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竜騎士と俺  作者: 5u6i
21/24

第二十一話 竜達の長い一日

前回のあらすじ


 コーヒータイムという名のリラックスできない時間を過ごし、

 なんとか無事空軍基地に戻ってきた一行。

 城に降りた俺たちは、アメリーオたちをおろしてファンファーレで送られて城内に入っていったあと、大きな教会を思わせる建物に案内された。

 机や椅子などは端に片付けられているが、元々は講堂として使われていたようだ。ガランとしてちょうど大きな格納庫ようだ。ステンドグラスが見事だなどと思って眺めていたら、デッキブラシや大きな布を持った連中に囲まれていた。くすぐったい思いをしながら、身体中についた飛竜の返り血などを、鱗の隅々まで拭いて磨き上げられていた。

 俺たちの世話をしてくれる連中の中には、神官みたいな格好をしたやつもいて、細かい擦り傷を見つけると、手を当ててしばらく何かを唱えているみたいだ。そうするとちょっとだけその場所が温かくなって、傷がきれいに治るようだ。こんな魔法に今更驚きはしないが、ちょっとヒリヒリする程度の擦り傷とはいえ、結構な数やられたので、魔法で治してくれるならありがたい。

 レオポルドは巨大な艤装を背負ってるからここでメンテナンスできないのは仕方ないが、俺やハオランは激しい戦闘飛行の後なので、一度ハーネスを外してもらえないかと思っていたんだが、ワイヤーの擦れたところの手当だけで奥に引っ込んで行ってしまった。


 程なく奥からアメリーオの作るスープの様ないい匂いがしてきた。朝から何も食べていなくて、ちょうど腹が減っていたから、香りを嗅いだだけで腹が鳴ってしまった。

 すると、見たこともないような巨大な鍋が大きな台車で運び込まれてきた。ギネスブックに載った山形の芋煮鍋くらいありそうな大きさだ。

 鍋の中にはダチョウ程の大きな鳥が丸ごと何羽も入っていて、他にも人参やらジャガイモやらがゴロゴロと入っていた。人参の甘み、セロリの香り、トマトの酸味がバランスよく整えられた味だ。アメリーオが作るスープより味は濃い目だが、しっかりと食べごたえのあるスープだった。

 付け合せにはスイカ程の大きさのライ麦パンが何個も積み上げられていた。これもなかなか香ばしく、スープと交互に口に含むと、麦の香ばしさとスープの酸味が見事にマッチしていた。

 お腹いっぱいになったら何だか疲れが出てきて、眠くなってしまった。流石に王宮内で昼寝もどうかと思ってレオポルドとハオランを見ると、さっさと腹ばいに伏せて寝息をたてていた。竜に礼儀作法も何もないかと思い直し、俺も遠慮なく目をつぶった。


 日が暮れてしばらくすると、バタバタと騒がしくなってきた。レオポルドはゆっくりと外に向かって移動している。これだけ天井が高くても、艤装をぶつけないように慎重に移動していた。ハオランは蛇のようにくねりながらすぐ後を追い、俺は尻尾をぶつけないように気を配りながら、歩いて外に出る。

 広場に出ると、外はすっかり暗くなっていた。城壁のあちこちに焚かれた篝火が石灰岩の白い城をチラチラと照らす。俺たちが広場に整列してジョセーフォたちを待つことになった。

 しかし、よく考えてみると、いくら広場が広いとはいえ、城壁が相当高いので、俺やハオランはともかく、レオポルドは外から着陸することはできても飛び立つことはできない。どうするつもりなんだろうと考えていたら、ファンファーレと共に金モールのついた礼服っぽい白い軍服に身を包んだ三人が戻ってきた。

 アメリーオが肩にあて布を掛けた上にワイヤーの束を担いで、こっちにやってきた。作戦を説明しようとしているようだ。

「Ekflugi post Haoran. Uzu cxi tiun draton por tiri Leopold.」

 ワイヤーの端をハーネスのフックに引っ掛けて、もう片方の端を持ってレオポルドを指さしている。たぶんこれでレオポルドを引き上げるつもりなんだろう。

 ただ、この広場の広さだと俺も走って離陸出来るか自信はない。そこはどうするつもりなんだろうか。

「Cxu vi scias kiel ekflugi? Kuri de la alia flanko de la placo, tiam, Salto, Pasxo, kaj Granda salto! Frapi la plankon per via vosto por akiri rapidecon kaj altecon.」

