3章 王都襲撃 01
王都に直接殴り込みに行くことになった俺たちは今、ニーニャと共にドラブロに乗って王都グランダリアへと向かっていた。
「それにしても、本当にいいんでしょうかこんなこと……」
「うーん、別にいいんじゃない? 多分、こんなことしなくても僕たちはずっと追われることになると思うよ?」
「そうですね。騎士隊の方々をあれだけ好き放題してしまったわけですし、何らかの報復は絶対に来るでしょうね~」
「そんな……」
ああ、なんてことだ。
唯一の常識人枠とも言うべきアイリが怯えている。可哀そうに。
まあでも、そうもなるか。
俺含め、彼女以外の四人がクレイジーであることはここに来てよーくわかった。
シンプルに戦闘狂が多すぎる。
そんなバカルテット共が王都を襲撃しようとか言い出したんだ。
胃痛がもうストレスでマッハだろう。
まともな人間なら禿げ散らかしていてもおかしくはない。
そうはなっていないのは彼女がまがりなりにもBランクのハンターだからだろうか。
魔獣に対して特に怯えもしないし、暗黒獣にぶった切られたあの時だって特に発狂するでもなく冷静だった。
……うん?
もしかして、この人も大概狂っている……?
いやまさか。
そんなことがあってたまるか。
もしそうなら俺たちはバカルテットどころか頭イカレクインテットだ。
頼む、アイリだけは俺たちの中で常識人枠でいてくれ。
唯一とも言うべき癒し枠のままでいてくれ……。
「あれ? 向こうから何か来てる……?」
「ニーニャさん? 何か気になることでも?」
「えっと、凄く遠くから何か飛んできてるような気がするの。魔獣かもしれないから少し回り道をするね」
そう言うとニーニャはドラブロに向きを変えるように指示を出した。
うーん、確かに遠くの空に点々が見えるような気がする。
ニーニャの言うように魔獣だと面倒くさいし、回り道は仕方無いか。
とは言え、一応もう少し詳しく確認してみるか。
メリアちゃんの右目には賢者の石で作られた魔眼が埋め込まれているからな。
ある程度の望遠機能もついているし、ここからでも詳細が分かるはず。
……魔獣の上に人が乗っている。
と言う事はニーニャと同じくテイマーと言う事か?
見た感じドラブロと同じく飛竜系の魔獣だし、ワンチャン彼女の仲間の可能性はあるかもしれない。
「ニーニャよ、其方のほかに竜を使役するテイマーに心当たりはあるか」
「え? うーんと、ない……かな。少なくともハルバニアの人たちの中にはいないと思う。でも急にどうして?」
「其方の言っていた、こちらに向かって来ている存在が竜なのだ。それも人が乗っている。恐らくはテイマーだろう」
「この距離で見えるの!?」
「ああ、オレの目は少々特殊でな。望遠機能がついている」
なんなら望遠機能どころじゃないぜメリアちゃんの目は。
賢者の石を材料にしていることからも分かるだろうけど、この魔眼は膨大な魔力を生み出しているんだ。
ただでさえ魔力量の多いメリアちゃんにとって、これはまさに鬼に金棒!
時間さえかければ実質無限の魔力ってなわけよ!
まあ、ゲームだと自動回復スキルがあったから別に魔力が実質無限なのはメリアちゃんに限った話じゃないんだけども。
「凄い! それもやっぱり逸脱者の力なの?」
「うふふ、これはメリアさんが特別なだけだと思いますよ~。Aランクのハンターですらそう言った話は聞きませんからね」
「そうですよね……。ユニークスキルとはまた違うみたいですし……」
「キヒッ、ますます気になってきた……♥」
いかん、エリを刺激してしまったかもしれない。
ここはひとまず話を変えないと……。
「竜を使役するのはここでは一般的なのか? 魔獣の中でも特に気性が荒いと聞くが」
「うーん、どうだろう。数はあまり多くないみたいだけど、全く存在しないってこともないと思うよ。王都の騎士隊も竜を従えているからね。まあウチとドラブロはちょっと珍しい出会いと言うか……例外みたいなものだから参考にはならないだろうけど」
「ほう、珍しい出会いとな」
「うん。破壊された巣に残されていた卵をウチが育てたの。あのまま放置していたらきっとドラブロは生まれることもなく死んじゃっていただろうから。そんなの、あんまりじゃん」
おおん、なんて優しいんだ。
あまりの感動話に涙がで、出ますよ……。
そっか、彼女自身が王国から追われているんだもんな。
死にゆく運命のドラブロと自分たちを重ねたのかもしれない。
死が身近だからこそ、そう言った感情も強くなる……と。
「だ、だとしたら……その竜に乗っているのが騎士隊と言う可能性はないんですか……?」
「見た目だけでは分からんな。少なくとも鎧の類は着ておらん」
「でも騎士隊は騎士隊長を除いて皆さんが壊滅させたんでしょ? それならすぐに追って来たところで皆さんに勝てるとも思えないし、違うんじゃないかな」
確かにそうだ。
あれだけ派手に捨て台詞吐いて逃げて行った奴がこんなすぐに追って来るとも思えない。
そもそも、アイツ自身がもう一度俺たちと戦うこと自体が想像できない。
……待てよ?
騎士隊が竜を従えていると言っても、別に乗っているのが騎士隊である必要はないんだよな?
それこそあの乗っている人たちが王都からやってきた逸脱者の子孫だと言う可能性も……。
「あら? あの飛竜……なんだか、速くありません?」
ユイがそう言うので後ろを見てみる。
すると彼女の言葉通り、さっきまではゴマ粒みたいだった竜が目視で認識できるくらいの距離にまで近づいていた。
確かに速いな。
ドラブロだって結構な速さで飛んでいるのに、それ以上の速さってことになる。
……いや待て待て。
どうして、わざわざ向きを変えた俺たちを追って来ているんだ?
人が乗っているってことは餌として狙われているわけでもないはずじゃ……。
「ッ!! 攻撃が来るぞ!!」
「えっ!? わ、分かった……!!」
メリアちゃん!?
な、何事でござるか!?
――ブォンッ
うわぉ!?
すぐ真横をドでかい火球が!!
あ、危ないな……。
直撃していたらドラブロは確実に墜落していた……。
「あらあら、これは……」
「敵襲、だね……♥」
Oh……どうやら俺の予想は当たってしまったらしい。
アルベルトのあの感じからするに、王国絡みで今みたいな魔法を使えるのはそれこそ逸脱者の子孫くらいなもんだろう。
つまり、あの竜に乗っているのは……逸脱者の子孫というわけだ。
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