モブNo.218∶「海賊行為は世直しの為だ。みたいなことを言っていましたが、貴女がしていることは、ただの憂さ晴らしにしか見えませんね」
海賊行為に出ていたらしい2機の戦闘艇と、小型の貨物艇が帰ってきて、戦闘艇のほうが、即座に僕に襲いかかってきた。
まあ、自分達の母船が攻撃されていては当然だろう。
僕としても、なかなか見つからなかったストレスから、恐喝か詐称行為に近い勧告をしてしまったのは申し訳ないけど、誤魔化しも出来ず、こちらより先に機銃掃射をしてきたのはそっちの自業自得だと思う。
もしこの2機が、以前の赤青のコンビみたいな動きをするならかなりヤバいかも知れない。
僕はそんな警戒をしながら、2機の戦闘艇と対峙した。
彼等は完全に別々の動きをし、こちらの動きを止めるべく攻撃をしてきた。
以前の赤青のように、完全にシンクロした動きではなく、完全にバラバラ。
そのくせこちらを確実に追い詰めてくる。
バラバラだけに動きが読めず、片方を追いかければもう片方がこちらを追ってくる。
正直このままだとヤバい。
そう思ったのは最初だけだった。
バラバラに動いているように見せて、実は絶妙にこちらを追い込んでいた訳ではなく、片方が好き勝手に動き、もう片方がそれをフォローするべく動いていただけだった。
しかも、合わせようとしている方があまり上手ではない。
さらに、示し合わせて連携をとっている訳では無いので、自分達同士でニアミスしたり、こちらにミサイルを当てるつもりで発射するも、追尾装置のないやつだったらしく、回避した後はそのまま真っ直ぐに飛んでいったりと、よくこれで襲撃が成功したものだと感心するレベルだった。
とはいえ、好き勝手に動いている方はなかなかの動きをしていて、こちらを仕留めるべく確実に距離を詰めてくる。
なのでまず狙うのは合わせようとしている方――ヒヨコの意匠があるので、そのまま『ヒヨコ』と呼称――を先に仕留めることにした。
好きに動いている方――こちらにはウサギの意匠があるので『ウサギ』と呼称――は、こちらを狙っているからには、ある程度動きを予測できるのでほうっておく。
そして、まずは『ヒヨコ』に接近し、相手が慌てたところに、新兵器の閃光弾を発射した。
当然『ヒヨコ』は目眩ましを食らう。
しかし同時に、後ろにいた『ウサギ』も目眩ましを食らって動かなくなったため、素早く2機の戦闘艇の噴射口を破壊して動きを止めると、中型の貨物船に接近していた小型の貨物船の噴射口も破壊し、
「はいはい。死にたくなかったら抵抗はやめてくださいね」
と、降伏勧告をした。
彼等が抵抗をやめてすぐに、警察と曳航船を呼んだ。
僕が油断なく、彼等全体を見張れるところから監視していると、『リーガイン海賊団』の方から通信が入った。
「何かご用ですか?」
通信に応じると、画面に現れたのは、緑の長い髪に金色の瞳で、その容姿は女性の願望と憧れが全て詰まったような美少女だった。
おそらく彼女が『リーガイン海賊団』のボスなのだろう。
『どうして……どうして私達が海賊だってわかったんだ?』
外見が美少女なため、舐められないようにと、言葉遣いはわざと荒くしているらしい。
「中型貨物船の人員に、貴方達をなかなか見つけられなかったストレスの解消も兼ねて、ちょっとカマをかけただけですよ。そうしたらいきなり、『バレた!』とか言って機銃掃射してきましたからね」
その結果は推して知るべきだ。
『お前達が上手く誤魔化していれば、逃げられたかもしれなかったということじゃないか!』
するともう1人のパイロット――声からして女性――が、オープンチャンネルで中型貨物船にいる仲間を怒鳴りつけたらしい。
それはすぐに秘匿回線に切り替えられた。
すると今度は、キャプテンの女性、ミス・リーガインが僕に話しかけてきた。
