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ぼっちで最強な俺はハーレムをつくろうと決意したが…。  作者: 柴燈烈夏
ぼっちですが何か?
8/20

7話:小さな少女VS俺(後編)

屋上


「おはよ、一宮。」


「ああ、おはよう。」


朝────


つっても、もう昼だけど────


挨拶をしてくれたのは俺と初めて友達になってくれ、さらに俺の唯一の親友────


友達もいないんだけど────


風元遼河だ。


風元遼河は、微笑みながら俺に言った。


「今日、遅かったな…学校来るの。いつも1番だろ?」


「ああ。実は。」


すると、平野舞花が俺の前に立ち頭を下げ、スカートをちょこんと摘み膝を少し降り挨拶する。


「初めまして、一宮元春の婚約者の平野舞花と申します。以後お見知りおきを。」


何か、俺は平野舞花の挨拶の丁寧さに慣れてしまったようだ。


最初は、かったるいと思っていたが、今じゃ礼儀なら仕方ないと納得してしまっている。


だが、風元遼河は初めて会ったばかりでその敬語に慣れていないのか戸惑っていた。


「ああ、宜しくな。」


平野舞花は、何か腑に落ちないような顔をする。


「あの、すみません。少し質問をしても宜しいでしょうか?」


「ああ、別にいいけど。」


「何故、女の貴方が男の格好をなさっているのですか?」


平野舞花以外の皆の目が点になり、風元遼河の方を皆見る。


風元遼河は、ぽかんとしている。


みんなより先に我に返った俺は平野舞花に言う。


「おいっ、変な事言うなよ。風元は、俺の親友で男だ!な?そうだろっ!風元。」


「…ああ。俺は、男だ。」


平野舞花は、悪魔のような笑みでいう。


「なら、その上の制服を全部脱ぎなさい。男なら、水着とやらで普通に上半身を晒すと聞いております。」


何か、変な表現を使う平野舞花に俺は、怒鳴る。


「いい加減にしろっ!コイツは、俺の親友だ!そんな俺の親友を傷つけるような真似、俺は許さねぇっ!」


風元遼河は、辛そうな顔で言った。


「すまない。一宮…。俺は、本当は男じゃない。女なんだ。」


そう言って、上のシャツを脱ぎ、晒しを巻いているのを見せる風元遼河。


俺は、慌てて目を隠し、混乱する脳をどうにか沈めようと奮闘する


だけど、無理だった。


「風元遼河、早くシャツ着て、説明してくれ。」


すると、風元遼河は恥ずかしそうに頬を染め、シャツを着る。


着終わると俺に────


「着たぞ。」


と言ったので俺は、目を隠していた手を離し、風元遼河をじっと見る。


そんな俺の視線に気づいたのか、風元遼河は恥ずかしそうに下を向く。


「説明しろよ、風元遼河。」


俺は、風元遼河が下を向いたのは今から聞く話は相当深刻なものなんだと身構えた。


「分かった。実は、俺…私の本名は風元遼河ではない。風元雪音(かざもとゆきね)と言う。風元遼河は、私の双子の兄の名だ。」


「…で、なんでお前がその兄ちゃんの名前で学校に来てんだよ。」


「それは、兄が消えたからだ。この学校に入学が決まり、父と母、兄はとても喜んだ。だけど…入学式の前日兄は何者かに連れ去られた。」


俺は、疑問に思った事を聞く。


「なんで、連れ去られたって分かるんだ?」


「兄の部屋が荒らされていた。」


「それだけじゃ、連れ去られたかどうかはわかんないだろ。もっと確実な根拠があるはずだ、頭のいいお前なら、な?」


「家には、兄の入学が決まってから、脅迫状が届くようになり、兄を守るために凄く頑丈で上級魔術師か、上級剣術師しか、破られないようになっている結界がある。そんなものを兄は壊せない。だから、兄は上級魔術師か、上級剣術師にさらわれたと思っている。」


