物語の終わり
愚かな王様の元を去った辺境伯は、別の国の皇子に仕えることになりました。
今度の主はとても誠実な人でした。
国を守る為に戦う英雄を称え、それに相応しい地位を与えたのです。
辺境伯は将軍の座につきました。
将軍は皇帝のために、誠心誠意仕え、時には友として助け合うようになりました。
一方女の子はますます美しい女性に成長し、将軍との間に可愛い子供もたくさん授かることになります。
皆とても綺麗な顔をした子供達ばかりです。
娘はみんな不思議とリリアの花の色と同じ髪の毛の色をしていたそうです。
その中でも特に美しい娘が、皇子と恋に落ち、やがて結婚したそうです。
女の子は将軍と共に、沢山の子供、孫達に囲まれ末永く幸せにくらしたそうです。
めでたし。
めでたし。
遠い、遠い私のご先祖様の話。
代々、子供達に伝えている物語だ。
穏やかな昼の午後。
私の話を聞いた子供達は、すやすやとお昼寝を始める。
ふふふ、いつも物語が終わる前に寝てしまうのだから。
私は子供の頭を撫でてから、礼拝堂に向かう。
リリア色の髪の毛は、私がヴァルフォン家の血を受け継いでいる証だ。
幼い頃両親を喪った私は、自ら修道院に入った。
叔父さんや叔母さんはとても心配して、自分の家に来ればいいと言ってくれたけれども。
だけど修道院には私と同じく両親を喪った小さな子供達がたくさんいた。
彼らは私のことを姉のように慕ってくれている。
私は出来る限りのことをあの子達にしてあげたい。
今まで母親代わりだったシスターも病床の身。
私があの子たちを守らなければいけない。
さぁ、お祈りの時間だ。
今日も平和な日であることに感謝を。
私はディアナ神に祈りを捧げましょう。
礼拝堂に入ると、フードを深くかぶった人物がディアナ神の前で深々と祈りを捧げていた。
誰かしら?
私がそっと近づくと、その気配に驚いたのかフードをかぶった人物がびくんと身体を震わせた。
「大丈夫ですよ。ここは誰でも祈りを捧げることが出来る場所です。ゆっくり祈って下さい」
「……い、いいのか?」
恐る恐る尋ねる少年の声。
私が頷くと、泣いているのだろうか?
フードの下、ぽろぽろと涙の粒が床にこぼれ落ちていた。
「僕……醜いんです。顔が凄く気持ち悪いんですけど、本当に祈っても大丈夫ですか?」
「先ほども言ったでしょう?ここは誰でも祈ることが出来る場所です」
「こんな顔、でもですか?」
少年はフードを取る。
私はその顔を認め、ハッと息をのむ。
ああ、なんてことなの。
半分、伝説となっている遠い先祖の話。
だけどその話が本当だったことが、今、証明された。
まさにあのカエルの顔をした少年が目の前に立っているのだ。
「僕は生まれた時からこんな顔で……どこに行っても追い出されて、醜い、醜いって言われて。こんな僕でも女神様にお祈りしてもいいのか分からなかったけど、祈らずにはいられなくて」
「そうだったの……名前は?」
「ルイス=ニールデンと言います」
「……」
そういえば、ニールデンの第二王子、フランクスが死んだという描写はどこにもなかった。
どこかで生きていて、子孫を残していたのかもしれない。
あの物語に出てきたフランクスはどうしようもない人間だったが、目の前にいる少年は私と同い年だろうか。
とても素直で優しそうな少年に思えた。
私はルイスの隣に立ち跪く。
驚いたのはカエル顔の少年だ。
「し、シスター。どうしたのですか?」
「あなたの為に祈りたいと思います。ディアナ神に願いが届くまで、私はあなたの為に祈り続けます」
「な……なんで、僕の為に?」
「私がそうしたいからです。さぁ、ルイス。あなたも共に祈りましょう」
「……」
ルイスは大粒の涙をこぼしながら私と共に祈りはじめた。
いつ願いが届くか分からない。
もしかしたら、ずっと届かないかもしれない。
だけど、私は祈り続けよう。
彼の呪いが解けるまで。
END
参考文献
カエルのおうさま グリム童話
蛙と姉妹 栃木県烏山に伝わる昔話
灰かぶり姫 グリム童話
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この話は自分が子供の頃よく読んでいた話を今風にしたらどうなるかな?
という気持ちで書いてみました。
継母とその娘が意地悪するまたは、姉妹格差。
これは永遠のテーマですね(笑)今のなろうでもこういった話が多く、私も大好きだったりします。
きっと昔からこういう話が好きな人は多かったんでしょうね。
もっぱらこの手の話は読む派だったのですが、今回初めて書いてみました。
ブックマーク、評価、ありがとうございました。
楽しんで頂けたら本当になによりです。
今までご意見感想はWEB拍手で頂いていたのですが、諸事情につき使えなくなったので、感想欄をあけておきます。何かありましたら是非!




