↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Miracle   作者: NikuQueen
7/7

1 x 07

サン・マリー・デュ・メルシー学院の中庭はとても広く、たくさんの植物で彩られていた。


その池の一つの近くに、少年たちの小さなグループが集まっていた。アダンとハイード、ルカ、そして新しく仲間に加わったネイサンだ。


アダンは湖を眺めており、ルカは水面に石を投げて何度も跳ねさせていた。一方、ハイードとネイサンは会話を楽しんでいた。


「本当に七〇年代のロックバンドが好きなのか?」


「七〇年代から二〇〇〇年代までだよ」


ネイサンは友人の言葉を訂正した。


「ところで、一番好きなロックバンドは何なんだ?」


ルカはネイサンの方へ振り返り、尋ねた。


「タイプ・オー・ネガティヴに、ブラック・サバス……」


ネイサンはそう答えた。


「オジー派? それともディオ派?」


「どちらも本当に素晴らしいアルバムを出しているよ」


ネイサンは簡潔に答えた。


アダンは二人の会話を興味深そうに眺めていた。すると、ハイードが彼に尋ねた。


「なあ、お前は何か好きなバンドとか、特定の音楽ジャンルはあるのか? それとも父親が音楽を聴くことすら許してくれないのか?」


「僕の人生は、いつもカメラのフラッシュを浴びたり、ポーズを取ったりすることばかりだったから……。音楽について知っていることといえば、ピアノのレッスンで習った曲か、母さんが歌ってくれた子守歌くらいかな。でも……自分の好きな音楽を見つける時間なんて、一度もなかったんだ」


アダンの説明を聞いた三人は顔を見合わせた。


そしてネイサンが金髪の少年に尋ねた。


「ねえ……家で何かあったりするの? いや……君が話してくれる家のことや、いろんなことをほとんど知らない様子を見ていると……あまり幸せそうには思えないんだ。それに、仕事を始めたのは……いつからなの?」


アダンはその質問を聞いた瞬間、身体を硬直させた。


ただ視線をそらし、短い言葉を口にした。


「僕は……本当に小さい頃からずっと注目を浴びてきたんだ。いつからなのかさえ、もう覚えていないよ」


その答えを聞いて、ネイサンだけでなく、ハイードとルカもますます心配になった。


「ねえ、僕のことを信頼してくれていいんだよ。母さんは君の家庭教師でもあるし、きっと事情を理解して、力になってくれるかもしれない。だから――」


「だめだよ、お願いだから!」


アダンはすぐにネイサンの言葉を遮った。


その瞳には、光が失われたような色が浮かんでいた。


「ぼ、僕の家族のことについては、助けなんて必要ないんだ」


「アダン、あの子たちに話してやれ。本当のことを伝えるんだ」


そのとき、エキビョウが少年に語りかけた。


『<<できないよ、エキビョウ……。もし話したら、父さんは彼らを僕から遠ざける。僕をまた閉じ込めるだろう。そんなことは嫌なんだ。外の世界へ出るための、僕に残された唯一の希望なんだよ。それを失いたくない>>』


アダンは心の中で、混沌の猫にそう答えた。


エキビョウは無力感から怒りを込めて鼻を鳴らした。しかし、すぐに気持ちを落ち着け、穏やかな声で少年に話しかけた。


「分かった。だが、いつかは彼らも知ることになる。それに、お前にはあの子たちの支えが必要だ。何といっても、今のお前が信頼できている唯一の人たちなんだからな。父親が何をしているのかを、お前自身の心で隠しきれなくなったときは、彼らに話すんだ」


