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紀代美達の裁き

徹の手紙の全文が判明した日から三日後、徹の家に穣と雅司が訪れた。紀代美の方から連絡して来てもらったのだ。


ピンポーン…ピンポーン…

「はい、今開けます。」

と玄関を開けると、そこには穣と雅司の二人がいた。

「こんにちは、袴田さん。連絡を頂いた時にはびっくりさせられましたよ。あれだけの事をして、警察の世話にもなったというのに未だにここにいるとは。やっぱりあの時、私達を殴ろうとしたことは不問にすべきにはなかったのかも知れませんね。」

と穣が話す言葉に雅司も相槌をしていた。

その様子に、紀代美は少しイラつきながらも

「居間の方へどうぞ。」

と二人を案内した。二人が居間に入るとそこには、紀代美と可奈子そして斎藤がいた。

穣は少し驚きながらも紀代美に話かけた。

「袴田さんだけかと思いましたけど、斎藤さんもいらっしゃるとは思いもしませんでしたが…その人は?」

穣は視線を可奈子に向けた。

「初めまして、私 袴田紀代美の妹の可奈子と言います。」

「斎藤さんは兎も角、袴田さんの妹さんは今回の件は関係ないでしょう?そんな人がここに同席するというのはどうかと。」

抗議とも言える穣の発言に雅司も

「もっともな意見ですね。」

と言うと

「いえ、今回こうして集まってもらったのは袴田可奈子さんの協力があっての事なので、 同席を私の方からお願いしました。」

斎藤が話した言葉に

「…わかりました。」

と穣は不満有り気に返事した。「それで、今日呼ばれた理由は何ですか?この家から出ていく挨拶でも?」

そう言い出した穣達の前に紀代美が徹の手紙を差し出した。

「実は徹の部屋を整理していたら、私宛の手紙が出てきました。多分、遺書だと思うので一度見ていただければ…と思い、今日お呼び立てした次第です。」

紀代美に言われて、穣と雅司は手紙を見たがすぐにテーブルに置いた。

「これが遺書ですか?半分以上、水か何かで滲んで読みにくい上に読める部分は袴田さんに対するお詫びのような文じゃないですか!?私達も忙しいのでこれで…」

と立ち上がって帰ろうとした穣と雅司に、紀代美が話かけて引き留めた。

「待ってください。この手紙ですが滲んでいた部分の内容知りたく有りませんか?」

「…どうせ徹の事ですから、袴田さんの事を綴ってるのでしょう?私達には興味のない事ですから!!さあ、穣さん!!私達は帰りましょう!!」

と雅司は穣と玄関に向かって行ったが、紀代美はそんな二人に

「いいえ、脱税行為の事です。」

と冷淡な声で言った。

途端に二人は落ち着きのない様子で居間に戻ってきた。

「い、いい加減な事を!!そんな手紙のどこに書いてあるんだ!?デタラメも程々にしろ!! この前の事でせっかく逮捕なんて事にならないようにしてやれば、調子に乗りやがって!!名誉毀損で訴えるぞ!!」怒りを表した穣を目の前にして可奈子が、手紙の続きの文を書いたレポート用紙を差し出しながら口を開いた。

「それにしては、先程までと違って落ち着かない様子ですね。これが続きの文です。訴えるかどうかは、これを見てからでも遅くないと思いますよ。」

穣と雅司はレポート用紙を見たものの、すぐにテーブルに叩きつけた。

「こ!!これのどこが徹の手紙に書いてあるんだ!?いい加減にしろ!!」

怒りの収まらない穣に可奈子は続けた。

「徹さんって筆圧が強めだったというのは知ってましたか?」

「それがどうした!?」

「穣さん、宅配便の送り状等で一番上の伝票に書くと裏にあるカーボンで、下の伝票まで写るのは知ってますよね?」

「ああ、知ってるさ!!それがこの手紙とどう関係あるんだ!?」

「この手紙でも、カーボンがあるかないかの違いで、同じ事が起きていたんですよ?手紙を調べてる時に気づいて、カーボン紙を使って裏に盛り上がっていた文字を浮かばせていたりしたのですが、その最中に手紙と同じ物と思われる便箋帳が出てきたので、調べてみたら正解。それを、カーボン紙を上手く使ってみたら浮き出てきました。

で、全文書き写したのがこれなんです。」

可奈子の話を聞きながら、紀代美は思い出した。


あの時、手紙の裏を見たり斜めにしたのはそういう事だったのか。


「だ…だから何だ!?お前らいい加減に…」

と来た時の冷静さを失った穣の反論を遮るように斎藤が口を挟んだ。

「丸山さん、もういい加減にしませんか?私も手紙から浮かび上がった文字を見させてもらいましたが、はね等の字の癖から見て徹さんの文字に違いありません。それと、丸山さんは気付いてなかったと思いますが、以前から市役所の税務課でも怪しい点がある事が分かり、調べてはいたのですよ。そこに今回の手紙の全文です。これでほぼ確証は得ました。そして、この件を税務所の担当官に報告したところ、かなり興味を示していました。穣さんと雅司さん、もうおわりにしませんか?」

これまでの斎藤の話を聞かされて穣と雅司の顔は青ざめていた。

更に斎藤の話は続いた。

「多分、今頃税務所の担当官が丸山さんの自宅を捜索をされてると思いますよ。」

その言葉に、「終わったもう俺は終わった…」と呟きながら肩を落として玄関へ向かっていた穣と雅司に紀代美が追い討ちを掛けるようにいい放った。

「それと、私 風俗嬢じゃありませんから!!」

その言葉を聞いた穣は、驚いて転んだ挙げ句、顔を地面に打ち付けた。

二人が出ていった後、紀代美と可奈子は斎藤に礼を述べた。

「斎藤さん、今日は本当にありがとうございました。」

「いえいえ。あの時、徹さんの事を守ってやれなかった侘びのつもりだったのですから、お礼なんて…」

と斎藤は言った。

「それに斎藤さんに、徹の一番上のお兄さんに連絡取って頂いて、ありがたく思ってるんです。」

「急遽来てもらって、以後の土地に関する事をお兄さんがやって頂けるという事になって良かったと思います。丸山穣さんと雅司さんには任せておけませんから…では、私もこれで…」

「今日は本当に色々ありがとうございました。」

と紀代美と可奈子は斎藤を見送った。

「お姉ちゃん、終わったね…」

「うん…徹からのお願い、これで良かったのかな…」

「いいと思うよ。」

「だといいけどね…」

と家に入ろうとした紀代美の耳に

「ありがとう 紀代美さん」

と徹の声が聞こえた気がした。

「ううん、いいのよ。」

と空に向かって、紀代美は返事したのだった。

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