンザレスの情報によると、『教授』『古狸』『ぬらりひょん』とも言われている第8艦隊司令官キーン・ゴルフォックス大将の生徒で、その第8艦隊の元副官であり防衛戦が得意なため、『盾の女神』と呼ばれていたらしい。
しかも年齢は28だった。
司令官就任直前までは中佐だったそうだが、任命されるに当たり、2階級特進となったらしい。
軍人さんとしては2階級特進というのは縁起が良くないように感じるのは僕だけだろうか?
そんな感じで休暇を楽しみ、ドルグ整備工場から船を受け取り、久しぶりにギルドにやってくると、ローンズのおっちゃんがにこにこ顔で迎えてくれた。
「よう。休暇はどうだった? しっかり休んだか?」
あまりにもにこにこしているのでちょっと気持ち悪くなったけど、
「まあ、休ませてもらったけど……どうしたの? えらくご機嫌だけど……ああ」
その原因が、僕がプレゼントしたチケットだと理解した。
「おうよ! いや〜〜最高だったぜ! 妻も娘もものすごく喜んでくれてな!」
ローンズのおっちゃんはかなり嬉しそうだった。
それを見ると、プレゼントした甲斐があったというものだ。
「受付全体に渡したやつはどうなったんです?」
「許可取って、ここの屋上でバーベキューをやったらしい。そこなら休憩の間にさっと行って食べられるからってな。休みの奴が管理を引き受けてたよ」
「よく許可が出たねえ」
こういった建物の屋上は入れないところが多いのに、よく入れたなと思っていると、
「激務から解放された慰労会ってことで、部長といっしょにギルド長をおど……交渉してもぎ取りました」
ゼイストール氏が横から話に加わってきた。
どうやら激務が終了した後に、慰労会として実行したらしい。
って……今、脅したっていいかけた?
すると、ローンズのおっちゃんが不機嫌そうに、
「こいつら俺には参加不可っていいやがったんだぜ」
と、愚痴をこぼした。
「そりゃあ、あとからとはいえ一番いいのを確実に食べられるんですから、自重するべきでしょう」
ゼイストール氏は、『当然ですよ』とおっちゃんを睨みつけた。
そんなやり取りを終わらせた後、ようやく依頼の報酬を受け取る手続きを開始した。
今回鹵獲したのは、発見したグラントロス社製G-07『フィバード』5機のうちの4機、1機は自爆による破損が大きく、金属スクラップとしての価値のみ。
そのグラントロス社製G-07『フィバード』の買い取り額は1機1065万クレジット。
4機で合計4260万クレジットになった。
それに、正規報酬の30万クレジットと、スクラップの10万クレジットを足しての4300万クレジットが、今回の報酬だ。
「最近は額がデカいな」
「なぜか知らないけど、いい船に乗ってる雇われらしい海賊が多くてね」
「なるほどな。免許持ちか。とりあえず報告しとく」
確定はしていないけど、今回の海賊は他国の通商破壊作戦である可能性が高いので、報告してもらうことにした。
もちろん匿名でね。
☆ ☆ ☆
【サイド∶帝国首都惑星ハイン・軍参謀本部・第三者視点】
銀河大帝国首都惑星ハインにある、軍参謀本部の建物内部にある休憩所で、1人の人物がプラカップに入ったコーヒーを飲みながら、大きくため息をついていた。
その人物は、第7艦隊司令官に任命されたばかりのアリッサ・ローズライン准将だった。
今回アリッサ・ローズラインが司令官に抜擢されたのは、ひとえに人材不足が原因であった。
その司令官就任の為の条件は以下の通り。
艦隊の運営、対艦戦闘の指揮能力は、一定水準以上あって当然。
その上でまず、皇帝陛下の皇配候補であったものは排除対象となる。
皇配が、オリバー・レイミス・オーヴォールスに決定した現状では、選ばれなかった候補者が、皇帝陛下に直接拝謁することの多い司令官の立場を利用して、皇帝陛下に接近する可能性も無くはないからだ。
そして次に、あまりにも自己中心的であったり、排他的であったりと、こいつは人格的・人間的に駄目だろ。と、判断された人物は失格となる。
そして最後に、反皇帝の陣営に属している人物および、反帝国主義者の陣営に加担している可能性のある人物も失格となる。
この条件はある意味絶対といえよう。
最初は希望者を募ったものの、全員がどれかの排除条件に当てはまっていたため、希望者以外から条件に当てはまる人物を探した結果、4名ほどが該当したが、現状の勤務状態や引き継ぎ要員の有無などを考慮した結果、当時第8艦隊副官であった、アリッサ・ローズライン中佐が抜擢されたのであった。
「おつかれさん。そして第7艦隊司令官就任おめでとう」
そこに現れて声をかけてきたのは、彼女の学生時代の教授であり、現・第8艦隊司令官キーン・ゴルフォックス大将であった。
しかし、元直属の上司であるゴルフォックスに対し、ローズラインは恨みがましい視線を向けた。
「おめでたくありませんよ……。恨みますからね先生」
「怖い顔で睨まんでくれんか。君以外に適任者がいなかったんだから仕方ないだろう」
「それは理解してます。だからこそ恨みますからね」
「理解してるならなおさらだよ」
「落とされた連中が煩いんですよ。子爵令嬢如きが〜〜って」
アリッサは眼鏡を外して眉間を押さえる。
「でも、据えれるのが君だけだったからね」
ゴルフォックスは心から申し訳なさそうに説明する。
「わかってますよ。こんなことになるなら、私も姉さんと同じ侍女になれば良かったわ」
アリッサはコーヒーを飲み干し、ゴミ箱に投げ入れる。
「確か腹違いのお姉さんで、今は陛下の侍女長だったね」
「今からでも求人ないかしら?」
「ま、あきらめなさい」
「はあ……。でも、やるからにはキチンと務めてみせますので、今後ともよろしくお願いいたします」
「ああ。よろしく頼むよローズライン准将」
アリッサは立ち上がってゴルフォックスに向かって敬礼をする。
ゴルフォックスも敬礼を返すと、アリッサは踵を返してそのまま休憩所を後にした。
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前回のメイド長の妹です。
姉∶ベルエナ・エダラー
前妻の娘。母親は彼女が3歳の時に死去。侍女になる時にローズライン子爵家に迷惑がかからないように、偽名であるエダラー姓をなのる。
妹∶アリッサ・ローズライン
後妻の娘。前妻の死後1年後に子爵が再婚し、4年後に生まれた娘。
後妻は姉も可愛がったために家族の仲はよい。
なかなか次の依頼を受けてくれない……
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