3章 王都襲撃 02
さて、どうしよう。
こっちから襲撃してやろうとか思っていた矢先にこれだ。
それも、よりにもよって空中にいる時に接敵するとは。
くそっ!
俺たちは空中戦じゃ分が悪すぎるでしょ……!
「と、とりあえず地上に逃げようか!?」
「そうしましょう。空中では私たちも満足に戦闘できませんし」
「それに、多分それは向こうも同じだろうからね。撃って来る魔法にだけ気を付けていれば逃げられると思うよ」
「分かった! ドラブロ、急いで地上に……」
――ゴゥンッ
「うひゃぁっ!?」
ニーニャが可愛らしい悲鳴をあげる。
どうやら再び火球が飛んできたようだ。
それもドラブロのすぐ下を掠るような形で。
ぐぬぅ……そう簡単に逃がしはしないってか。
「なるほど、相当腕のいい術師のようだな。下手に逃げ回れば直撃しかねんと」
「でもそれじゃあ……!」
「案ずるな。向こうも俺たちを墜落させるつもりはないようだぞ」
「え……?」
そうなの?
でもあんなにバチバチに撃ってきているのにそれは……。
……あ、確かにただ飛んでいる分には撃ってこない?
じゃあ本当にメリアちゃんの言う通りなのか。
「最初の一撃は威嚇射撃だったのだろう。あえて命中しないように横にズラして撃ってきたのだ。それだけの精度を持っていると言うことでもある。侮れん相手よ」
「で、でもどうしてそんなことを……」
「それを知るためにも、奴らがここに来るのを待つべきであろうな」
なるほど。メリアちゃんがそう言うのなら、多分そうなんだと思う。
え、何故そう言い切れるかって?
何故なら俺は、英雄メリアちゃんを信じている!!
メリアちゃん最高!!
メリアちゃん最高と叫びなさい!!
「……来たか」
あ、いつの間にやら数体の竜がすぐ近くへと近づいてきている。
先頭の竜に乗っているのは……少女か。
服装もそうだけど、やっぱり騎士の類ではなさそう。
おそらくは彼女が魔法を撃ってきたんだろうな。
ザ・魔術師みたいな杖を持ってるし。
となると彼女が増魔の持ち主、リリアというわけか。
……と言うかさ。
やっぱり速すぎるだろあの竜。
もしかしてあの時の騎士隊もこの竜で先回りしてきたのか?
この速さならば後ろから追わずに最短距離で先回りすればニーニャたちの前に出られたはずだ。
問題はなんでそんな重要な情報をニーニャたちが持っていなかったのかって話だけど……。
まあ、考えるのはあとでいいか。
今は目の前のことに全集中だ。
「……よく逃げなかったわね。それとも降参するつもりかしら?」
「フンッ、目的はどうあれ直撃させるつもりがなかったようなのでな。加えて逃がすつもりがないのであれば、何か理由があると考えるのが自然と言うものよ」
「……え? ちょ、待って……。なに、この子……?」
おぉ、今となっては珍しく当然の反応が返って来た。
ありがとう、それしか言う言葉が見つからない。
君のその感性に、ある意味安心しているよ俺は。
なんせエリもユイもエルシーもニーニャも、なんか当然のように受け入れているからな。
一応アイリだけは最初ツッコんでくれたけど、異界の放浪者ならそういうもんかとすぐに納得してしまった。
だからそう言う初心な反応をしてくれると、俺がおかしいんじゃないかと言う考えを振り払えてシンプルに安心できるのよね。
「フハハッ、異世界の未知の大陸の住人ともなればオレを知らぬのも道理か。では教えてやろう。オレは黄金士族の一人にしてゴルドラン家当主、メリア・ゴルドランだ。覚えておくがいい」
「ゴルドラン家……? 女の子なのに当主なの? それに、黄金士族……? ねえ、向こうの大陸って今はそんな変なことになっているの? おじいちゃんから聞いた話と大分違うんだけど……」
「いえいえ、メリアさんが特殊なだけですよ~」
「そ、そうよね? いくら数十年経っていても、世界がそう簡単に変わりはしないわよね?」
俺の名乗りのせいでめちゃくちゃ動揺している……。
どうやら余計な混乱を招いてしまったらしいな。
いや、そうは言っても俺だってどうしようもないというか。
言動の制御がね。できないんすよ。
「ま、まあそれなら良いわ。それよりも……貴方たちが逸脱者なのでしょう?」
「やはり知っていたか」
「ええ。騎士隊長ともあろう人が泣いて帰って来たんだもの。そうとしか考えられないわ」
……なにやっているんだあの人。
仮にも大の大人が年下の少女の前で……もろに「大人のオスがこんな情けない声で泣くんですね」案件じゃん。
「分かってる? あやすのもすっごい大変だったのよ? 私たちで代わる代わる膝枕して、頭も撫でてあげて……」
マジにござるか!?
