表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

紀代美の妹

夜9時を少し過ぎた頃、茨城県警賀来警察署の表玄関へ一人の女性が慌てて入っていった。

背中の上半分まで延びた黒いロングストレートヘアーに赤い縁のメガネ 華奢な体格から一見現役の女子高生にも見えるその女性は受付の警官に「すみません、袴田紀代美の家族ですがお姉ちゃんは!?」と尋ねた。

その時、紀代美は取り調べが終わり部屋から廊下へ出てきた所だった。

「お姉ちゃんっ!!」

「あっ…可奈子」

この現役女子高生に間違われそうなのが袴田可奈子(はかまだかなこ) 紀代美の7歳下の妹で、静岡市内に両親と暮らしている。

「お姉ちゃん!!どうして警察に捕まったりしたの!?しかも長野とか!!ビックリしたわよ!!」

「ゴメン…話すとちょっと長いから。」

先程まで取り調べしていた警官が

「今回は相手の方も不問にしてくれたから起訴はしないが、以後気を付けるように!!」と紀代美に話した。

「どうもすみませんでした。」

「姉が迷惑をかけて申し訳ありませんでした。」と陳謝し、警察署を後にした。

「お姉ちゃんが警察に捕まったって連絡が来た時、お母さんは卒倒しちゃうし、お父さんなんか 埼玉にいる紀代美が何で茨城の警察にいるんだ!?しかも会社を辞めたとか!!お父さんは恥ずかしいぞ!! って凄い勢いで怒ってたよ。」

「あー 父さん達に謝っといてよ。」

「そうはいかないわよ!!首に縄つけてでも連れ戻して来いって言われてるから!!」

「…その事なんだけど、一緒に静岡に戻るからちょっと待ってほしいんだ。」

「えっ!?どういう事なの?」

「ん、後で話すから。」

そうして、徹の家に戻ると、今まであった事を可奈子に話した。

徹の事…

死の知らせ…残された手紙…斎藤から聞いた話…そして穣と徹の兄に殴りかかろうとした事…


可奈子はそれらの話を聞いて、しばらく沈黙した後に口を開いた。

「わかった。お父さん達には私から話しておくね。」

「…可奈子…わかってくれてありがとう。もしこれで可奈子もわかってくれなかったら、私は…」

と言うと、紀代美は涙を流した。

「お、お姉ちゃん!!どうしたの!?私の知ってるお姉ちゃんは、そこら辺のヤワな男よりもさっぱりした、男勝りの性格なのに…」

徹の事を涙を流しながら話す紀代美の様子を見て、可奈子は驚きを隠せなかった。

「お姉ちゃん、私に出来る事何かない?」

「可奈子…その言葉は嬉しいけど、今以上迷惑かける訳には」

と紀代美が続けて話そうとするのを遮るように

「今のお姉ちゃんを見てると私はほっておけないよ!!こういう時こそ私を頼ってよ!!」

と目に涙を浮かべて可奈子が叫んだ。

可奈子の訴えに驚きを隠せない紀代美だったが、直ぐに可奈子に話かけた。

「…わかった。お姉ちゃん、可奈子に頼らせてもらうね。ありがと、可奈子。」

「そう来なくちゃ!!私も頑張るよ!!お姉ちゃんと徹さんの為に!!」

その後、紀代美はひさしぶりに静岡の父と母に電話した。

案の定、母は半泣き父は激怒していたが紀代美は素直に謝った。

それには、父も母も驚いていた様子で

「ん!?そ、そうか。反省してるならいいんだ…」

と父はこれ以上怒る気力を削がれてしまった。

その後、可奈子が両親に事情を話していたが最後に父が紀代美と代われ と言われ可奈子からスマホを渡された。

「紀代美…よっぽどの事があったんだな。納得の行くようにしなさい。それが終わったら静岡に戻って来い。父さんも母さんも待ってるからな。」

「お父さん…ありがとう…」

紀代美は目に涙を浮かべて父に礼を述べた。


その日の夜、紀代美は久しぶりに可奈子との賑やかな夕食を過ごしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