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不運のダガー 孤軍奮闘する

 「おっ!

  何だ真っ暗じゃねぇか。

  カイル、魔石と・・・

  あれっ?

  おーーーい!

  ・・・ちぃっ!

  また俺だけトラップかよ。

  どんだけ運がねえんだよ。」


ダンジョンをくぐったと思った瞬間、

ダガーはダンジョントラップを踏んで

仲間たちからはぐれてしまっていた。


彼はいつも運が悪い。

今回もロクな装備を持っていない状況で

単独行動する羽目になっていた。


 「あーあ、いつものネイル以外に

  ザラとカケルに荷物持ってもらえるってんで

  ロクに装備持ってなかった俺が悪いか。。


  んっ?今のは悲鳴だな。」


頭の上にぴょこんと立っているネコ・・トラ耳で

微かな悲鳴を聞き取ると、その方向目掛けて

即座に猛ダッシュでかけて行った。



うっすらと光る魔石灯のゆらめきの中で

犬型の魔物に何人かが襲われているようだ。

棒を振り回している女性の前に飛び込むと同時に、

背中に背負ったハンマーアックスを

唸り音を立てながら魔物に叩き込んだ。


 「ムンッ!」


3頭の魔物が弾け飛び、肉片と血飛沫が舞う。


 「大丈夫か!

  俺はガルダホルンのギルドから来た

  ダガーだ。

  きっと、仲間がここに来てくれる。

  それまで俺の後ろでまとまってくれ。」


 「あ、あ、ありがたき事。

  私はどうなっても構いません、

  どうかこの子達だけでもお守りください。

  どうか、どうかお願いです。」


よく見ると割と高齢の女性が縋るように

頼み込んでくる。


 「自分の命も大切に出来ない大人の姿は

  子供に見せるもんじゃねぇと思うぜ。

  絶対あんたも生き残るんだ。

  できるだけ身を屈めて小さくなって

  じっとしていてくれ。

  その方が体力の消耗が抑えられる。


  くそっ、まだ来やがるか!」


円形の包囲網を取った犬型の魔物が

何度も波状攻撃を仕掛けてくる。


ダガーは盾を女性と中でも大きめの子供と二人で

一緒に持つように言って、ハンマーアックスを

片手に持ち、もう片方の手には先ほど倒した

魔物の尻尾を持って振り回しながら、魔物を

撃退していた。




湖のように見えていたのは巨大なスライムだ。

その水で出来た槍のような触手が突き刺さりそうだ。


 (不可視の聖域)


俺たちの周りを取り囲むように不可視の聖域が

展開されたはずだ。

ガインっていう変な音と共に水の槍のような触手は

弾かれたみたいだ。

何だか痛そうに震えながら縮んでいった。

突き指した感じかな。あれは痛いな、うんうん。


少し離れた草原のようなところに、

不可視の聖域ごとのめり込んで着地できた。


どうするかなと思っていたら、

ジークさんの言葉で、

ダガーさんがいないことに気付いた。


 「おっ!ダガーの奴、あっちにいるみたいだ。

  あいつ本当にダンジョントラップ好きだな。

  普通踏む奴いないんだけどな。


  今のもカケルのスキルか?

  すまんな、助かったぜ。


  で、悪いんだが、トラップ踏んで

  一人で遊んでる奴のとこに行こうか?」


 「人の気配が集まっているわ!

  急ぎましょう!ダガーはほっといても良いけど、

  他の人には危険すぎるわ。

  お願いカケル君、あのジャンンプのスキルで

  一緒に飛んで!」


ネイルさんもザラさんも

異論なしという顔で頷いてくれた。


 (ハイパージャンプ)


もう一度飛び上がった時、

やっとカイルさんが飛んできた。

空中でジークさんに腕を掴まれて、

6人で飛んでいく形になった。





くそっ!

オーク型の魔物まで出てきやがった!

やばいぜ、この盾をまともに持てないようじゃ、

このまま防戦するのは無理だな。

どうする・・・んっ!!この気配は!

ロアンヌとジークか!

早く来てくれ!!


両足に牙を立てられ流血しているダガーは

それでも両足に力を込めて動き回っていた。




上空に差し掛かった時、カイルさんが

ジークさんの手から離れた。

空中で体勢を整えると、矢を放った。


丸い陣形で取り囲まれている人達の

その外側で蠢く魔物達の頭を、綺麗に真上から

撃ち抜いて矢は止まった。




その様子を目の当たりにして、

ほっと一息ついたダガーに大きな棍棒が

襲いかかってきた。


流血が止まらない両足にさらに力を込めて

血が吹き出したが、構わずにハンマーアックスで

応酬し始めた。


 「ムンッ!!」


守るもののため、痛みを超える思いを胸に

ダガーは援軍が来ることを信じて、

孤軍奮闘を続けるのだった。


何だと、まだあんなにオーク型がいるのか!

くそっ!俺のことを舐めるなよ!

お前ら如きに負けてやるものか!


ハンマーアックスを振りかざした時、

横合いから飛び出した犬型の魔物が

足首に食いついた。


 (しまった!やばい、避け切れねぇ!)


そう覚悟した時、空気を切り裂く音がした。

ダガーに迫っていたオーク型の棍棒が

オークの体ごと綺麗に上下に分かれて、

崩れ落ちていった。


2m近い長さの剣を片手に持ったジークさんが

ダガーさんの前に立っていた。


 「カケル、

  悪いがダガーに回復のスキルを

  使ってやってくれ。


  ダガー、

  遅くなった。

  っていうか、

  お前大概トラップ踏みすぎだぜ。


  ロアンヌ、

  シスター達のそばについてやれ。


  ネイル、

  悪いが身体強化かけてくれ、

  ちょっと行ってくる。


  ザラ、

  子供らになんか食わせてやってくれ。



  おっ!

  ありがとうよ、ネイル。

  じゃ、ちょっと行ってくる。」


そういうと、ジークさんは

散歩に行くかのように軽く手を振って

オーク型の魔物の群れに向かっていった。


俺がシスターと子供たちもまとめて

浄化回復のスキルを使った瞬間だった。


子供達に先に食事をさせていたシスターの体を

水の槍が貫いた。

シスターは口から血反吐を大きく吐いて、

上下二つの体に分かれて、その場に頽れてしまった。



 「・・う、おおおおおのれーーー!!」


激昂したロアンヌさんが真っ赤な目を燃え上がらせて

巨大なスライム目掛けて飛びかかっていった。

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