 アメリーオが指でトコトコと走る仕草を見せる。なるほど、三段跳びの要領か。後ろでパタパタ振っているのは俺の尻尾か。ジャンプの時に叩きつけて反動を得るんだな。

 これは狭い森の中から離陸するときにも使えそうなテクニックだ。練習していないからぶっつけ本番だがやってみるしかない。


 ハオランが先に離陸する。とぐろを巻いたコブラが鎌首をもたげるかのように、そのまま宙に浮き上がっていく。どういう仕組みわからないが何度見ても見慣れない。

 その間に俺は広場の端まで移動する。斜めに走ればこれだけでも離陸できるだろうが、城壁がやや邪魔だ。ジャンプのタイミングはアメリーオの指示に従おう。

「Iru!」

「よっしゃ!」

 アメリーオの掛け声と共に走り出す。

「Salto!」「ホップ!」

「Pasxo!」「ステップ!」

「Granda Salto!」「ジャンプだ!」

 俺はタイミングを合わせて、尻尾を石畳に思いっきり叩きつけてジャンプする。結構なスピードと高さが稼げた。城壁の高さを越えた所で翼を開いて、全力で羽ばたくと簡単に離陸できた。

 上空ではハオランが八の字を描いて待機している。俺も真似て八の字を描いた。その間にアメリーオがワイヤーを広場に向けて落としている。レオポルドにワイヤーが取り付けられると、グッと引っ張られる感じがする。俺は全力で羽ばたいて、引っ張る。流石に重い。五分位は羽ばたいただろうか。レオポルドは広場の上空に浮き上がっている。一応、俺たちが引っ張っているワイヤーで姿勢を保ちながら、自力でも羽ばたいているようだ。ワイヤーのテンションを見ながら、タイミングを合わせて小さく羽ばたいている。

「Ne haltu!」

 よそ見していたらアメリーオに蹴っ飛ばされた。やがてレオポルドが城壁の高さを越えた所で、ワイヤーのテンションがフッとかるくなった。ワイヤーを外してレオポルドも自力で旋回しながら高度を上げ始めたようだ。

 城の上空に集まって、並んで旋回し、城を離れた。城の外の更にその外壁の外の飛行場みたいなところに飛んで来て、さっきの講堂の半分くらいの格納庫みたいな建物に連れてこられたところだ。


 多分ここは空軍基地か何かだろう。天井にはいくつもホイスト・クレーンがついている。俺やハオランのハーネスはともかく、レオポルドの艤装とかはこういうところでしか整備できないだろう。

 俺が興味津々に見回していると、アメリーオが作業着に着替えて、建物上部のキャットウォークから降りてきた。俺の背中のハーネスをホイスト・クレーンに引っ掛けると、手早く外して、身体のあちこちをチェックして回ってる。多少擦り傷は有るが、城できれいにした時に手当してもらってるから大丈夫だ。

「Vi faris grandan laboron. Dankon!」

「ああ、疲れたけどな」

「Jen via nova dormocxambro. Mi esperas ke vi sxatas gxin.」

 アメリーオが部屋の奥の敷き藁が積み上げられた一角を指差す。

「ここが俺の寝床か。まあ、俺はどこでも寝られるけど、その量の敷き藁だと、俺が乗ったらぺちゃんこだと思うぞ?」

 俺は敷き藁を集めて座ってみる。案の定ぺちゃんこで、石畳の冷たさがそのまま尻に伝わってくる。

「Eble pli bone havi pli da pajlo. Mi alportos gxin.」

 アメリーオが小走りに走って外に行く。

「Kiel vi pensus Morigo? Cxu vi gxin sxatas?」

 キャットウォークからジョセーフォが話しかけてくる。

「ああ、ちょっと寝床が冷たいんだよ。もう少し藁があると嬉しいんだが」

 アメリーオが大きな藁のロールを転がしながら戻ってきた。

「なんだ、わかったのか。ありがとうな」

 大きくうなずきながら、敷き藁を広げると、いい感じのふわふわした寝床になった。なかなか快適だ。

「Vi povas esti laca. Bonan dormon.」

 アメリーオが松明の明かりを消して、コツコツと階段を昇っていく。もう休めということだろう。


 だが、城でしっかり昼寝して元気になった俺は、ふわふわの寝床をもってしても、なかなか寝付けなかった。

用語解説


・ワンポイント・エスペラント語

 今回はモリーゴが初めて短距離離陸にトライして、レオポルドの垂直離陸を手伝いましたね。

 その部分のエスペラント語を解説しましょう。

 「Ekflugi post Haoran. Uzu cxi tiun draton por tiri Leopold.」

 →「ハオランの後に離陸。このワイヤーでレオポルドを引き上げるんだ」

  Ekflugiは離陸です。Ek-は動詞の前につけて動作の開始を表します。Flugiは「飛ぶ」ですね。飛び始める=離陸です。

  Dratonはワイヤーです。Por tiriで「引き上げる為に」ですね。


 「Cxu vi scias kiel ekflugi? Kuri de la alia flanko de la placo, tiam, Salto, Pasxo, kaj Granda salto! Frapi la plankon per via vosto por akiri rapidecon kaj altecon.」

