第1-1話「地図にない道」
地図には、四本の街道が、描かれていた。
実際には、七本あった。
三本は、地図にない。
人が、歩いて、できた道だった。
誰も、測っていない。誰も、名前を、つけていない。
――だから、神は、それを、知らない。
二人は、その一本を、歩いていた。
東へ。
ゴーレムが、二体、後ろを、ついてくる。
片方は、左腕が、動かない。
それでも、荷を、こぼさなかった。
三日目の夕方。
道の脇に、石が、あった。
膝ほどの高さの、平たい石。
誰かが、そこに、置いたものだ。
エマが、立ち止まった。
彼女は、石の前に、しゃがみこんだ。
「どうした」
「……いえ」
「何か、あるのか」
「――ありません」
彼女は、立ち上がって、歩き出した。
若者は、石を、見た。
彼の視界に、情報が、重なる。
――石。花崗岩。重量、推定四十二キログラム。
それだけだった。
表面に、傷が、あった。
直線ばかりの、細い傷。
風化している。
――模様のように、見えた。
彼は、神に、問い合わせた。
――この傷は、何か。
> 【照会】
当該対象、表面損傷。
自然風化と、判定する。
――意味を、持たない。
彼は、歩き出した。
その傷が、二十四の文字であることを、
彼は、知らない。
そして、この世界で、それを読める人間は、
彼の三歩、前を、歩いていた。
石には、こう、刻まれていた。
> みずは、きたに、みっつめ。
> みなみは、ゆくな。




