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11話

いつも感想、そして誤字脱字報告ありがとうございます!


※次回の更新は3月20日になります

「おまえまた100点なのかー?」


 川崎はテストが返却される度に俺の解答用紙をみて驚いていた。

 しかし、俺にとってはそんな事はどうでもいい。


 次の現国の授業で返却されるテストで100点ならば俺はすべてのテストで100点となる。

 

 期待と不安が募る中、ついに最後のテストが返却される時が来た。


「神崎さーん」

「はい!」


 教師からテストが返され、席に戻り解答用紙をみるとそこには100の文字があった。


「うげっ。神崎全部100点かよ」

「どうやらそのようだな」


 平然を装いながらも俺はすでに夏の海の事で頭が一杯だった。

 今から筋トレメニュー強化しようか、海の場所をチェックしとかないとなー。


 色んな事を考えていたらいつの間にか授業は終わりお昼休みとなった。

 返却されたすべての解答用紙を弁当をもって俺は例の階段へとスキップで向かう。


「たーかやーまさん!」

「なんかテンションが高いね神崎君……」

「はい! これテスト!」

「私のはこれ」


 俺たちはそれぞれの解答用紙を交換し、お互いに点数を見た。

 高山さんはほとんどが100点だったが、現国だけ98点だった。

 それも漢字を間違えるという凡ミス。


 ふと、高山さんの方を見ると解答用紙を持つ手が震えていた。


「俺の勝ちだね!」


 誇らしげに俺はそう言った。

 実に気持ちがいい。


「勝ったと思ったのに……」


 そう言った高山さん声は少し震えていた。

 顔を見ると目をウルウルさせていた。


 え?なに?

 そんなに負けたことが悔しかったの?

 それとも言う事一つ聞いてもらえないのがそんなに悲しいの?


「いいもん! さぁ神崎君は私に何を命令するの!」


 腕を組みぷいっとそっぽを向きながら高山さんはそう言った。

 何か泣いてるけど少し可愛いと思ってしまった。

 もしかして俺はSなのかもしれない。


「えっと……じゃあ今年の夏休みどこかで海行かない?」


 言ってしまったあああああああああ。

 明らかに水着目当てで嫌われてしまうかもしれない。

 でもそんなの知らない。


 だってこれは勝者の特権なのだから。

 この為に俺は人生で一番テスト勉強をしたのだから、これくらい許してほしい。


「え?」


 高山さんは赤くして目をこちらに向けた。

 その表情は先ほどまでの拗ねた表情ではなくなっていた。


「ふ、ふーん! それくらいならべ、別にいいかなー!」

「ほんと? よっしゃー!」


 抑えきれずに俺はガッツポーズをしてしまった。

 

「そ、そんなに嬉しいの?!」

「それはもちろん! その為にテスト勉強頑張ったから!」


 もしかしてそんなに水着見たいのかと失望されてしまったかも知れない。

 

「そうなんだ……神崎君も……」

 

 高山さんはボソッと何かを呟いた。


「ん? 何か言った?」

「いや! 何でもない!」


 そう言った高山さんの表情はどこか嬉しそうだった。

 何故嬉しそうだったのかはわからないが、ずっと拗ねているよりもこっちの方が全然いい。


「そういえばこの前カラオケで一緒にいた……」

「あ、藤崎さん?」

「そう! あの人は神崎君の何?」

「俺の何って言われても……」


 藤崎さんの話題になると先ほどまでの表情から一変。

 少し不機嫌そうな表情になった。

 自分から話題振ってきたのに……。


「親父経由で知り合ったんだよ。といっても初めて会ったのはつい最近だけど」

「そうなんだ……」

「藤崎さんがどうしたの?」

「いや、大丈夫だよ! さぁご飯食べよ!」


 何か藤崎さんの事になると様子がおかしくなるな。

 もしかしてカラオケで一緒になってあまり好ましく思わなかったのかな。


「あら、神崎さん、そして高山さん偶然ですね」

「げっ……噂をすれば」

「あら、私の噂をしてくれてたのですか?」


 偶然にも藤崎さんが階段に来た。


「藤崎さんこんなところに来るなんて珍しいですね」

「えぇ。教師から屋上のドアが閉まっているか確認してほしいと言われまして」

「そうなんですね!」

「よければお昼ご一緒させていただいても?」

「大丈夫ですよ! 痛っ!」


 藤崎さんからのお昼ご飯の誘いを了承したら高山さんから太ももを軽く殴られた。

 顔を見るとこれまたお怒りの様子だ。

 別にもう貧相な食事をしてる訳じゃないからいいんじゃないのか?