『貴方は……今の帝国が正しいと思うのか? 皇帝の敷いた政策は効力が薄く、ほとんど意味がない。少し前の反乱軍鎮圧で、国民に理不尽を押し付ける貴族はかなりの数は減ったが、それでもまだ大量に存在している!』
その表情は真剣で、貴族への怒りは真実らしかった。
『そんな貴族や皇帝を排除し、国民の手に政治を取り戻すのが私の悲願だ! 貴方だって貴族に酷い目に遭わされたことがあるだろう!? お願いだ。私達に協力してくれ! この海賊行為は貴族の力を削ぐための行動なんだ!』
ミス・リーガインは、僕を真剣に説得しにかかってきている。
とはいえこちらも、『ハイそうだね。その通りだね』というわけにはいかない。
「そうはいっても、君たちが襲った船は全部民間の船だったはずだけど?」
『あの連中は貴族と繋がりがあったんだ!』
「それをいうなら、商売している人達全員がそうなるんじゃない? お客に貴族が来店する事だってない事はないだろうし」
『そういう意味じゃない! 連中は貴族に媚を売って見返りを貰っていたんだ!』
「証拠や根拠は?」
『私の勘だ!』
「それは絶対に証拠にはなりませんよねえ」
記録によると彼女達が襲った相手は全て民間人の船で、貴族絡みのものは皆無だったらしい。
するとミス・リーガインは画面の向こうで土下座をした。
『頼む! 私達を見逃してくれ! 後でキチンと礼はする!』
「お金なら、貴方達を捕まえた報酬が手に入りますし、貴方達の船を売り払った代金が正当な報酬として手にはいるからけっこうです」
いくら払うつもりかはしらないが、黒い金より真っ当な金の方が万倍もいい。
『では……私はどうだ! 一晩……いや二晩でもお前の好きにしていい!』
「嫌ですよ。それに貴方、どれだけ自分に自信があるんですか」
『頼む……私達は捕まるわけにはいかないんだ!』
そんなことをしたら完全にこっちが悪者になってしまうから、絶対に乗らない。乗るはずがない。
するともう1人の女性パイロットが、
『貴様! エリザ様にここまでさせておいて、御力にならないとはどういうつもりだ!?』
と、怒鳴りつけてきた。
「じゃあ提案に乗れと?」
『エリザ様に近寄ったら殺す!』
あーーこの人は話の通じない人だ……。
おそらく、この人の理想としては、今の話を聞いて僕が感銘を受け、無条件で協力、絶対服従するのがベストなんだろう。
そしてこの時点で、一つの矛盾点が浮かんだので、どうせならぶつけてみることにした。
「貴方達は、その国民に理不尽を押し付ける貴族なんじゃあないんですか?」
『!……』
「沈黙は肯定、ですね」
様付けで呼んでいたりする時点で間違いないけどね。
『確かに私は以前は子爵令嬢でした。ですが、先代皇帝の御代に、子爵であった御父様がありもしない罪を捏造され、没落させられたのです! しかも! 裁判ではありもしない証拠や、偽の証言者まで仕立て上げて! 私は先代の皇帝に訴えた! 再度調査をしてほしいと! しかしそれは一考もされずに却下された! こんなことが許されるわけがないでしょう!?』
エリザ嬢は声を荒げて訴えてくる。
悔しいのは良く分かる。
僕の父さんが似たような目に2回もあったからね。
「それについては同情しますよ。私の父も貴族に濡れ衣を着させられましたからね。それも2度も」
僕がそう言った瞬間、彼女の表情が明るくなった。
味方になってくれると勝手に確信したのだろう。
「ですが、父は貴女と違って海賊になって他人の物を強奪したりはしませんでした。父は裁判すらしてもらえなかったにもかかわらず。です」
僕の発言にエリザ嬢は、うっ! という表情をした。
「海賊行為は世直しの為だ。みたいなことを言っていましたが、貴女がしていることは、ただの憂さ晴らしにしか見えませんね」
そう僕が言い放つと、エリザ嬢は俯いてしまった。
それと同時に、警察の船と曳航船から、到着を知らせる通信がはいった。
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