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転生造船技師は最強艦隊を作る  作者: 竹本田重郎


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第1話 最上型に着手する

いきなり任せられてしまった。




「牧野君には悪いんだが…その…今度の巡洋艦を頼めるか」




「軽巡を装った重巡ですね。かしこまりました」




「フランスで培ったことを注ぎ込んでほしい」




「どんな設計になっても怒らないでくださいね」




 フランスでの留学を終えて帰国早々に新型重巡洋艦の設計を任される。ロンドン軍縮条約による制限の中で最大の打撃力が求められた。ここで古い人間は155mm三連装砲を一時備える。ロンドン軍縮条約が失効して直ぐに20cm連装砲に換装できるなんて無駄を考えた。あいにく、私はそのような真似はしない。正々堂々と国際的な枠組みを遵守するが、巡洋艦に求められる打撃力や索敵力など、いずれ来る航空機時代に対応した。世紀の奇才として名を残し、大日本帝国海軍を造船から改革し、太平洋戦争を勝利に誘う。




 航空機主兵にしろ大艦巨砲にしろ母体の艦艇がダメでは戦いようがなかった。日本海軍の設計は目を見張るものがあれど負けてしまっている。ダメージコントロールや居住性といったカタログに出てこないことも考えた。ちょうど、フランス式の先進的な造船を学んだという免罪符が存在する。いくらか変な設計を組み上げても多少は見逃された。平賀譲の老体にはご退場願おう。彼の設計では無理だ。どれだけ画期的でも負けては元も子もない。




「最上型だが最初からぶっこんでいくか…」




 これは最上型の設計であることは言うまでもなかった。もちろん、まだ最上型という名前はついていない。新型巡洋艦と便宜的に呼称するが適当だ。条約の制限がある中で打撃力と機動力、索敵力など総合性能が求められる。重巡洋艦は艦隊と目となったり、単独で小艦隊を組んで行動したり、ありとあらゆる場面で活躍した。それ故に手堅く纏めたいところ、若き天才造船技師という称号を得るべく、真面目に滅茶苦茶にしよう。




「まずは主砲だが155mm三連装砲じゃだめだ。20cm砲に換装するなんて時間と資材の無駄にすぎない。防空巡洋艦としながら艦隊戦の殴り合いにも対応できる。そして、索敵のかなめとして水上偵察機も運用する。そう考えると…」




 もう鉛筆を動かす手が止まらなかった。まだカタログの段階であるから何とでも書ける。ただ単に馬鹿みたいに書けばよいこともなかった。現実性を残さなければならない。上司に披露する際に納得がいく説明も付随した。平賀設計という重装備が実現した以上は許容されやすい。今のうちに名前を広めることでライバルを蹴落とした。彼らには申し訳ないが必勝のためには蹴落としが当然である。予備役でヌクヌクと過ごしてもらった。




 一度鉛筆が乗ると時間を忘れてしまう。明日には出せそうであるが一度温めた。どの仕事でも日程に余裕がある場合は一度温めるべき。書いている時は気づけなかった。ちょっとした粗に気づくことができる。誤字脱字はいただけなかった。完璧にスマートにこなしてこそ天才である。この私は牧野茂少佐だ。若さという武器を以て古臭い設計を刈り取る。革新的な設計こそ必勝の策と信じていた。自惚れが著しいだろうが中身は「この時代にはない知識」を持っている。こういうものを特典やギフトなど呼んだ。




「できあがった。あとはブラッシュアップをば…」




 お茶の磁器を傍らに置いて修正を進める。天才の狂気が遺憾なく発揮された。誰も止めることができない。食べることも忘れていたが、さすがに腹がなってしまい、握り飯をかじって書き進めた。そうしている内にお日様が昇ってくる。1日が24時間ではとても足りなかった。




=三日後=




 まずは直上の上司に見せる。少佐という立場だが三十代の若手に括られた。自身に託されたと雖も上の人に見てもらう。さらに上の人に見せる前に裁可を得た。ハンコは押されないが口頭でも了承をいただく。




