挑戦 ギガスライム
目の前でスライムの水の槍で貫かれ、
切り裂かれたシスターに、俺は即座に
浄化回復 のスキルを使った。
白い靄のようなものに一瞬囲まれて
シスターの体は元に戻っていた。
すぐに目を開けていたけど、ショックで
呆然としているようだ。
シスターが切り裂かれた瞬間、
ロアンヌさんは青い瞳を
怒りで真っ赤に染めて
激昂して大声を張り上げながら
巨大なスライムに向かっていった。
「くそっ!
ギガスライムは厄介だ。
魔法が効かねぇ。
俺のハンマーアックスじゃ、
あいつの体のコアを潰せねぇ。
ロアンヌ、無理だ!戻れ!!
聞いちゃいねぇ。。
ちょっと行ってくる。」
ダガーさんがすごい速さで連続突きを
繰り返しているロアンヌさんと上空から
矢をかけて援護しているカイルさんの
元へ駆けて行った。
「あー、私の補助魔法が届かないわ。
ロアンヌ姉さんがあんなに怒ってる姿って
初めて見たわ。
これ以上接近すると、
またあの槍がくるわ。
みなさん、
もっと後ろの方へ下がりましょう。
ザラさん、そっちの子供達をお願いします。
カケル君はシスターを頼めるかしら。」
俺達はシスターと10名の子供達を連れて
ギガスライムから距離を取るため、
後方へ移動した。
ネイルさんによると、ギガスライムは
魔法攻撃が効かない、災害級の魔物だそうだ。
ギルドトップの戦闘力を誇るジークさんでも
一人では討伐できないほどだそうだ。
それって、やばいじゃんと思った瞬間、
ロアンヌさんがこっちに飛ばされてきた。
目の前までゴロゴロと転がってきた。
双剣は無惨に折られ、腕もあらぬ方向へ
曲がっている。
あっと思った矢先に、今度は
ダガーさんが転がってきて、
カイルさんも撃ち落とされて
血反吐を吐いていた。
一瞬でボロボロになった3人に
浄化回復 をかけて、
ザラさんに頼んで抑えておいて
もらうことにした。
俺にはスキルがあるから上手くやれば
何とかできるかもしれない。
でも戦闘センスは全くない。
その勇気も足りていない。
そう思って唇をかみしめていたら、
俺に向かって水の槍が伸びてきた。
思わず掴んでしまった。
何となくスキルが発動した。
記憶遡行
・・・最悪な光景が見えた。
泣き叫びながら逃げ惑う子供達
その子達を突き刺して倒して、切り裂いて
動かなくなったら、体の中に取り込んで
溶かして食べたようだ。
楽しそうな感情が伝わってきた。
こいつ、笑いながら子供達を食ったのか。
・・・もう十分だ。
いいタイミングでスキルが発動したな。
女神様が背中を押してくれたのかもしれない。
でも、今のでもう俺は十分戦えるようになった。
「俺は 絶対 お前を 許さないっ!!」
腹の底から大声を出しながら、駆け出した。
俺の手には白拍子の薙刀があった。
何となく体に馴染んだ気がしていたから。
真空斬り のスキルを連発して
水の槍を切り落としていく。
ある程度近寄った時、俺はあの舞の動きを
思い出しながらトレースし始めていた。
切断 と 貫通 のスキルを発動させたまま。
巨大なギガスライムを前にしても俺は
腹の底から沸き起こる怒りの感情のおかげか
全く怖いとは思わなかった。
むしろ絶対倒してやるという思いが
全てを超えていく原動力に
なっているのかもしれない。
「すごい!
カケル君の動きがどんどん早くなっていく!
ギガスライムの攻撃を全部躱すというより、
斬り捨ててるわ!
すごい!お願い!勝って!!」
「くそっ、俺にもっと力があれば・・・。
見てるだけしか出来ないのかよ。。」
興奮するロアンヌさんと拳を握りしめるダガーの肩を
ポンと叩く男がいた。
「あれは、あの動きは凄まじいな。
あの分じゃ俺でも足手まといになるな。
待たせたな。
俺達でも側面から援護くらいはできるだろう。
カイル、空を飛ばずに距離を空けて矢をかけろ。
ダガー、防御のみに集中して前に出てくれ。
ロアンヌと俺は倒すのではなく、
陽動の攻撃をかけてあいつの注意力を削るぞ。
左手側の方が良さそうだ。
回り込んで叩くぞ。
いいか、これよりギガスライムに挑戦する。
各自敵の攻撃回避に意識を切らすな。
行くぞ!!」
カイルさんが追加の魔石灯の矢を打ち上げた。
辺りを小さな煌めく光が照らし出していく中、
4人の挑戦者達が一斉に駆け出していく。
その後ろからネイルさんが補助魔法をかけていた。
意外と俊足なダガーが前面に立って
腕が4本に見えるくらいの速さで円を描いて
水の槍を防いでいる。
その合間を縫って、水の槍が伸びてきている根元を
狙ってカイルが矢を打ち込む。
水の槍の矛先が変化した瞬間にロアンヌの双剣が
槍を叩き落とす。
ジークがその槍の中程を斬り落とす。
見事な連携攻撃が始まった。
カケルの動きが右に左に流れるように
残像が残るような速さで動いている。
ギガスライムの体には無数の亀裂が生じていた。
カケルの薙刀で斬られた傷だ。
まるで痛みを思い知れとばかりに
つけたような傷がどんどん増えていく。
ギガスライムがついに後退を始めた。
(ふざけるなよ。
お前、泣き叫んで逃げるしかない子供達を
何もできない子供達を笑いながら
殺して食ったんだろ!
お前みたいな魔物は許せない!
絶対に逃がさん!
絶対に倒す!!)
その後退に怒りの炎を一段と強く燃え上がらせて
カケルは薙刀を振るい始めた。
頭の中に十字を描くように
薙刀を振るう姿が浮かんできた。
四つに切り裂く動きだ。
(ピロン
邪神斬りのスキルを獲得しました。)
邪神斬り のスキルをすぐに発動させる。
ギガスライムの後退する動きが止まった。
体が大きく四つに裂けていき、
中にあった薄黒い魔石のようなものも
四つに切り裂かれていた。
ギガスライムの体がゆっくりと崩れていく。
その姿を見つめながら、カケルの心には
勝利の喜びはなく、虚しさと悲しみだけがあった。




