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15話:思い出

俺は、6歳の時、父さんと初めて旅行した。


それだけじゃない。


俺にとってその旅行は、俺が初めて外に出た日だ。


だが、俺は今の今までそのことを忘れていた。


そんな大事な日なのに、だ。


□□□□□


「お父様、お父様ぁっ!」


「ん?なんだい?」


その日、父さんはどこか体調が悪そうだった。


それでもあの時の俺は、早く友達を作りたくてはしゃいでいたんだ。


「僕、早く友達作りたいッ!」


「ごほっ、ごほっ…。すまない。父さんは、ちょっと風邪をひいたようだ。」


「ええー…。」


俺が、しょんぼりしていると、父さんは優しく笑い俺の頭を撫でながら言う。


「大丈夫だ。風鳥(かざとり)にいろんな場所を案内してもらいなさい。」


俺は、嬉しそうに頷く。


「うん!ありがとう!」


「さあ、支度をして来なさい。」


「うん!」


俺が、出ていった部屋には父さんしかいないはずなのだが、いつの間にか風鳥がいた。


「風鳥、もしもの時は頼んだぞ。」


「かしこまりました。坊っちゃまの力が暴走しそうになった時は、私は迷わずに坊っちゃまを殺します。」


「ああ、すまない。汚れ仕事をさせるようなことになってしまったら。」


「そんなことは、ありませんっ!貴方が、私を死の淵…いや、それ以上にひどい場所から救い出してくださったのですからっ!」


「…俺は、何もしていない。君が、俺に助けを求めただけだ。そして、俺はそれに答えただけ。まあ、とにかく頼んだぞ。」


「はい。」


風鳥は、事務的に答える。


部屋を出た後、風鳥の目からは涙がこぼれ落ちていた。


(私は、あの可愛い元春坊っちゃまを殺せない。彼は、私にとって希望なのだから。どうすれば、彼を助けられる?だが、まずは彼が暴走しないことを祈るしかない。)


風鳥の背中は、どこか寂しげで切なげだった。



□□□□□


「ねえ、風鳥…。」


「なんですか?元春坊っちゃま。」


「僕、たくさん友達作れるかな?」


不安げな俺を見て、風鳥は優しく笑う。


「大丈夫です。坊っちゃまは、たくさん友達が出来ますよ。」


「ホント?!」


「ええ。」


「そしたら、僕はずっと友だちと仲良く死ぬまで一緒に笑っていたい。出来るかな?しわしわのおじいちゃんになっても、笑って生きていられるかな?」


風鳥は、悲しげに笑う。


「出来ますよ。何たって、元春坊っちゃまなんですから。」


「えー、意味がわからないよぉー。」


「いつか、坊っちゃまが本当に笑える日が来ることを私は、死ぬまで待ち続けますよ。」


「いいよォー、そんな待たなくて。僕は、あっという間に友達作るから!風鳥が、元気な内に僕の友達を紹介したげる。」


「それはそれは、大変楽しみですね。」


「えへへー。」


(坊っちゃまが、楽しそうに笑うのを見るのが好きだった。)


「なあ、なんかあそこだけ、シャッターしまってるけど…どうしたんだろう?」


「確かに可笑しいですね。様子を見てきます。」


「ちょっ!待てよ!」


その時、光る鳥を見た。


『助けてください!人質がいます!誰か、強い方助けてください!それ以外の方は、警察を呼んでください。』


「坊っちゃま!助けをよんできてください。私が、乗り込むので。」


「ばあか、僕1人でみんな救える。それに子供相手だと、悪も気を緩めるだろ?」


「しかし!」


「…これは、命令だ。僕のすることに口出しするな。」


(そこには、あの可愛い元春坊っちゃまは、存在しておらず…絶対的王者が存在しているのでした。私は、彼に畏敬の念を抱いてしまいました。)



□□□□□


「風鳥、無事皆助かったぞ。」


俺は、ニコニコ笑う。


風鳥は、心底安心したように笑う。


その時、ある一人の少女が走ってくる。


「あっ、ありがとう!私の名前、花菜。私とお友達になって!」


俺は、凄く嬉しそうに笑い、頷き、花菜の差し出した手をとる。


そして、風鳥に言った。


「おいっ、風鳥…こいつが、僕の初めての友達だ!」


「本当に、あなたの宣言通り私が元気な内に、元春坊っちゃまの友達を紹介しましたね。恐れ入ります。」


「へへっ、僕は有言実行する男だからな!」


これは俺が、今までこのことを忘れることになったきっかけの前兆だったんだ。


「おいっ、あいつか?一宮元春っつう餓鬼は。」


「そ〜っすよ。」


怪しい影が、俺達を見ていた。

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