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閉幕...ですね。





「セレナ、コレはなんだ……」

「えっと……第二王子の運命の人?です」

「……クズの相手にお似合いだな」

「……そうなんですかね」


話してる最中でも、離してもらえなくて……ちゃんと離してもらおうと胸を押したりしたんですが、びくともしないんだから仕方ないよね?……私がキャサリンと話した事でやっと存在に気づいたとでも言いたそうな目で顎だけでキャサリンを指し聞いてくるけど……。

私の答えにゴミを見るような視線をキャサリンに向けた。


「なんで……私があなたの生涯の伴侶じゃないの!?なんで……なんでその女なの!その女が死なないから!?」

「……俺はお前なんて選ばない。もし選べたとしてもだ。

俺の生涯のただ一人の伴侶はセレナで、それは生涯揺らぐ事のない唯一無二の事実だ」

「なんで!なんで!なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!」


セシル様の恥ずかしくなる宣言に崩れ落ち床に向かい壊れたおもちゃのように「なんで」と繰り返すキャサリン……。


なんで……セシル様に関しては正直譲れない。

私にとっても唯一無二の人だもん……前世も含めて、私にとって初恋で……愛する人……。


でも、幸せになる資格とか権利とかそういうのは誰にでもあって、誰にでもないんだと思う。

少しでも幸せになれるように……愛されるように……努力して前に進んで生きていかないといけないんだって思う。

それを…ゲームだからヒロインだからと努力しなかった結果だと思う。


「セレナ・フェンガリ嬢とレオナルドの婚約は無効とし、レオナルド……お前を王族から除名。

レオナルド、キャサリン・クズリスの2人を不貞行為と国家反逆罪。

ケルヴィン・オスカーは国家反逆罪及び殺人未遂。

ユーデット・ルイスを国家反逆罪。

フィルネイル・スヴェンを国家反逆罪とする。

ただちに捕縛せよ!!後、キャサリン、ケルヴィン、ユーデット、フィルネイルもレオナルドと同じく除名済みである」

「父上!!」

「黙れ!もうお前は私の子ではない!」

「ッ!!」


国王による沙汰がくだされる……。

それは凄く冷たい声だった。

私はそんなに陛下と話した事はないし、二人で話すなんて事もなかった。

最低父は一緒にいたし、親しく話した事はない。

でも、陛下は優しい瞳に暖かい声をしてた……何もかもを包み込むような。


ハッと顔を上げて泣きそうな顔で縋り付くような声をだした王子を陛下は睨みつけた。

その瞳には親子の情なんてものは欠片もなかった。


でも、ホールを後にするその後ろ姿が……私には凄く悲しそうに見えた。


この道しかなかった……のかな?


いや、わかってる……。

そんなの私が一番わかってるの……。

だって前世で私は繰り返し考えた。

私の心臓が健康なら……私の身体が健康だったら……

でも、現実は変わらない。

急に心臓が健康になるなんてありえなかったし、身体が健康になるなんてなかった……。


もしかしたら……もしこうなら……

そんな想像、意味ないんだ……。


私が選んだ道。

レオナルドが選んだ道。

キャサリンが選んだ道。

陛下が選んだ道。


それは選んだ時に決まってしまって……

結果が出てから変えられる過去なんてないんだ。



「セレナ……傷ついてるのか?」

「いいえ……こうなる事は私が行動した時に決まってた事ですから。ただ……私は弱いから、どうしようもない事をどうしても考えてしまうんです」

「……セレナ、お前は間違ってない。それぞれが選んだ結果だ。悪いのは考えが足りずに突っ走ったあいつらだ」

「……はい。わかってます」


拘束されて連れ出されていく二人と三人の後ろ姿を見つめてると腰を抱き寄り添ってくれていたセシル様が顔を覗き込んでくる。

その瞳には心配してると見ただけでわかる。

なんて優しい人なんだろう……。

微かに視界が揺れる。

私が選んだ道がこの結果に繋がった。

どんなに考えても仕方ないとわかってるのに……。

ぎゅっとまた抱きしめられ優しい言葉が紡がれる。


興味がなかった。

情すら湧かなかった。

でも、これからあの人達はどんな方法でも人生が終わる。

新しく人生を始めれるならいいけど……

処刑と罰がくだってしまうかもしれない。


どんなに頑張っても過去は変わらない。

もし少しでも情が湧いてれば……

でもそれはセシル様に出会った時点で無理な話だ。

じゃあ、もしセシル様と出会わなかった過去を選ぶ事が出来たとしても……

私は選べない……。

それだけ私にとってセシル様は大切なんだ。


だから……この結果は変わらなかったんだ。


わかってるのにな……。

幸せになるってこんなにも難しい事だったの?