「なんじゃ…これ」




「そのままですが」




「主砲は127mm四連装砲を採用して配置は艦前部に集中する。何のつもりだ」




「後部を見ていただければ、お判りいただけるかと」




「平坦だな。射出機が3基ってのは多すぎる。爆雷の投射機と軌道も多すぎる。これが巡洋艦かね?」




「航空巡洋艦です。時代はいずれ航空機となります。その対応でございます」




 初期案は新開発の127mm連装高角砲を拡大した127mm四連装砲を主砲に3基を前部に集中配置した。両舷は8cm(76.2mm)高角砲を幾つか設けて高角機銃も設置できるスペースもある。しかし、問題は艦後部がまっさらの平坦であることだ。主砲はおろか副砲もない。そこには水上機を射出できるカタパルトが異例の3基もあった。さらに、従来の露天ではなく水上機専用の格納庫が置かれている。水上機の運用能力に特化させることが明白だが、オマケと言わんばかり、爆雷投射機と爆雷投下軌道も多めに設置されていた。




 これには上司も面喰った表情を浮かべている。なんて設計だと言いたいが目の前の造船士官は大真面目そうだ。門前払いの却下が有力な選択肢であるが無碍に扱うことは酷であると考えて一旦は言い分を聞くことにする。まずは主砲からだった。軽巡を装いながら最大の打撃力を求めると155mmが限界値である。これで来ると思っていたが新型の127mm高角砲できた。




「新型の高角砲は優秀と聞き及んでいます。対艦と対空の双方に活用でき、巡洋艦の殴り合いから敵機の迎撃まで、こんな万能な艦砲を捨ておくわけにはいきません。しかし、連装では駆逐艦と変わりません。また、艦後部に火砲を設けないことも踏まえて四連装砲を提案します」




「三連装砲が現実的なところだぞ。四連装砲は不可能だ」




「いいえ、可能です。なぜならば、これは連装砲の連装砲です」




「はぁ?」




「こちらをご覧くださいませ」




「むん? あぁ、うん、なんだ?」




「連装砲と連装砲を並列に並べました。これならば無理はございません。仮に片方が射撃不能に陥れどもう片方が射撃できます。フランスではすでに研究されていました。それをまねた形です」




「よく覚えていたな…」




 上司は理解できないと言いたげである。お手製の資料を見せると唸ってくれた。四連装砲というが実際は連装砲と連装砲を並列にしている。フランス式を採用した。これの利点は構造が規模の割に簡便に収まるため故障に強い。仮に片方が撃てなくても片方が射撃できた。四連装砲は連装砲を2基と比べてスペースを省略でき重量も軽減される。特に前部集中配置式と相性がよく根拠にフランスの新型戦艦を入れておいた。ダンケルク級は建造すら始まっていない。いかにもソレらしい情報と載せておいた。フランスは腐っても海軍強国の一つである。




「普通の配置じゃいかんか。巡洋艦は水上機を載せるものだ。別に特化させる必要はあるまい」




「索敵能力の大幅な向上を見込み、かつ潜水艦の対策になりました。先の対潜ではドイツ海軍のUボートが猛威を振るったことは…」




「つまり、今度の戦争は航空機と潜水艦の時代が訪れると言いたいわけだな」




「ご理解いただきありがとうございます」




「なるほど、一理ある」




 その思想は多連装砲による砲火力の維持と水上機による索敵能力の強化、潜水艦の対策の三本柱だった。主砲の前部集中配置はメインでない。水上機をどれだけ効率的に運用できるかを考えた際に浮上してきた。潜水艦を封じ込めるに上空から監視してもらう。艦隊に随伴して索敵はもちろん潜水艦を封殺した。単独の航行時は間接的に護衛できる。したがって、牧野氏は何をしてもよい万能巡洋艦と設計を希望した。




「じっくりと聞かせてもらおうか」




続く

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