徹の家
紀代美と斎藤は玄関の引き戸を開けた。
湿っぽい臭いというか空気が二人の鼻をついた。
「これでも徹さんのお兄さんらが掃除したからまだいいんですが、最初に来た時にはゴミ屋敷状態で…」
廊下やキッチンの片隅にはまだいくつかの段ボール箱や荷造りテープで束ねられた雑誌や古新聞が残っていた。家中の窓を開け放って空気を入れ換えると、幾分鼻につく臭いも薄まってきたので紀代美は家の中を見て回った。
そして、一階にある和室に徹の位牌と遺影を見つけると斎藤と紀代美は手を合わせた。
「徹…貴方を自殺に追いやったのは一体何なのか教えて。」と呟いた。
その後、斎藤に案内され徹の遺体があったという裏庭を見た。発見時、あまり手入れされていなかった庭も兄たちの手で綺麗にされたものの、雑草が生え始めていた。
徹の部屋であろう二階の6畳間に紀代美は上がってみた。他の部屋よりも段ボール箱が多く残っていたが、部屋の本棚にはまだ整理前の本が並んでいた。
「鉄道…アニメ?車…戦車…」
思い出した…徹はいろんな物に興味を示し、紀代美にもそれらについて熱く語っていた事があった。
「徹…今になっても私には理解に苦しむ事ばかりだわ。ごめん」と本棚を覗いている内に、本と本に挟まった封筒を見つけた。
袴田紀代美様
と書かれ開封されていない封筒を見つけると手に取って開けようとしたが思い留まった。
そして、一階にいる斎藤に
「すみません 私しばらくの間ここで色々整理したいのですが、 いいですか?もちろん泥棒とかするつもりは毛頭ないので。」
「え?お兄さん達や親類から私が管理を任されているんですが…ちょっとお待ちください。」
そういうと斎藤は携帯電話で2,3分関係者と会話をすると、玄関の鍵を紀代美に渡した。
「今、市内に住んでいる徹さんの親類と連絡して許可は頂きましたので。
一応、電気やガス、水道はまだ通っていますので何かありましたら、私に連絡を」
そうして、斎藤はライトバンに乗って慌ただしく戻っていった。
夕刻、紀代美はこの地域の民放TV局のニュース番組を見ながらコンビニ弁当と缶ビールの夕食を食べ始めていた。
その食卓には、弁当と缶ビール…そして徹の遺影と封筒。
「徹…あなたの気持ち、じっくり読ませてもらうよ。」