「ふむ、なるほどな。それだけの根拠があれば十分だ。俺が、お前の兄ちゃん探してやるよ。」


風元雪音は、涙を流しながら言った。


「ありがとう。」




❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁


翌日、俺は風元雪音と学校を休み、風元家を訪ねる。


そう言うと、平野舞花が自分も行きたいと言い出し、勝手についてきた。


「ここが、私の家だ。」


周りは、塀に囲まれていて門に触れただけでバチッと俺の体に電流が流れる。


実を言うと、俺は剣術の方が得意なのだ。


だから、その結界を剣で一振りし、壊す。風元雪音は感動していた。


「凄いっ!」


「早く、案内しろっ。」


「うっ、うん。」


平野舞花は、何か面白くなさそうにそっぽを向き、俺に言った。


「私、ここで待ってます。」


「えっ?危ないよ!結界もないし。」


「自分の身くらい自分で守れます!」


初めて俺は、平野舞花が声を上げ、苛立たしさを表に出したのを見た。


「本人がそう言ってるんだし、行くぞ。風元雪音。」


「…分かった。」


そう言って、平野舞花と別れたのが悪かった。


俺と風元雪音が風元遼河の部屋を一通り見終わり、平野舞花のいるはずの場所に戻った時、平野舞花は消えていた。


「マジかよ。」



・・・・平野舞花・・・・


私は、小さな頃から孤独だ。親や祖父母から勝手に期待されていた。


そんな私は、魔術も剣術も上手く使いこなせなかった。


ただ私には、異能の力が宿っていた。


そんな私をいつの日からか家族は気味悪がるようになり、話しかけなくなった。


ところがある日────


家族に大広間に来るように言われ、


行くと『一宮元春』という男と婚約するように言われた。


相手は、16歳。


私と、8歳差だ。


だから、どんな幼女趣味の変態だよと思ったのだが、一宮元春は知らずに親に勝手に婚約するよう言われたようだった。


私は、彼に勝手に親近感を持っていた。この人も私と同じで、勝手に親に、家族に何もかも決められてしまう悲しい人なんだって。


だけど、違った。


彼は自分の信念を持って、行動していた。


私は、何の信念ももっていない。


血族に縛られたままだ。もう、死んで、消えてしまいたい。


「…いっ、おいっ!起きろっ!」


ふと、平野舞花の体を強く揺さぶる男の手。


平野舞花は目を覚ます。


すると、目の前に風元雪音という女と似ている男がいた。


平野舞花はその男に問う。


「あなた、もしかして風元遼河さんですか?」


その言葉に相手の男は目を見開く。


「何で、俺の名前を知っている?」


「そりゃあ、私の婚約者があなたの妹さんと仲良くしていらっしゃるので。」


「そう…なのか?」


「ええ。そりゃもう、親友と言ってるぐらい仲良くしてますよ。」


風元遼河は、嬉しそうに飛び跳ねる。


「そうか、そうか!あいつに親友が!良かった!」


「あのっ、貴方自分の身が危険なこと分かってますか?」


「分かってるよ!でも、妹に親友が出来たんだぞ。家族のみとしては、喜ばないはずがないだろ。」


風元遼河は、平野舞花をイライラさせる男だった。


そのため、平野舞花はそのイライラを風元遼河に思いっきりぶつける。


「そんなの、お前だけだよっ!私の家族は、少なくともお前みたいな家族じゃない!ひどい奴らだよっ!」


そう言い、平野舞花は泣きだす。


すると、監視役みたいな男が二人やってきて、平野舞花を連れていく。


平野舞花や、風元遼河の手足には枷があり、思うように動けず逃げられなかったのだが、今は歩けるように足枷だけ外してある。


今なら逃げ出せそうだと思った平野舞花は二人の男を突き飛ばし、走る。


(早く、こんな汚いとこから抜け出す!)


