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滅ぼすもの

黒い壁の中から数千を越える黒い剣が

立ち向かうとする俺達目掛けて飛び出してきた。


 不可視の聖域!


壁の全てを覆い尽くす大きさで

不可視の聖域を展開した。


黒い剣は透明な壁の向こうで動きを止めていた。

思い切って壁を根こそぎ包むように

下の水石の大地ごと球形の聖域に変形してみた。


水石の大地に妖しく映る俺の影。

来るなと思ったと同時に、

影から黒い剣が突き出てきた。


うまく俺と黒い邪神だけを隔離できたみたいだ。

透明の壁の外の方では、

頭にツノのある鬼人族、緑色のマントを翻して

宙に浮かんでるエルフ族、ヒゲモジャの

ギルドマスターのようなドワーフ族、

ダガーさんみたいな獣人族の戦士達が

俺の方を心配そうにみている。


多分その心配は当たりますね。

これから俺は大怪我をすることになるから。

きっとそれが突破口の一つだと思ったから。


俺ごと閉じ込めたこの不可視の聖域の中には

あいつ、黒い邪神を取り込めているはずだ。

あいつはおそらくギガスライムのようなもので、

この影が映っている空間全てが体なんだと思う。

俺の影すら。

厄介なのは、影なのに斬ったら俺も同じように

怪我をしたことだ。

ここが重要なところだ。

同じようであって、同じじゃない。

多分、いや、間違いなくこの傷は

あいつに斬られたんだと思う。

少しだけ遅れて斬られた感じがしたから、

カウンターとか反射のような攻撃だと思う。


あいつを倒すには覚悟がいる。

俺も怪我をする覚悟が。

痛いけど即死しなければ、

亜空間収納に入っている、あの完全回復薬で

なんとかなると思っている。


さぁ、この世界を滅ぼそうとするあいつを

逆に滅ぼしてやりますか。


俺は呼吸を整え、足の裏に神経を集中して

周りにあるもの全てを切り裂く舞を

ゆっくりと舞い始めた。


予想通り、俺の体に刺し傷、切り傷が増えていく。

切れたところが熱と痛みを持ち始める。

俺は徐々に舞を早めていく、どんどん加速していく。

加速的に傷が増えて不可視の聖域内が

血煙に染まっていく。

それでも俺は止まらない。


血煙が塊になって舞い始めているところがあった。

精霊の幻想の世界で見たあの方の舞が思い起こされた。

俺は迷わずあの舞をトレースし始めた。

血煙を軽く踏んで踏み抜かぬうちに、他の血煙を踏む。

それを絶え間なく繰り返しながら、舞い続けた。





 「こ、これは!!この舞は!!

  あの時、魔王と戦っておられた時の

  英雄様のものとそっくりだ!!


  ああ、なんということだ。

  私は、私はまた見ていることしか

  出来ないのか。。。」


 「そう嘆くことはないのじゃ、

  エルフの長よ。


  見守るだけでも力に変わるのじゃ。

  勝ってくれと願う気持ちが戦う力になるのじゃ。

  願いとは、叶えるために紡ぐもの。

  思いとは、伝えるために秘めるものじゃ。


  願えば良いのじゃ。

  されば、きっと叶う力となろう。」


左右に二頭の神狼を従えた小天狗様が

深い皺をさらに深く刻んで悲しむ、

エルフの戦士にそう声をかけると、

周りにいたものも一斉に驚きの声を上げた。


 「「「「「も、森の精霊様っ!!

      神狼様っ!」」」」」


 「我らのことを気にする時ではないのじゃ。

  あの英雄の血を継ぎしもの、カケルの

  戦いを見守ってやって欲しいのじゃ。


  我は手助けは出来んのじゃ。我はな。」


そう言って、悪い顔でニヤリとした小天狗様は

チラリと後ろに目線を流した。

その方向を見た戦士達は息を呑んで

しばらく呆然としていた。

  



ヤバいな、あの方に教えて貰った通り、

先に相手の核を打ち砕くしかないのに、

捉え切れない。

血を失いすぎたのか、意識が朦朧としてきた。

ヤバい。


 『その周りにあるもの全てを正しく、

  認識するのが肝要。


  見定めるということだ。

  見切れないということは、

  それはそこにあってそこにないものだからだ。


  そうだな、その履き物が認識を

  妨げておるやも知れぬ。


  その足を大地につけて大地の息吹すら

  認識することも肝要であろう。』


あの方の教えが頭の中に響いてきた。

俺は急いで靴を脱いで靴下も脱いで

一度大きく息を継いで集中してみた。


見えた!俺の背後の影の中にいる!

 

 「そこだっ!!」


剛腕の一撃と貫通のスキルを重ねて

ここ一番の威力で薙刀を突き込んだ。


 グアーッ!!


絶叫が響いた。

さらに押し込もうとした俺に

黒い影が覆い尽くそうに迫ってきた。


薙刀を払うようにして水石の床から抜いて、

不可視の聖域を解放した。

小天狗様の声でそう言われた気がしたからだ。


 『おのれ、人間っ!!

  下賤の分際でっ!!

  この世界ごと喰らい尽くしてくれるっ!!』


そう黒い靄が声らしきものを放つと、

大きく膨れ上がって空を覆い始めた。


ヤバい!

そう思った時だった。


 シャッ!シャッ!!


七色に輝く綺麗な水晶のようなものが

俺の背後から伸び上がっていって、

黒い靄を貫いていた。

貫くと同時にパーンという甲高い音を立てて

キラキラ輝く光を撒き散らしていた。


 『おのれ!晶龍如きがっ!!

  覚えていろ!

  貴様達はこの俺様が必ず滅ぼしてやる!!』


負け惜しみのような捨て台詞を残して、

黒い靄が掻き消えていった。


 「ふん、逃げおったか。

  覚悟のないやつじゃな。


  晶龍王よ、助力に感謝なのじゃ。」


 『勿体なきお言葉。

  このようなものの力で良ければ

  いつでもお貸しいたしまする。』


振り返ると、こっちに駆け寄ってくる神狼達と

小天狗様の背後に無数の水晶が突き出た山があった。

よく見ると、二本足らしきもので立っている。

腕らしきものが6本視認出来た。


 「サラスヴァティが残していった龍王なのじゃ。

  カケルの鍛錬に付き合ってくれるそうじゃ。


  ほれ、挑んで来い。」


小天狗様の気軽なお言葉に反論する余裕なく、

俺は乾いた笑いを浮かべて、

ご冗談をと言った後、水石に溶け込むように

意識を手放してしまった。

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