3章 王都襲撃 07
「……やっと終わったね」
「……そのようだな」
次々にやってくる兵士を無力化し続けること十数分。
やっとこさ次の兵士が現れなくなった。
いやぁ強敵だった。
どれだけ倒してもどんどんどんどんやってくるから終わりが見えなかった。
ドリノヴォドノの橋下から出られなくなったのを思い出すぜ。
「しかしエルシーよ。其方も中々やるではないか。見たこともない魔法ばかりで興味をそそられたわ」
「へへん、そうでしょ。僕の始原魔法はこっちじゃ珍しい物みたいだからね」
うわ、ドヤ顔エルシーちゃんかわいい。
まあドヤるのも頷けるか。
メリアちゃんとそん色ないレベルで兵士をぶちのめしてるんだ。
相当な戦闘能力だぜこれは。
更には「始原魔法」……おそらくエルシーのユニークスキルであるそれは、あのメリアちゃんにああも言わせていた。
俺は魔法についてはこれっぽっちも分からないけど、メリアと言うキャラが魔法や錬金術にどれだけ精通しているかは理解しているつもりだ。
だからこそ、彼女があれほどまでに興味を持つ始原魔法ってのは、それだけとんでもねえ代物だって ことになるわけよ。
これだけの強さを持っているとなると、きっとエルシーは俺と同じで例外的にBランクになっていただけなんだろうな。
「で、この後はどうしようか。今ので兵士はあらかたやっつけただろうけど、このまま王様殺しに行っちゃう?」
ひぇっ、笑顔ですげえ物騒な事を言うじゃんこの子。
「いや、王を討つのは全ての情報を手に入れてからの方がよいだろう。裏にいる者を逃がしてはまた同じことが起こるだけだ」
「確かに」
「それに、オレの目的は他にもある」
えっ、そうなの?
王様ぶち殺して国家転覆しにきたんじゃなかったっけ。
「逸脱者の子孫とやらには興味があるのでな。王に余計なことをされる前に、一戦交えておきたいのだ」
ああ、そう言うことか。
戦闘狂だもんねメリアちゃん。
「おっけー! それじゃあ早速、逸脱者の子孫を探しに行こうか」
「その必要はない。既に目星は付いている」
「おぉ、いつの間に。でもどうやって?」
「簡単なことよ。先程、辺り一帯の魔力を探ったのだがな。王城の一角に強い魔力が集まっているのが確認できた。リリアが王国でも最強格の術師であることをふまえれば、この魔力の持ち主が逸脱者の子孫である可能性は高かろう」
「それじゃあ早速、寝首を搔きにいこうか」
ひぇっ、表現が物騒過ぎる。
「言ったであろう、一戦交えたいと。くれぐれも不意打ちで殺したりはせんようにな」
エルシーがときたま見せる物騒な部分もメリアちゃんにとっては日常茶飯事なんだろう。
もはや当然のように受け流している。
まあ、メリアちゃん自身かなり物騒だからね。
ある意味波長が合ったりするんだろうか。
……ということで、新たに向かって来るかもしれない兵士に警戒しつつも、俺たちは魔力が集まっている場所へと向かったのだった。
「ふむ、ここだな」
そこは王城内の他のエリアとは明らかに違う雰囲気で満たされていた。
隔離されているとでも言えばいいのか。
この辺り全体がやたら分厚い壁と檻で囲まれている。
おいおい、まるで獰猛な獣でも閉じ込めているかのような扱いじゃないか。
……いや、もはや考えるまでもなく当然の扱いか。
リリアの言っていた通りなら逸脱者の子孫は優秀な駒であると同時に国が崩壊しかねない諸刃の剣。
暴走したり反旗を翻したり、そう言ったことが起これば間違いなく王城どころか王都が終わるんだ。
そう考えれば、むしろこれでも足りないくらいだろうよ。
「……来ましたね」
奥の方から少女の声が聞こえてきた。
誰……?
なんて言うまでもなく、分かり切っている。
「ほう、オレたちの存在に気付いていたか。其方がルミナスであろう? 治療系でありながらオレたちの前に姿を現すとは、大した度胸よ」
治療系であり、拡大スキル持ちのルミナス。
恐らくこの奥にいるのは彼女だ。
「ふふ、確かにそうかもしれませんね。貴方の言う『治療系』の能力持ちでは戦闘を行うことは難しいのでしょう。ですが……本当に、そうでしょうか?」
――ヒュンッ、キラキラシャァァン
うわ、びっくりした。
すぐ真横を光の十字架が通り過ぎて行った。
なるほど。治療系と言えど高い魔力を持っているのなら、それ相応の攻撃も出来るってわけだな?