すると、男達が応援を呼んだのか、ゾロゾロと男達が平野舞花の前に現れる。


平野舞花の足は止まり、あっさり捕まってしまう。


そして、連れてこられたのは魔法陣が100個以上書かれた暗く不気味な部屋だった。


そこに突き飛ばされ、鍵を閉められる。


平野舞花の体は震える。


すると、声だけが聞こえた。


「今から、君には生け贄になってもらうよ。伝説の闇の支配者を召喚するための。」


平野舞花は後ずさる。


すると、何かにぶつかる。


見ると、龍の首がそこにあった。


平野舞花は悲鳴を上げる。


「きゃああああああああああああっ!」


そして、泣き出す。


結局平野舞花は、死にたいと思っても生に執着していたのだ。


平野舞花の悲鳴に共鳴したのか、魔法陣が青く光り出し、空中で一つになる。


その10秒後、暗かった部屋を光が包んだのと同時に闇に包まれ、1匹の龍が現れる。


平野舞花は、一宮元春に言われた言葉を思い出す。


『助けて欲しい時は、助けてって言えよ。』


その言葉に縋るような思いで、平野舞花は叫んだ。


「助けてよっ!元春っ!」


その瞬間、鍵の閉まっていた部屋の扉に光の線が走り、破壊される。


そこには、人影が一つあった。


その人影が誰なのか分かった瞬間、平野舞花の目には涙が浮かぶ。


「悪いっ!遅れたッ!」


「バカッ、遅いよぉっ!」


「平野、帰るぞっ!」


「うん。」


そう言って、平野舞花は走り出す一宮元春の元に。


そして、一宮元春の元に着いた時、安心したのか腰が抜け、その場に経たりこむ。


一宮元春は、やれやれと思いながらもその闇の奥にいる化物の存在に気づいていた。


平野舞花を抱え、一宮元春は走る。


その後を追う龍。


「平野、すまん。」


外に出た一宮元春は、平野舞花を投げる。


「きゃああああああああああああっ!」


すると、その先には佐倉花菜がいて平野舞花を見事キャッチする。


「オット、ご主人…女の子を投げるってどういうことですか?!」


「すまん。今は、ちょっとそれどころじゃないんだ。」


そう言って、一宮元春達のあとを追ってきた龍を見る。


その目は、平野舞花が今までに見たこともないような真剣な眼差しだった。


その眼差しに平野舞花はドキッとする。


(かっこいい。)


「おいっ、佐倉。お前らは、逃げろっ!」


「えっ?でも!」


「いいから。」


平野舞花はまだ、風元遼河が中にいることを思い出し、一宮元春に叫ぶ。


「中にまだ、風元遼河って人がいるぞっ!」


いつも、一宮元春12人っきりの時しか使わない丁寧じゃない、雑な言葉を使う平野舞花。


それに佐倉花菜は、ギョッとする。


一宮元春は、にやっと余裕の笑みで言った。


「分かった!」


「頼んだぞ!元春っ!」


「ああ。任せろ!」


2人がその場から立ち去ったのを確認した一宮元春は、剣を出す。


そして、剣に電流を流し、剣術と、魔術の合技を龍に向かって放つ。


「これでも、食べとけ!伝説の闇の龍!」


龍は、瞬時にそれを避ける。


野生のカンのようなもので分かったのだろう。


今の一撃を食らったら永遠に消滅してしまっていたことを…。


龍は、力量の差が分かったのか一宮元春に頭を垂れるような格好をする。


そして、大人しくなる。


俺は、剣を龍の顔の前に突き出す。


すると、龍はその剣にそっと口を乗せる。


これは、この国では服従の意を現す。


こうして、一宮元春は龍をゲットするのだった。


────いや、俺にはそんなつもり無かったけどね?



そんな俺達を見ていた10個の影に一宮元春は気づいていたのだが、襲ってくる気配もないので敢えて無視していた。


その10個の影は、不気味にうすら笑っていた────。



そして、後日┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


平野舞花は、1度家に帰ることにしたらしく、朝にはもう俺の家にはいなかった。


風元雪音は、学園長のはからいで転入生として在学する事に、風元遼河はそのまま学園に在学中────。



まあ、俺的にはいい結果だと思うが、今回のこの事件(?)不思議なことが多すぎて、イマイチスッキリしない。


────もしかしたら、まだこの件は終わっていないのかもな…。


(何つって、俺に探偵みたいな推理力は、残念ながら無いのですよー。)

次回、「8話:テスト(仮)」は3月8日に更新するつもりです。これからもよろしくお願いします。

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