第8話 エピローグ
津田山大学病院の研究特別病棟に集合した面々。
新城会長の「異世界転生サービス」からの離脱処置が行われている。もうすぐ目覚めるようだ。
中原が鹿島田に訊いた。
「会長はどの程度動けるのでしょうか」
「異世界転生サービスにログインする前には、右手がかろうじて動く程度だった。声が出せず、NHIで神経信号を読み取って生成AIで疑似的に声を出していたんだ」
どうやら準備ができたようだった。
スピーカーから会長の声がする。
「鹿島田君。お願いした書類は準備できているかね」
「はいこちらに。ここにサインしていただければ手続きは完了します。証拠として録画もしていますから大丈夫です」
右手の近くに書類をセットし、ペンを右手に固定した。
新城はモニターで手元を確認しながら、ゆっくりとサインし始めた。
「これで私が生きている間は、会社の経営は君たち抜きには行えなくなるだろう。あとは頼むよ」
書類の作成が終わると鹿島田副社長は出て行った。
中原が新城に声をかけた。
「リアル世界では久しぶりですね。新城さん」
「こちらのお嬢さんが会長の娘さんの佳織さんです」
「中原君、いろいろありがとう」
「いえ、いろいろ勝手に行動してすいません」
新城の視線が佳織を向いて話しかけた。
「佳織……さん。小さい頃の君には何もしてあげられなくてごめん」
佳織は答えた。
「小さい頃のことはあまり覚えてないの。ママから話は聞いていたからなんとなく知っていたわ。仕事に夢中で、あまり帰ってこなかったことも……」
「別に恨んでいたりしません。ママが再婚した今のパパはとてもやさしく、大切にされていると感じています」
「私はたぶん家族を持てない人間なんだとずっと思っていた。でも仲間は持てる。鹿島田君や中原君、矢向君は私のすばらしい仲間だ」
「私の人生は残り少ない。佳織も今更娘になれと言わない。仲間になってくれないか」
「ええいいわ、魔王クリストファーさん」
佳織は新城の右手を取った。軽く握り返してきたのが判った。
第9話 プロローグ?
梅雨入りをしたじめじめした気候の中で、仕事が手につかないある日、佳織は突然部長に呼び出され、会議室に向かった。
ドアを開けるとそこには佳織の上司である広報担当部長の中原と、開発部の矢向、そして副社長の鹿島田がすでにいた。
佳織が中原の隣に着席すると鹿島田副社長がおもむろに口を開いた。
「君たちには、異世界に転生し、また魔王を倒してほしい」
「今度はスライムが魔王を名乗り、世界を乱しているんだ」
第一部 完
これで物語の始まりの終わりです。
続編を執筆中です。
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