それこそRPGなんかだと僧侶や神官は光魔法の使い手だ。
ゾンビキラーとかと合わせて死者絶対殺すマンと化す。
「ふむ、攻撃魔法も習得しているということか」
「はい。私は戦う力など欲しくはなかったのですが……皆さんが戦っている中、後ろでただ見ているわけにもいかないのです。なのでこうして、神聖魔法をこの身に宿すことにいたしました」
突如、辺りが光り輝いた。
ものすごく眩しい。まるで夜とは思えない明るさだ。
こんな時間にこの光量、日本でやったら通報もんだぞ。
「目眩ましのつもりか? だが生憎と、オレにその類は通用せん」
「いえいえ、これはあくまで副次的な効果ですよ。本命は……」
目が慣れてきて細部が見えるようになってきた。
かと思えば、さっき飛んできた光の十字架と同じものが奥から大量に飛んでくるのが見えた。
閃光に紛れさせて攻撃してくるとは、これまた随分と殺意の高いことで……。
それに狭い通路でこれだけの量となると、避けるのもそう簡単じゃない。
廊下の長さからしても本人は相当遠くにいるはずだし、遠距離から一方的に攻撃し放題ってわけか。
流石は拡大スキルだ。
本来は治療魔法の効果範囲を広げるものなんだろうが、こうやって攻撃魔法の射程まで伸ばせるなら相当強力なスキルと言わざるをえない。
もしや、最初からこれをするつもりで俺たちをここにとどめようとわざわざ話をしてきたのか?
おのれ策士め。俺がメリアちゃんじゃなかったらとっくに死んでいるぞこれ。
「あはは、これは大変だ。で、何か作戦はあるの?」
「作戦か。奴は相当な魔力を持っているようだからな。本体を叩かん限りこの攻撃が止まることはなかろう。であれば……」
「このまま突っ込む?」
んなっはっはっは。
いやいやそんな、何をおっしゃいますことやら。
そんな脳筋作戦をメリアちゃんがするわけないでしょう常識的に考えて。
「フッ、中々に良い案だ。どれ、其方の言うように全力で突っ込んでみるとしよう」
そうでした。メリアちゃんは常識外れの存在でした。
「来い、黄金鎧装」
メリアちゃんがその言葉を呟くと同時に、久々の黄金外装が体を覆っていく。
そうか。これなら攻撃が連続で飛んでくる状況でも突っこんで行ける。
いやぁよかったよかった。メリアちゃんが何も考えずに特攻する脳筋なわけないもんね。
……脳筋ではあるか。
――シュピンッ、スパァンッ
「おぉー、すごいねそれ。全部弾いてるよ」
「当然だ。オレの黄金鎧装は半端な魔法では傷一つ与えられんのだからな」
ガシャンガシャン、ズシンズシンと、威圧感のある音と共にメリアちゃんは前へ前へと進み続ける。
その後ろにエルシーも着いてきていた。
鎧越しにロリ同士密着。
何も起こらないはずもなく……。
何も起こらないんだなこれが。
「な、なんですかそれは……! 私の神聖魔法はリリアさんほどではないにしろ、鎧程度で防げるものでは……!」
「ただの鎧ではそうなのだろうな。だが、このオレが錬成した鎧をそこらの凡庸なものと比べられては困ると言うもの」
「くっ……!!」
――シュピピインッ、スパパァンッ
距離が近づいたからか、攻撃がより激しくなっていく。
だが黄金鎧装の前にそれらは無力だった。
「……分かりました。私の負けです。煮るなり焼くなり好きにしてください」
攻撃が止んだかと思えば、物陰から出てきた少女がそう言いながら俺の前に跪いた。
「ほう、随分と潔いな」
「これ以上戦っても、貴方に勝てないことは明白ですから。でも、その代わり……他の皆は助けてください。私はどのような扱いをされても構いません……。ですので、どうか……!」
ルミナスは頭を下げ、悲痛な声でそう叫んだ。
……俺、あまりにも悪役すぎない?
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