徹への思い
その晩、紀代美と可奈子は並んで寝床に入っていた。
「ねぇ、お姉ちゃん起きてる?」
「ん…起きてるよ。何?眠れないの?」
「ちょっと聞きたいけど、徹さんとはどう知り合ったの?」
可奈子からの質問に紀代美はしばらく黙った後、静かに話始めた。
「あれは、私がオフィス用品の会社に勤めていた頃かな…徹が宅配便の仕事やってて、荷物を届けに来たの。転職したてでまだ慣れてなかったらしくて、オドオドしていたのよ。その時は、何?この人 なんか頼り無さそう…と思っていた。」
「それで?」
「その時は、届け先の部署が違っていたから教えてあげた。けど、よく分からない様子だったからその部署まで一緒に付いてってね。その日はそれで終わったけど、数日後配達に来た時に、先日のお礼をさせてくれって自販機の缶コーヒー奢って貰った。お礼って言うから期待しちゃったら、缶コーヒーだもん。内心、がっかりしたかも。」
紀代美はそう話すと、少し微笑みながら
「でも、嬉しかった。」
「へーっ。そうだったんだ。」
「それがきっかけで色々話したり、買い物に付き合ったり付き合わせたり。それに…私が失恋した時も、朝から晩まで私の愚痴の相手してくれた。」
「それで、徹さんの彼女に?」
「ならなかった…その頃の私には何番目になるのか分からない彼がいた。」
「そうだったの!?じゃあ徹さんとは!?」
「…友達止まりの付き合いだった…」
「そう…」
「その頃の彼にふられた時だったの…愚痴をずっと聞いてくれたのは。嫌な顔1つせず聞いててくれてた。それから暫くした頃、徹が茨城にある実家に戻る事になって挨拶に来た。それが徹と会った最期だったの…まさかこうなるとは思ってもいなかったから…その時の挨拶も、今から考えると素っ気ないモノだった。」
紀代美の話に可奈子は静かに聞いていた。
「その後も、私は三人ぐらい付き合っては別れるのを繰り返していた。でも…そいつらは私の事を女としか見ていなかった。徹だけだったんだ、私の事を大切な存在だと思ってくれていたのは…その事を私が気づいたのは数日前…徹が死んだ後の事よ。私のだけ残していた連絡先…私にだけ残していた手紙…それなのに…私は…何で…何でもう少し早く気付いてあげられなかったのよ…私は馬鹿だ…」 と紀代美は自分を責めていた。
「お姉ちゃん…」
「だから私は徹の為にも…徹の無念を晴らしてあげたい。それが今、私が徹にしてあげられる事なの…」
「わかった。でもね、お姉ちゃんもう1つ、徹さんにしてあげられる事があるんじゃないの?」
「何?」
「徹さんにお姉ちゃんの素直な気持ち伝えてあげなきゃ。」
「そうね…
徹 私…あなたの事愛してる。あなたの全てが好きよ。」
「お姉ちゃん、徹さん絶対顔真っ赤にして照れてる。」
「そうね、徹ならあり得る。うふふ。」
「お姉ちゃん、じゃあ私もう寝るね。おやすみ。」
「うん、おやすみ……可奈子 ありがとう。」
と紀代美が可奈子に礼を言ったが、可奈子は既に寝息を立てていた。