その言葉の後、アダンの表情は暗くなった。


ネイサンは心配そうに金髪の少年を見つめ、彼に声をかけた。


「まあ……話すのが難しいなら、話せると思ったときに教えてくれればいいよ。いい? 無理に話してほしいわけじゃないんだ」


「普通のことだよ」


アダンはそう答えた。


「家族について話すのは……難しいんだ」


ネイサンはそれ以上何も言わなかった。ただ、金髪の少年を理解するような眼差しで見つめていた。


そのとき、空気を震わせるような羽音が聞こえてきた。まるで蜂かスズメバチのような虫が飛んでいるかのような音だった。


そして突然、何かに突き動かされたようにアダンはネイサンを押しのけた。


直後、ネイサンがいた場所の地面が消え去った。


その瞬間、奇妙な男が姿を現した。


白と青を基調とした独特なスーツを身につけており、何か奇妙なフィールドの中にいるように見えた。


「お前たちを消し去ってやる! 何一つ残らないようにな!」


奇妙な男は叫んだ。


「ここから逃げるぞ! 早く!」


ハイードが叫んだ。


その声を合図に、四人はその場から散り散りになり、それぞれ別の場所へ身を隠そうとした。


アダンは建物の最初の階にあるトイレに隠れた。すると、エキビョウが影の姿で彼の肩に現れた。


「子猫ちゃん……」


「うん。彼らに話すべきだったってことは分かってるよ、エキビョウ……でも、怖いんだ。僕が余計なことを話したせいで、彼らに何か起きたらどうしようって……」


混沌のネウマはただため息をつき、答えた。


「今、大切なのは、あの人間消しゴムを止めることだ。あの歩く消しゴムを始末してやろう」


「それについては君の言う通りだね! エキビョウ、変身させて!」


その言葉とともに、緑と黒の閃光がアダンを包み込み、彼をフィーラインへと変身させた。


一方、ルカはロッカーの一つに身を隠していた。


すると、ヘビが彼のそばに現れ、腕に巻きつくようにして姿を見せた。


「アダンは家族のことで何か問題を抱えているみたいだ……。あの目を、僕は何度も見たことがある」


ルカは永遠のネウマに話しかけた。


「今は彼のことが重要なのではありません。問題は、あのフィリアをどう倒すかです。あの敵は周囲を消し去るフィールドを持っています。元の人間に戻すためには、まず倒す方法を見つけなければなりません」


ヘビは状況を分析した。


ルカは自分のネウマを見つめ、話しかけた。


「まずは、あいつを一般の人たちから引き離すことだ。その後で、人間に戻す方法を探そう。ヘビ、変身させて!」


その言葉とともに、ターコイズブルーの輝きが彼を包み込み、サーパーへと変身させた。


そしてロッカーを蹴破るようにして外へ飛び出した。


フィーラインとサーパーは再び顔を合わせた。


猫のヒーローは言った。


「思っていたよりも早く、また会うことになったな」


「そうなるだろうと思っていました」


蛇のヒーローは答えた。


二人は学院の三階にある鉄製の手すりへと飛び乗った。


そこでサーパーは敵の様子を分析し始めた。


「こいつに勝つのは、かなり厄介そうです。あの消去フィールドで、僕たちまで消されてしまうかもしれません。それに、あの能力は身体のどこかにあるものから発生しているように思えます」


「何かできるかもしれない……」


フィーラインはそう呟いた。


『<<なあ、エキビョウ。僕の破壊エネルギーを外に放出することはできる?>>』


『できるとも、できないとも言えるな。可能ではあるが、ごく少量に限られる』


混沌のネウマは彼の心の中で答えた。


『<<どうにか使い方を考えてみるよ。こういうことならできるかもしれない……>>』


そう言うと、フィーラインは指先にほんのわずかな混沌のエネルギーを集め、消しゴムのような男に向かって撃ち出した。


しかし、そこで大きな問題が起きた。


放たれたエネルギー弾そのものが、消し去られてしまったのだ。


それを見て、二人は不安を覚えた。


「くそっ……」


「もっといい作戦を考えなければなりません! 今すぐに!」


サーパーは叫んだ。


そのとき、フィリアが二人に向かって直接襲いかかってきた。


二人は攻撃を避けるため、必死に身をかわさなければならなかった。


一方、ネイサンはというと……。


彼は教室の一つに隠れ、身体を丸めて座り込んでいた。


先ほど起きた出来事が、頭から離れなかった。


アダンが間一髪のところで自分を救ってくれたこと。その一部始終を何度も思い返していた。


怖かった。


本当に、とても怖かった。


そして何もできなかった自分に、ひどい無力感を覚えていた。


そのとき、ネイサンの耳に鈴の音のような澄んだ音が届いた。


彼は顔を上げた。


そこには、白いスーツを着た男が立っていた。禿げ頭に太い眉、そして穏やかな眼差しを持つ男だった。


ヘイワが、彼の目の前にいた。


「ルルー君。君には、ほかの人々を助ける才能があるようだね」


「僕に? 人助けの才能? いや、いや、いや……それは違うよ」


ネイサンはそう言った。


そして悲しそうに視線を落とした。


「僕は誰の助けにもなれないよ……。人々を守れるようなものなんて、何も持っていない。勇敢でもないし、強くもない……。力だって全然ないんだ。僕は本当に情けない人間なんだよ」


