モブNo.217∶『くそっ! なんで見つかったんだ! 急げ!』
今回僕が引き受けた退治する海賊は、やはり小規模な海賊だ。
海賊退治をする場合、なにが一番大変かというと、その目当ての海賊を探し出すことだったりする。
基本としては、その海賊が出現した周辺から捜索をはじめる。
それで見つからなかったら捜索範囲を広げていく。
そして下手をすると、その捜索だけで何か月もかかることがある。
それをある程度見込んで捜索を開始したわけだけど、今のところ手がかりはなし。
まあ、初日だから当たり前ではある。
小規模とはいえ、1週間以内には手掛かりの一つも見つかるだろう。
そんなことを考えていた時もありました。
捜索を開始してからそろそろ2週間が経過しようとしている。
大抵は何らかの痕跡が見つかるものなのだけど、今回僕がさがしているターゲットである『リーガイン海賊団』に関しての手掛かりが、一切見つからないのだ。
実は捜索だけなら大海賊の方が簡単だ。
何しろ規模が大きければそれだけ船や人の動きがあり見つけやすくなる。
小規模だと痕跡を消すのが容易なので、探すのが非常に面倒くさい。
そして戦闘の場合は真逆になるわけだ。
理解してはいるが、こうもハズレが続くと精神がすりへってくる。
そんな徒労感に襲われながらも、カプセル状のベッドから這い出し、朝食の準備を始める。
そんな僕の船の窓の外には、美しい青色の惑星がある。
その青い惑星、ヴォーラビオスは本当に青く美しいため、発見した当初はサファイアかラピスラズリの塊の惑星だと思われていた。
しかしこの惑星は、恒星から距離があるため、大気温は−100°C以上にはならない。
その大気はほぼオゾンで、惑星の成分はほぼ岩石であり、その表面の四割を液化したオゾンが占めている。
極にあたるところでは気温が−200°C近くになり、濃い紫のオゾンの結晶が見られる。
生身でこの惑星に降り立つと、まず目や呼吸器が刺激され、咳やめまいが引き起こされる。
さらに時間が経つと、呼吸困難や麻痺、および昏睡状態になり、放置しておけば死亡する。
その前に寒さにやられるだろうけどね。
とはいえオゾンは色々な利用手段があるため、定期的な採取が行われているらしい。
僕は今、その惑星ヴォーラビオスの衛星であるオダードに船を停めている。
この衛星オダードには、定期採取を行う際の船舶の駐艇場があり、採取をしていない時は、長距離航行時の休憩所として無料開放されている。
無料なだけあって、停める場所があるだけで、建物もなければ、食料の補給も燃料補給も廃物処理もできない。
しかし休むことは出来るので、貨物輸送の人達には重宝されているらしい。
僕は朝食にバナナピーナッツバターサンドを食べながら、捜索範囲を検討していたところ、ほとんどの捜索範囲を捜索したことが判明した。
とりあえず今日は、『リーガイン海賊団』が頻繁に出現する現場にもう一度行ってみることにしよう。
ちなみにこの2週間。
僕は体型を元に戻すため、このバナナピーナッツバターサンドなるものを1日1回、朝食に食べることにしていた。
バナナとピーナッツバターだけでも十分なカロリーだけど、ダンさんに教えてもらったオリジナルは、バナナはフライパンで焼き、さらに焼いたベーコンを挟む。
そして挟んだものをバターとベーコンから出た脂で揚げ焼きするらしい。
さすがに聞くだけで胸焼けがしたので、そのままのバナナとピーナッツバターを生の食パンに挟んだだけにしてある。
ダンさんはオリジナルを食べたことがあるらしいけど、三分の一でギブアップしたらしい。
僕はバナナピーナッツバターサンドを平らげると、後片付けをし、シャワーを浴びてから着替えをしてから、船を発進させた。
惑星ヴォーラビオスの衛星オダードを出発してから、3時間ほど船を走らせてたどり着いたのは、マードン宙域というところだ。
居住可能惑星である惑星ラドーから一番近いゲートに向かうためのバイパスポイントであるため、襲撃にはいいポイントだ。
なおこの宙域は、非常に視界が良好なので有名な場所だったりもする。
その理由は、ハムイミロという巨大で超高温の恒星があるからだ。
その恒星光は370億km離れたところに設置されたソーラーエネルギーシステムに、平均的な居住惑星全体のエネルギー1年分をわずか1日で生産する程だったりする。
とはいえ、今現在は施設の老朽化のため停止している。
解体して新しく建設する計画もあったらしいけど、予算の確保に目処がつかなかったところに、貴族の反乱やらネキレルマとの戦争が原因で停止したままだという。
なかなか巨大な施設のため、船舶を隠しておくのに最適な場所だけに、最初にきた時にもちろん調べたが、その時は怪しいものはなかった。
警察ドラマなんかで、『困った時には現場に戻ってみる』なんてセリフがあるけど、それは有用なんだと改めて理解した。
前回にはいなかった、中型の貨物船がソーラーエネルギーシステムの隙間に停泊していたのだ。
もちろん彼等が海賊かどうかは、いまのままでは不明だ。
この施設の調査に来た人達かも知れないし、休憩しているだけかもしれない。
しかし海賊だった場合、逃がすわけにはいかない。
なのでちょっとカマをかけてみようと思う。
「あーー。ソーラーエネルギーシステムに張り付いている貨物船に告ぐ。そちらの船が海賊船だという通報があった。大人しく投降しなさい」
なので、こんな感じの通信を投げかけてみた。
よく考えれば恐喝か詐称行為に近いが、見つからないストレスが溜まってたんだと思う。
ともかく、関係ないなら否定するなり怒ってくるなりするだろうし、海賊が同じ様にして誤魔化そうとするなら、質問で問い詰めれば判断が出来るだろう。
そう思って身構えていたんだけど……。
『くそっ! なんで見つかったんだ! 急げ!』
という声が聞こえたあと、通信が切れ、貨物船がゆっくりと動き始めた。
どうやら、『リーガイン海賊団』かどうかはともかく、真っ当な人達でないでことには間違いないらしい。
僕は直ぐ様貨物船に接近し、後部の噴射口を破壊しようとした。
その時、貨物船から機銃掃射が飛んできた。
これで真っ当な船でないことは明らかになった。
なら遠慮はいらないので、機銃掃射をくぐり抜け、噴射口を全て破壊してやった。
そのままエンジンを動かし続ければ、間違いなく爆発するので彼等はエンジンを切ったようだ。
するといつの間にか、戦闘艇が2機、こちらに向かってきていた。
その後方には、小型の貨物艇も見える。
どうやら、仕事に出ていた部隊が帰って来たらしい。
もしこの2機が、以前の赤青のコンビみたいな動きをするならかなりヤバいかも知れない。
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