 →「離陸の仕方はわかるか?こうして広場の端から走って、ホップ・ステップ・ジャンプだ。尻尾を地面に叩きつけてスピードと高さを得るんだ」

  Sciasは知っている。Scienceとなどと同じラテン語語源の単語です。

  Kuriは走る。Alia flancoで向こう側。Placoは広場です。

  ホップ・ステップ・ジャンプはSalto, Pasxo, kaj Granda saltoとしました。

  Saltoがジャンプなんですが、ホップ=小さなジャンプに対応する単語がなかったので、厳密に言えば「ジャンプ、ステップ、そして大ジャンプ」になっています。リズムは大事です。

  Frapiが打ち付ける。Plankoが床。Vostoは尻尾です。Akiriが得る。Rapidecoが速度、Altecoが高度ですね。


 「Vi faris grandan laboron. Dankon!」

 →「よくやったな。ありがとう!」

  You've done great job. Thanks!の訳ですね。割とそのまま。


 「Jen via nova dormocxambro. Mi esperas ke vi sxatas gxin.」

 →「ここが新しい寝室だ。気に入ってくれるといいんだが」

  Dormo-が眠る、Cxambroが部屋で寝室ですね。

  Vi sxatas gxinは前にも出てきましたが、気にいるですね。グーグル翻訳だとYou will like it.の訳としてSxatosと勝手に未来形にされますが、現在の話なのでSxatasで合ってます。ここでも未来のWillと意志のWillがごっちゃになってます。

  Mi esperas ke~ はI hope thatの訳です。Esperas希望するは「Esperanto希望する者」のもとになっている単語ですね。


 「Eble pli bone havi pli da pajlo. Mi alportos gxin.」

 →「もう少し藁があったほうがいいか。持ってくるよ」

  Pajioが藁です。Ebleが多分、Pli boneでおそらく、Haviが手に入れるです。

  Al/port/os Al-方向、Portoが運ぶ、-osで未来形になります。


 「Kiel vi pensus Morigo? Cxu vi gxin sxatas?」

 →「どうだいモリーゴ。気に入ったかい?」

  Pensusは考える(未来形)ですね。Cxu vi gxin sxatas?で気にいったか?ですね。


 「Vi povas esti laca. Bonan dormon.」

 →「疲れただろう。ゆっくり休め」

  Povas estiで「おそらく/可能性として~である」

  Lacaは疲れ。黒塗りの車は関係ない。


・ギネスブックに載った山形の芋煮鍋

 「3代目鍋太郎」(直径6.5メートル)。里芋3トン、牛肉1.2トン、しょうゆ700リットルで、山形風に仕上げた芋煮約3万食を提供し、8時間で最も多く提供されたスープのギネス世界記録に認定された。


・晩餐会のお品書き

 本文ではモリーゴの視点からでしたが、ここで出されたスープについて解説しましょう。

 【スープ Supo】

 ・大嘴鶏(ココチェヴァーロ)(Koko-Cxevalo)のスープ(Supo)

 ダチョウ程の大きな鳥とは大嘴鶏(ココチェヴァーロ)のことで、鶏とは全く違う肉質で臭みとサシのない牛肉のようだ。

 野菜は人参、ジャガイモ、セロリ、トマトなどが入っているミネストローネの様なスープ。

 大嘴鶏(ココチェヴァーロ)も旨味が強いのですが、野菜も旨味の出るジャガイモやトマト、香りの出るセロリ、甘みの出る人参と、味の宝石箱状態です。

 ジャガイモとトマトは南米原産なので、普通の中世ファンタジーには出てこないし、うっかり出すとファンタジー警察が嬉々として乗り込んで来ます。

 しかし、ここは異界転生譚ワールド。現代に存在するものはこの世界にも存在しうるのです。


大嘴鶏(ココチェヴァーロ)(Koko-Cxevalo)

 『極端な話、巨大な鶏。

 草食よりの雑食で、大きなくちばしは時に肉食獣相手にも勇猛に振るわれる。主に蹴りの方が強烈だが。

 肉を食用とするのは勿論、騎獣として広く使われているほか、日に一度卵を産み、また子のために乳も出す。農村でよく飼われているほか、遊牧民にとってなくてはならない家畜である。

 一応騎乗用と食畜用とで品種が異なるのだが、初見の異邦人にはいまいちわかりづらい』

 (異界転生譚 シールド・アンド・マジック 長串望 著 第一章 シールド・アンド・マジック 第五話 お祭り騒ぎ の 用語解説より)


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