それを聞いたヘイワの眼差しは、少し柔らかくなった。


そして彼に話しかけた。


「情けないというのは、挑戦する前から諦めてしまうことだよ、少年。君の絵を描く才能は特別なものだ。それは罪の宝玉にとっても、とても重要なことなんだ。時には、ヒーローに必要なのは肉体的な強さや知性だけではない。創造力だって必要になる。そして、それは君の中にある」


そう言うと、ヘイワは革製のバッグから何かを取り出した。


そして、黒い角の形をした二本の髪留めをネイサンに見せた。


「これを受け取りなさい、ルルー君。君の内側には、本物のヒーローになれる可能性があるのだから」


ネイサンはその髪留めを受け取り、じっと眺めた。


それらは白と黒の光を放ち始めた。


すると、その光の中から不思議な生き物が姿を現した。


それは、まるで幽霊のような小さな子羊だった。


腹部、蹄、耳、そして額には黒い部分があり、小さな角も黒く染まっていた。額には六芒星の形をした印が刻まれている。それ以外の部分は白い毛で覆われていた。


瞳は鮮やかなオレンジ色で、その小さな生き物の表情には、皮肉っぽさと人をからかうような雰囲気が漂っていた。


しかし、ネイサンはその姿に少し面食らった。


「……は? 何だよこれ? 悪魔崇拝の子羊?」


その言葉を聞いた小さな生き物は、皮肉めいた様子で鳴き声を上げた。


そして答えた。


「ふふっ、『悪魔崇拝の子羊』とは面白いことを言うね。長い年月を存在してきた僕だけど、そんなに愉快なあだ名で呼ばれるとは思わなかったよ。ちなみに、僕の名前はシトリー。そして、僕は罪のネウマさ」


ネイサンは何度か瞬きをした後、口を開いた。


「それなら、ますます『悪魔崇拝の子羊』って呼びたくなったよ」


「メェェ……。まあいいさ。僕の力があれば、君は素晴らしいことができるようになる。その中には、仲間たちを救うことも含まれているよ。あそこで、あの消しゴム男と戦っているヒーローたちもね」


シトリーは皮肉っぽく鳴きながら答えた。


ネイサンは髪に留められた角の形の髪留めに触れ、ただ尋ねた。


「それで、シトリー。君の力って具体的には何なの?」


「ふふふ、そういう質問は好きだよ。僕の能力は簡単さ。必要とされた物なら、どんな物でも創り出すことができる。生きた有機生命体は創れない。それが僕の制限だね。でも、君が必要とする物なら、現実に存在する物でも、空想上の物でも、何だって創り出せるよ。それに、もし戦いで助けが必要なら、君が気に入りそうな武器も用意してある。自分の力が何をできるのか見てみたいなら、こう唱えるんだ。『シトリー、変身させて!』」