「では、お言葉に甘えて」


 藤崎さんが俺の横に座り俺は無事可愛い女の子二人に囲まれる形になったのだが……

 幸せなはずなのに何故か息苦しいような気がする。


「二人とも美味しそうなお弁当ですね」

「あ、俺たち毎日弁当交換してるんだ!」

「そうなんですね! 本当に仲がいいんですね」

「はい!」


 俺と藤崎さんが話してる最中、高山さんはすごい速度で弁当を食べていた。


「ごちそうさま!」

「あっ、高山さん!」


 すぐに弁当を食べ終えた高山さんは俺に弁当箱を返してそのままこの場から去ってしまった。


「怒らせちゃったかな……」

「でも何か怒らせるような事したのですか?」

「わからない」


 本当に高山さんは何を考えているのかわからない。


***


高山絵美視点


 神崎君のバカバカバカ!

 本当に鈍感男!


 私にとって唯一神崎君と二人一緒にいれる時間なのに。

 一番楽しみにしてる時間なのに。


 わかっている。

 きっと藤崎さんは偶然あそこに来たんじゃなくて狙ってきたんだ。

 だって屋上のドア閉まっているのか確認するのに弁当持ってくるとかおかしいもん。


 私の押しが甘いのかな……


 あーイライラするし悲しいし!


 神崎君が教室に戻ってきたのは結局お昼休み終了間際。

 すぐに追いかけてきてほしかったのになぁ。

 我がままだってことはわかってるけどさ。


 もちろん午後の授業なんて集中できるわけなく、何も頭に入らないまま授業が終わった。

 私はすぐさまバイトに向かうべく教室をでた。


 バイト先のある裏路地に入って所で後ろから神崎君に声をかけられた。


「高山さん!」

「なに?」

「これ……」


 そう言って差し出してきたのはお弁当箱だった。

 そういえばお弁当箱返してもらってなかった。


「ありがとう。それと明日からしばらくお弁当の交換はなしにしよう」


 自分でも望んでないのに、そんな言葉が私の口から出てきた。


「え? どうして!」

「なんとなく」


 強がってしまう。

 どうしても藤崎凛の顔が浮かんでしまう。

 その度に、強がってしまう。


「わからないよ!」


 神崎君は珍しく大声を出した。


「何が?」

「言ってくれないとわからない! 高山さんがどうして怒っているのかわからない!」

「そんなこと……」


 言えるわけない。藤崎凛に嫉妬して二人の時間が邪魔されたことが嫌だってなんて。

 だってそんな事言ったらまるで……告白みたいだもん。


「そんなこと言えるわけないじゃん!」


 それだけ言って私はバイト先に逃げ込んだ。


***


神崎春人視点


 わからない。

 高山さんがどうして怒っているのか。

 理由も言えないって。


 俺は超能力者じゃないんだ。

 高山さんがどう思っているのかなんて分かる訳がない。


 あー明日から高山さんの弁当はなしかー。


 なんとも言えない虚無感が俺を包み込み、しばらくその場に突っ立っていた。


 すると、ポケットに入ったスマホから着信の音がした。

 スマホを見ると親父からだった。


「もしもし」

「春人か。今週の金曜日空けといてくれ。この前の社長の娘さんがまたお前と会いたいそうだ」


 藤崎さんか。

 俺に直接言ってくれればいいのに。


「わかった。空けとく」

「あぁ。何かあったか?」

「いや何も。どうして?」

「元気がないように思えてな」

「いや、大丈夫だよ」

「そうか、なら金曜日な」

「はい」


 そう言って電話を切った。

 親父にはお見通しなのかな。

 なるべく平然を装ったつもりだったんだけど。


 どうにかしないといけないと思いながらバイトに行ってしまった高山さんにどうする事もできないし、俺はとぼとぼ家に帰った。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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