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第6章  魔王領へ

 一夜明けて朝からログインした後、ジーラと佳織たちは村はずれの丘へ向かった。

「このあたりが転移エリアのようです。皆さん準備はいいですか。」

ジーラには石碑は見えていないが感じてはいるようだった。

何か呪文のような言葉をつぶやく。

画面が切り替わり一行はエハンスの町はずれへ転移した。


「町にある宿屋に行ったら私の名前を出してみて。きっとよくしてくれるわ。」

「ジーラさんは一体・・・」

「私は魔王様の補佐をしているの。何か困ったことがあったら、相談してね。」


宿についた佳織たちはジーラの名前を出し、宿の魔王の間に陣取った。


「では情報収集といきましょうか」。

「その前にタッカーさんは目立たぬように着替えていきましょう。」

まず、服屋に向かった。

「これは司祭様、光の女神さまに祝福を!今日はどんなご入用でしょうか?」

相変わらずである。

中原は一般的な町民と同じ服を手に入れた。


それから3人はそれぞれ町中を歩きまわり情報を集めて回った。中原は「決して観光などではない。」と言っていたがウキウキしながら回っていた。


宿に戻り、情報を持ち寄った。

佳織が言った。

「魔族はみな人類を敵視していると思っていたのですが、違いますよね。」

「ええ、先代魔王が倒されたとき、ほっとしたものも多いようです。」

中原が服を着替えながら言った。司祭の恰好に戻るようだ。

「さっきの服屋の店主もそうだったよ。」

矢向が続ける。

「会長は族長というより、将軍といった感じですね。族長は先代魔王の娘がその地位を継いでいるようです。」

「会長は第2次討伐隊を撃退したことで信頼を集めているようです。」

中原が少し真剣な顔をして言った。

「うーん。これは何とか争いをとめられないかな。我々は一時的にでも会長を倒せばそれでOKだし、無駄な犠牲が出る戦争は必要ないな。」

矢向が答える。

「ここはゲームの世界ですよ。ゲームをクリアするためならすべての状況を利用しましょう。」

中原はちょっとにやけた表情で言った。

「でもな、ユーリ君。君はつらく苦しい冒険したいのかい。私は楽しい冒険がしたいんだ。」

エルフの司祭の恰好で行ってもセリフは決まらない。


佳織が提案した。

「ジーラさんに相談しませんか。話をまとめるとジーラさんが先代魔王の娘で、現在の族長かもしれません。」

矢向も賛成した。ジーラに会えるのが嬉しそうだった。


ジーラに会いに魔王城に向かった。門番に、中原が司祭の恰好で「ジーラに会いたい」というとすぐに取り次いでくれ、執事らしい恰好のエルフがやってきた。

「これは司祭様。光の女神様の祝福を! ジーラ様はこちらでお待ちです。ついてきてください。」

佳織が執事に聞いた。

「ちなみに魔王様はいらっしゃいますか」

「いえ、魔王様は今、でかけていらっしゃいます。人類種どもがなにやらよからぬことを起こしそうなのでその対策に出かけておるのです。」

「なにご安心ください。魔王様とジーラ様がいる限りわれらは安泰です。」


佳織たちは大きな広間を通り過ぎ、隣の部屋に案内された。

部屋の正面に大魔王のレリーフが飾ってあった。

応接室のようだった。ジーラがソファーに腰掛けて待っていた。


「これは司祭様。光の女神様に祝福を! どういった御用かしら。」

矢向のほうを向いて言った。

「私に会いたかったのかしら、ボウヤ」

矢向は顔を真っ赤にしている。カメラを使ったモーションセンサーにはこんな機能もあるのだ。


佳織が話を切り出す。

「ジーラさんは族長ですよね。」

「ええそうよ。私は先代魔王の娘で今は族長を継いでいるわ。」

「やはりそうでしたか。実は私たちはこの戦いを止めたいのです。」

「それはわかるわ。あなたたちは平和を愛するクレール教の方々ですもの。でも攻めてきているのは向こうよ。私たちは守るために戦っているの。」

「向こうの狙いは魔王クリストファーだけです。クリストファーが倒されれば戦いは終わります。占領したり滅ぼしたりする気はありません。」

「あなたにどうしてそれがわかるの。」


佳織はレリーフの前に移動し、ログアウトした。佳織の姿がすっと消えた。そしてすぐにカスタマイズを戻してログインした。胸も元の大きさに戻っている。

「これが私の本当の姿です。魔法で姿を変えていました。私たちはクリストファーさんと同じ世界の人間で、クリストファーさんを止めるために来ました。」


ジーラはしばらく見つめていたが、やっと口を開いた。

「わかったわ。あなたの言葉に嘘はなさそうね。」


「あなたに渡したいものがあるの。ついてきて。」


佳織たちはジーラに連れられて魔王城の中の地下室の一つに案内された。無造作に武具やアイテム、魔石などがおかれている。

「これは魔剣よ。おそらく勇者クリストファーを倒せる武器の一つよ。」

「気づいたようね。クリストファーは魔王を名乗っているけどまだ「勇者」だわ。「勇者」を倒すには勇者の防具を破る魔剣が必要。この剣は私の父の形見よ。」


「あなたはクリストファーを憎んでいるの?」

「わからないわ。そうわからないのよ。確かに父はクリストファーによって倒されたといえるわ。でも父は魔王として何かにとりつかれたように人類種を滅ぼそうとしていたの。クリストファーは父の暴挙を止めてくれた・・・・。」

ジーラは少し考えて言った。

「それに私は父にかわいがられた思い出はないわ。」


矢向が訊いた。

「会ちょ、いやクリストファーさんは、なんで魔王を名乗り人類種と敵対するようになったんでしょうか。」

「それは私のせいかもしれません。彼は言ったの。私は「可能性」だと。私の魂の成長が世界に大きな希望を見いだせると。そしてそのために私の成長を見守ると。」

ジーラはつづけた。

「世界樹の元に行ったのは、戦いの前に私の魂を永遠にするためだそうよ。クリストファーはそのための秘術を教えてくれたわ。」


「私は彼に恩を返したいの。彼があなたに倒されることが彼の幸せにつながると思うのよ。」

だからこれを受け取って。」

佳織は魔剣を受け取った。

「わかったわ。でも安心して。私が魔王を倒してもすぐに、おそらく数日で復活すると思うわ。」

「あと、これを設置してもよいですか。」

佳織は勇者のレリーフをジーラに渡した。ジーラはそれがなんであるか悟ると、魔石の近くに置いた。


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