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徹の死

「お忙しいところすいません。袴田紀代美さんの携帯でよろしいですか?」

暑かった日々もようやく終わろうとしていた9月のある日、私のスマホに一本の電話がかかってきた。

私は袴田紀代美(はかまだきよみ)埼玉県内に住む28歳の元OL…今は職探し中の身だ。

「あの…私は茨城県賀来市(かくし)の市役所で福祉課の斎藤(さいとう)といいますが、秋月徹(あきづきとおる)さんをご存知ですか?」

秋月徹…7,8年前、私の勤務先に宅配便の仕事をしていた徹が来て、何度か話したのがきっかけで友人にはなったがそれ以上の関係にはならなくなり、徹も仕事を辞めてそれ以来3,4年は連絡すらしていない。

斎藤が話を続けた「実は秋月徹さんが先日お亡くなりになったんです。で、連絡先を探してみたら袴田さんの電話番号しか無くて、こうして連絡した次第なんです。」

「そうなんですか…わざわざご連絡いただきありがとうございます。失礼ですが病気か何かで?」

斎藤はしばらく黙った後「実は…自殺だったのです。」

自殺…その言葉を聞いた紀代美は「はあ…そうですか…」と力無く答えた。

「身内だけですが葬儀は済ませましたが、何せ連絡先があなただけなのでこうしてご連絡を…」

「わかりました。一度近い内にお伺いしますので、ご連絡先を…」

連絡先等を聞いて紀代美は電話を切った。

徹が自殺…しかも連絡先には私の番号だけ…


紀代美の心の中にはモヤモヤとするものが湧き始めていた。


2日後、紀代美は常磐線の特急列車の客になっていた。茨城県賀来市…都心から特急列車で二時間余りの人口9万人程の地方都市である。

賀来市の玄関口、賀来駅から紀代美はタクシーで市役所へ向かったが、タクシーの運転手はチラチラとルームミラーで紀代美の事を気にしていた。

黒のタンクトップに紫のパーカー

ジーパンを履いたポニーテールの若い女性。女優か有名スポーツ選手と言われれば信用してしまう程の顔立ちだから仕方ないのかもしれない。それは市役所で斎藤と会っても同じだった。

市役所のライトバンで紀代美は斎藤と共に徹の自宅へ向かった。

徹の自宅は市役所からそう遠くない距離にある二階建ての一軒家だった。

「あの…出来たら手を合わせていきたいのですが…」

「あ、はい。親族から鍵を預かっていますのでどうぞ中へ…」と斎藤が玄関の鍵を開けた。


「徹…何で自殺なんかしたの…」

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