本当に何をやっているんだあの人……!!
「そ、それは今はいいのよ! ……私たちの目的は二つ。一つは貴方たちをぶっ倒すこと。そうしろって泣きついて来て仕方がないの。だから許してちょうだい? で、もう一つはぶっ倒した貴方たちを王国に連れて行って私たちの仲間にすること。王国のために一緒に戦ってもらうわ」
「ほう、俺たちを戦争に使おうと言うのか」
「……知っていたのね。それなら話が早い。できれば穏便に済ませたかったけど、あの人が泣いて煩いから一度ぶちのめさせてもらう。そのあとで答えを聞かせてもらうわ」
えぇ、そんなぁ。
おのれアイツめ……いや、どちらにしろ彼女たちとは敵対するからあまり関係ないか。
「フッ、大した自信だな。いいだろう、やってみるがいい。貴様らの力……このオレに見せてみよ!」
「ああもう! 調子狂う! なんなのこの子!? おとぎ話の魔王か何かなの!?」
いや、それについては本当すみませんねぇ。
……ってかこの世界、魔王とかの概念あるんだ。
「いいわ、まず貴方から倒してあげる! けど、空中戦だと本気も出せないでしょう? 私はどちらでもいいけど、地上で戦ってあげてもいいわよ。あとで『本気を出してないから負けていない』なんて言われても困るからね。私は真正面からやり合うのが好きなのよ。感謝しなさい?」
「そうか。では感謝して厚意に甘えるとしよう」
「えっ、あ……うん」
メリアちゃんの返答が思いのほか素直だったからか、リリアは呆気にとられた表情を浮かべている。
確かにさっきまでのメリアちゃんを考えると「そんなものはいらぬ!! ゼハハハッ!!」みたいな感じになりそうだけども。
「ニーニャよ、聞いていたな」
「うん、ちょっと待ってて」
ニーニャがドラブロに指示を出したようだ。
少しずつ高度が下がって行く。
それに合わせて周りにいる竜も一緒に高度を下げて行った。
どうやら本当に地上で戦ってくれるらしい。
いやぁよかった。「騙されたわね! 一掃するわよ!!」みたいに上から魔法を撃って来るとかはなさそうだ。
「よいしょ……っと。皆は手出ししないでちょうだいね? あの子は私が倒すから」
「ほう、一対一というわけか。オレとしては別に複数人でかかってきても構わんのだがな」
メリアちゃん、アルベルトの時もそうだけどあまり戦闘前に煽らんといて……。
「言っておきなさい。どうせ戦い始めたらわかるわ。私の強さがね」
ほらもう、あの子やる気いっぱいになっちゃってるよ。
「メリアさん……本当にお一人で大丈夫なんですよね……?」
「心配はいらん。それに向こうが一対一を望んでいるのだ。受けて立たねばゴルドラン家当主の名が泣くというものよ」
「でも……」
「あはは、大丈夫だと思うよ。彼女、相当強いし。それよりも、邪魔になるといけないから僕たちはあっちに行ってようか。それじゃあ僕たちは向こうで観戦してるから、頑張ってね☆」
エルシーがキャピっとしたウィンクを決めながら、心配そうな表情のアイリを連れていった。
うん、かわいい。
竜車の時もそうだけど……やっぱり彼女、自分が可愛いの理解してるよな……。
……あ、もちろんエルシーの方だよ?
怯えている姿が可哀そうで可愛い派閥の人間じゃないからね俺!
「準備はできたかしら?」
「ああ、いつでも構わんぞ」
「そう。それなら……こっちから行くわよ!!」
リリアの持っている杖が光り始めた。
あぁ……とうとう始まってしまったのか。
これが初めての逸脱者の子孫との戦闘……一体、彼女たちはどれくらいの実力を持っているんだろう。
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