シトリーは新しい契約者に、楽しそうに説明した。


ネイサンはただ目を閉じ、ため息をついた。


そして言葉を唱えた。


「シトリー……変身させて!」


その瞬間、白と黒の光がネイサンを包み込んだ。


やがて、彼の姿が変化していった。


彼は白、黒、灰色を基調としたベストを身につけていた。襟には白い毛皮がたっぷりとあしらわれており、胸元は開いていた。


両手には、前腕まで覆う黒い革製の指なしロンググローブを着けていた。首には六芒星のペンダントが輝いている。


ズボンは白と黒のベルボトムで、星を形作る線の模様が描かれていた。


足元には、マラカイト色のソールに厚底の黒いブーツを履いていた。


さらに、淡いマラカイト色をした特徴的なウエストポーチを身につけており、そこには五芒星が並ぶベルトの模様が施されていた。


ネイサンは自分の手を見つめた。


そして背中に何かを背負っていることに気づき、それを確認した。


そこにあったのは、少し変わった槍だった。


普通の真っ直ぐな刃ではなく、ククリのように湾曲した刃が取り付けられていたのだ。


「わあ……」


少年はそう呟いた。


そして槍の刃に映った自分の姿を眺めた。


髪は白くなり、そこには小さな三つ編みが二本できていた。


頭にあった髪留めは角へと変わり、瞳は山羊のような瞳孔を持つオレンジ色になっていた。


さらに、目の下には黒いペイントが施されていた。


『さあ、小さな芸術家さん。消し去る力を持つ相手を、どうやって倒すつもりだい?』


シトリーが心の中で囁いた。


そのとき、雄羊の力を手に入れた少年は、すでに作戦を思いついたように、口元に小さな笑みを浮かべていた。


一方、二人のヒーロー、フィーラインとサーパーは、消去能力を持つフィリアの攻撃をどうにか避け続けていた。


相手の動きがあまりにも速く、二人はぎりぎりのところで攻撃をかわすのが精いっぱいだった。


「くそっ! このままじゃ、あいつに捕まっちまうぞ!」


サーパーは苛立たしげに唸った。


「ああ、まったく気に入らない状況だね」


フィーラインもそう答えた。


フィリアは再び、ものすごい速さで二人に向かって突進した。


そのときだった。


武器の発砲音が響き、弾丸がフィリアの肩に命中した。


その出来事に、フィリアだけでなく二人のヒーローも驚いた。


「なっ!? 一体どういうことだ!? どうして攻撃が当たった!?」


フィリアは叫んだ。


「おやおや……。どうやら、あのゴム人間にも弾丸は効くらしいな」


サーパーとフィーラインは上を見上げた。


そこには、二階部分に立つ雄羊のヒーローがいた。


片手にはフィリアへ向けた拳銃を持ち、もう片方の手には、刃が羊飼いの杖のような形をした槍を握っていた。


白と黒の衣装を身につけた少年は、少し皮肉めいた笑みを浮かべながら、二人のヒーローがいる場所へ降りてきた。


「すげえ……。どうやったんだ?」


フィーラインはそう尋ねた。


「ちょっとした小技を知っているだけさ」


山羊のヒーローは、少し尊大な口調で答えた。


「ちなみに、僕のことはベレロフォンと呼んでくれ」


「忌々しい奴らめ! 全員消し去ってやる!」


フィリアはそう叫び、三人に向かって行こうとした。


しかし、今度は能力が発動しなかった。


それを見て、ベレロフォンは小さく笑った。


「どうして僕が君を撃ったと思う? あの弾丸は普通の弾丸じゃないんだよ。違う、違う。あれはあらゆるものを貫通できる弾丸で、命中した相手の能力を奪うこともできるんだ」


山羊のヒーローは、皮肉めいた口調で説明した。


「そして今から……君は倒されることになる」


そう言うと、三人はフィリアへ向かっていった。


フィリアは何かをしようとしたが、行動を起こすよりも先に、サーパーが男の手首をつかんだ。


その瞬間、アクアマリン色の閃光が広がった。


そして、フィリアは元の普通の人間の姿へと戻った。


フィリアによって引き起こされていた破壊も、すべて元通りに修復された。


三人は並んで立った。


そしてフィーラインが口を開いた。


「なあ、あの武器で相手の能力を奪うっていうアイデア、かなり上手かったよ」


「ふふっ、大したことじゃないさ。またこういう奴が襲ってきたときに会おう」


ベレロフォンはそう言うと、その場から立ち去っていった。


その後、雄羊のヒーローは人目につかない場所へ身を隠した。


そして変身を解くと、壁に背中を預け、そのまま床に座り込んだ。


「なかなかやるじゃないか、小僧。武器に対する君の好みには、実に興味をそそられるよ」


シトリーがそう言った。


「ふふ……そうだね。あまり人には話さないんだ。話したら、完全に変わり者だと思われるだろうから。僕は内向的だし、みんなに知られたら、何かすごくアメリカ的なことでもしたがっていると思われそうだよ」


「それなら、僕は今までずいぶん損をしていたようだね。おかげで興味が湧いてきたよ」


シトリーはそう答えた。


そして、さらに話を続けた。


「ところで、君にはいい意味で驚かされたよ」


ネイサンはそれを聞いて、小さく微笑んだ。


彼はその場から立ち上がった。


シトリーが姿を隠すと、ネイサンはほかの仲間たちを探しに向かった。


一方、その頃……。


フェリシアは巨大なコンピューターの画面を通して、先ほど起きた出来事を見ていた。


すると、そのとき重々しい声が響いた。


「物事が動き始めたようだな」


低く太い声がそう告げた。


「はい。罪のネウマを手に入れることはできませんでしたが、今回のフィリアはなかなか良い出来でした、我が主」


女性はそう答えた。


そして背後を振り返り、蝶の形をした眼鏡をかけた、あの暗い雰囲気の男を見た。


「次は私に、支配のネウマを使わせてください。次に誰を狙えばいいのか、心当たりがあります」


「お前がそれを取り出し、手に入れることを期待している」


暗い男は、短くもはっきりとした言葉でそう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。