「プロローグ6」
「お父様! 僕の体は僕の物です! お父様の命令でも嫌です!」
しかし父親は以外にも冷静で、ゆっくりとした動作で近くにあった本物の小さな杖を取り出すと喜希へ向ける。
「ほう……それでどうしようと言うのだ? 喜希よ」
「お父様は僕に召喚魔法を覚えて来いと言いました。だから、今それをして見せます」
「馬鹿な……お前は魔法使いが最初に教わる火魔法『ファイア』しかできぬのだぞ?
算数で言えば『1+1』、国語で言えば『あいうえお』。そんなレベルのお前に出来るはずが無い」
喜希は冷や汗を流しながらもニコッと笑ってみせると目を瞑り、魔法名を唱える準備を始める。
父親がそれを必死に止めようとするが、もう間に合わない。
喜希の両手に光が溢れ、徐々に蜘蛛の巣の様に広がって行き、父親がそれに邪魔され、喜希に近づく事すら出来なくなる。
そして喜希が両手を天に掲げると光が真上に伸び、豪華な装飾品で彩られた豪邸の天井を突き破り空高く舞い上がって行く。
そんな中、喜希が静かに魔法名を詠唱する。
「召喚魔法『サモン・ファミリアスピリッツ』」
喜希が光と同様、空中へ高速で舞い上がる。
父親がぽっかりと空いた天井からその様子を眺めると、ここへ何か光り輝く隕石みたいなものが落ちて来ている事が目に取れる。
「くそっ! あの馬鹿娘が! まさか娘の放った魔法に向けて、遺伝魔法を使うとはな。
WorldHeritage『エンジェルフォール』」
父親の手に持っていた小さな杖から隕石目掛けて滝の様な大量の水が空高く、噴出される。 そしてその水が隕石に触れる瞬間、霧となり隕石の周りに漂う。さらに霧は次々に量を増やし、隕石を優しく覆う大きな水玉になる。
しかし隕石が突然、急降下し水玉を突き破り、庭の方へ落ちて来る。
「くそっ! 致し方無い!」
父親は庭へと走りだし、隕石の落下場所を予想し、待ち構える。
「来い! 私が受け止めてやろう!
こう見えても卒業者、魔力には自信がある。落ちこぼれの娘1人くらい、たわいもいらん!」
魔力とは力だけならず体の丈夫さ、などにも影響する。
父親はよほど自分の魔力に自信があるのだろう、大の字になり、娘の帰りを大きな体で受け止めようと逃げも隠れもしないで、娘の居るべき場所を教える為、ただひたすらそこで立つ。