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徹の手紙

紀代美は夕食を済ませると、徹の部屋にあった封筒を開封した。

宛名には、紀代美の名前。裏には唯一文字 徹と書かれていた。中はたった一枚の便箋だけだった。


紀代美さん こんな形でこの手紙を読んでもらう事になってしまい本当に申し訳ありません。

心から色々と話せる相手は、兄達や親類ではなく

紀代美さん 貴方だけでした。今までありがとうございまし…


「ん?何か読みにくい?」

便箋は半分近くが水か何かの液体で濡れたらしく、それ以降は文字が滲んでいて読みにくくなっていた。

「はあ…この先、何て書いてあるのか解らないよね…」

それでも、ほんの僅かに読める文字があったので見てみると


無念  晴らして  


「ど…どういう事なんだろう?何かやり残した事が? それだとしたら自殺なんて…私に何かを託したいの?」

紀代美は徹の手紙をテーブルに置くと、考え込んでしまった。


兄や近くに親類がいるにも関わらず、長い間連絡もしなかった私に手紙を残した…

しかも手紙には 無念 晴らして の文字…


徹の兄達や親戚と何かあったのだろうか?

それが自殺に繋がったのだろうか?


色々考えてる内に紀代美は二缶目の缶ビールを口にしていた。

「明日、家の中を色々探した方がいいよね。何か他に手がかりがあるかもしれない。」



紀代美の頭の中は、数少ない徹との思い出を巡らせていた。ファミレスでドリンクバーだけで二時間近く二人で語り合っていた事…徹に秋葉原の模型屋に付き合わされて三時間以上、店にいた事…私の失恋話に朝から晩ま付き合わせた事…

だが、徹とはそれ以上の関係になった事はなかった。「徹…こんな事になるならもっと一緒に過ごすべきだったよね。そして、そして…もっと徹の事を知っておけば…」

紀代美の頬に一筋の涙が流れていった。


その後、家に残っていた客用の寝具を和室に用意するとキッチンにある徹の遺影に話し掛けた。

「徹…しばらくの間だけどこの家に住まわせてもらうね。そして手紙にあった、私に託された徹の思いを少しでも叶えていくから、見てて?」

そう言うと、紀代美は日付が代わる頃に眠りに入った。

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