私は病気だったし、好きな事が出来なかったりしたけど……。

家族に愛されて幸せだった。

つらい事もたくさんあったけど……幸せだった。


好きな事が出来るようになったのに……。

自分の幸せのために他人を不幸にするしかないの?


綺麗事だと笑い飛ばされるかもしれないけど……。


こんな結果……求めていたわけじゃないんだよ……。


でも……私はこの手を離せない。


私はセシル様の背中に手を回しぎゅっと抱きついた。

それに応えるように私を抱きしめる腕に力が入る。





「セシル様……気になってる事があるのですが」

「ん?なんだ?」

「セシル様は何者なんですか?後、普通に座っちゃだめですか?」

「セレナはここに座ってればいい。セレナ不足なんだ、このくらい許せ。

何者かはだな……フォンセ王国の王だよ。一応な」

「え……」


王城へ向かう馬車の中、いつかのようにセシル様の膝の上で横抱き状態で座る私……。

聞かないといけない事は色々あるだろうけど……

ひとまず正体と膝から下りたい……。

でも、それは許されないみたいで懇願するようなそんな目で見られたら逃げれないってまじで……とか一人で文句を考えてると予想外の答えが返ってきた。


気になっては居たんだ。

でも、子どもの時はその国を知らなかったし……。

その国名を耳にしたのもここ最近で……繋がりがあるのかないのか情報が足りなかった。

それにその国は遠くて……この国まで正しい情報は入ってこなかった。


フォンセ王国。

元は魔国と呼ばれ、魔族が住むと言われ……

魔王と呼ばれる最強の魔族が率いる国だとされていた。

閉鎖的な国で実態が掴めない、謎の多い国。


その国の王が変わり、外交が始まったと噂になってた。

その国の国王……?

は?


「……魔族が住む国と言われてるが間違いではない。

所謂、人間と少し違う特徴を持つ人種が集う国だ。

見た目が人間のそれと違う者、魔力が高すぎる者、寿命が長い者様々な者達が住む国だ。普通の人間ももちろんいる。だが、人は自分達と違う者を受け入れられないだろう?迫害されたり、そういう者達が集まって出来たのが魔国、フォンセ王国だ。

ちょうどセレナに出会った頃、前国王……魔王の寿命でな。俺はその次期国王の最有力候補だった。なりたかったわけじゃない。自由に旅をして好きに生きたかったし……でも、守られないと生きていけない者達がいる。それが出来るのにしないのは責任放棄だろ?それで、国に戻って実力主義だから王を選ぶ儀式をこなして居たんだ……手紙すら出せなくなると思わなかった。悪かった……セレナ」

「……寂しかった。もしかしたら私以外に誰か見つかって忘れられたんじゃないかって……」

「セレナ……それはない。でも、悪かった…本当にすまない」

「でも……凄く大変だったんですね。そして約束通り迎えに来てくれた。もうそれだけで充分です。

これからはずっと側で支えさせてくれるならそれでいいんです」


セシル様も大変だったんですね。

それでも忘れずに迎えに来てくれた……。

だから少しだけ泣き言を言うけど……

もう充分幸せなんですよ?

これからはずっと側で支えたいんですよ。


少し身体を捻りセシル様の首に腕を回しぎゅっと抱きつく。


もう離れるなんて嫌ですよ。


「あぁ……もう離さない。ずっと隣にいてくれ……愛してるセレナ」

「はい。離さないで下さい。ずっと隣にいさせて下さい……愛してます、セシル様」


これからどんな事があってもこの人が隣にいてくれるなら乗り越えられる。

そんな確信を持ってしまうくらい……この人の隣は安心出来て心強い。


ぎゅっと抱きしめられてから少し身体を離されるとセシル様の顔がゆっくり近づいてきて瞼、頬と口付けられ……

少し驚いて目を閉じると唇に優しく温かい物が重ねられる。

それがキスだと気づいたのは何度か啄まれた後で……

酸素を求めて漏れた声が自分の物とは思えないくらい熱を帯びていて、それが凄く恥ずかしかったのに力の抜けた口をペロッと舐められて唇がこじ開けられするりと何かが侵入してきた……

すぐに舌だと気づけたけど、どうすればいいのか分からずに自分の舌を逃げるように動かそうとしたけどすぐに捕えられ……絡まされ、吸われる……。

どんどん深くなる口付けに翻弄されながらついていくので精一杯で……

ちょっと……悔しかった……。


私のファーストキスだったのに……前世も合わせてもね……。


その後、王城に着いたけど……セシル様が離してくれなくて兄が呼びに来た時に現実に引き戻されて慌ててセシル様から離れた。




あれから一週間……。


裁判が速やかに済まされた。

証拠は山のようにあるし、証言も同じく……

レオナルドはすぐに罪を認めた事もあり、幽閉されたらしい。

キャサリンは罪を認める所か狂言を繰り返し裁判にすらならなかった上、暴言も激しく……平民として秘密裏に処刑されたらしい。

他、三名は何もかもを取り上げられ平民として生きて行くか、処刑されるか選ぶように言われて……

正気に戻り、記憶が曖昧ながらも自分のした事に耐えられないと処刑を選んだケルヴィン以外は、平民として生きる事を選んだとセシル様が教えてくれた。


キャサリンに至っては処刑までの一週間……男女の区別のない牢に手違いで入れられ……正気を保っていられなかったと噂で聞いた。


手違い……ね。





私と言えば……

いつなん時もセシル様が離してくれないと言うような状況で……

罪人達のその後の話以外は常に行動を共にしていた。


私に関しては、前々からフォンセ王国から打診があったらしく……。

セシル様の側近らしい方と話し合いの場が持たれていたらしい。

しかもだ……父と兄は私の婚姻と同時に共にフォンセ王国に移動すると決めていたらしい。

娘、妹離れしようよ……。


私が魔術師として実績を上げすぎた事と、父と兄が国を出る事に反対する声が大きかったから話し合いは難航し、何故か私に一切を話さないと言う……

初めて父と兄を嫌いになりそうだと思ったのは内緒。


私は成人を待ち、諸々の準備期間として半年婚約期間とし嫁ぐ事に決まった。


いますぐ持ち帰りたいと言うセシル様を父がどうにか帰らせる事に成功してたけど……。


半年も離れる事に軽く暴走したセシル様にギリギリまでめちゃくちゃにされた……。


だから何もかも初めてなんだと泣いた私に魔王と呼ばれるセシル様が笑える程、狼狽え謝られた。



「セレナ様……とても美しいです」

「ありがとう……モニカ」

「お嬢様……とはもう呼べないんですね」

「ヨゼフ……泣かないでよ」


半年後、私の結婚式。

父と兄は本当に私と共にフォンセ王国に来た。

兄は私の護衛に、父はセシル様の補佐に……

よく陛下が許してくれましたね。って言うと二人してニッコリ笑い「とても平和的な話し合いの結果だよ」と息ぴったりに答えてくれた。


……なんでかな。

脅迫したんだろうなって思った。


使用人は全員、紹介文を持たせ再就職してもらうつもりだったらしいけど……。

独り身で、ずっと一緒にいてくれたモニカと子ども達も立派に育ち、奥さんに先立たれたヨゼフは付いてきてくれた。

環境が変わる私からしたら凄くありがたい話だった。

身の回りの最低限は出来るけど、足りない事があるし……

セシル様や父や兄もいるけど……

見知った顔が多い事に越した事は無いもんね?


私は白いマーメイドタイプのドレスに身を包み。

セシル様の元に歩いていく。


父と兄は少し不満そうな……なんとも言えない笑顔で私を見てる。

複雑になるからやめて……。


「セレナ、凄く綺麗だ……」

「ありがとうございます。セシル様は素敵すぎて……なんか泣きそうです」

「泣き顔は好きだが……夜に鳴かせたいな」

「……もう。恥ずかしいからやめてください!」


セシル様にエスコートされつつ小声で話す……。

軽い下ネタに涙は吹っ飛んだけど……恥ずかしいわ!!


前世では想像すら出来なかった……。

恋をして……結婚する自分を……

諦めていたから……


前世では無理だったけど……でも、それでよかったって今なら思えるよ。


私の運命の人はここに居たんだもの。

前世でも今世でも……来世だって……私はきっと、いえ……絶対この人に恋をする。


私はこの人に出会うために生まれ変わったんだ。


「愛してる……セレナ」

「愛してます……セシル様」












end







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