表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/59

28話 後悔と班分け

登場人物の番号と種族

14209番(主人公)

14210番(狐獣人)

11054番(女エルフ)

13882番(人間・少女)

07241番(熊獣人)

08511番(女竜人)

 避難民の男と別れた俺たちは、刻印持ち専用の宿へと戻った。

 少し前に誰もいない屋敷で眠ったがやはり「安全が約束されている場所」とそうでない場所とでは、心の持ちようが天と地ほども違う。

 俺はすぐに自室へと戻り、簡素なベッドに寝転んだ。開け放った木製の窓から差し込む夕暮れの光と風が心地いい。壁の向こうから微かに聞こえてくる街の喧騒が、逆になんだか酷く遠い世界の出来事のように思えた。

 脳裏をよぎるのは、不毛だと分かっている「たられば」の仮定だ。

(もし、ククルちゃんの店の前で視線を感じたあの時。俺がすぐに引き返して彼らに話しかけていたら……あの地下室で食い散らかされていた女性を、助けることができたんだろうか)

 そんな暗い後悔がぐるぐると頭を支配していたが、疲労には勝てず、俺はいつの間にか意識を失うように眠りに落ちていた。

 翌朝。

 開け放ちっぱなしだった窓から差し込む強い日差しと、小鳥のさえずりで目が覚めた。早朝特有の、少しひんやりとした風が肌を刺す。

(あのまま朝まで寝ちゃったのか。夕飯の時にみんなとこれからのことを話すつもりだったのに……)

 俺は軽く頭を振りながら部屋を出て廊下を歩き、食堂へと続く階段を降りた。

 まだ早朝ということもあり、人の気配がないガランとした食堂で、俺は水瓶から木製のコップに水を注いだ。奥の壁際の席に座り、冷たい水を喉に流し込む。乾いた身体に染み渡る感覚が、少しだけ沈んだ気持ちを落ち着かせてくれた。

 いつもなら時間が経つにつれて騒がしくなるはずの宿だが、今朝は静かだった。その静寂は、女竜人と狐獣人が食堂に降りてくるまで続いた。

「おはようさん、14209番。昨日はあのまま部屋に直行してグッスリだったか?」

「14209番、おはようございます」

 二人に声をかけられ、半分瞑想のようになっていた俺はハッと我に返った。

「二人とも、おはよう。グッスリっていうか……気がついたら朝だったよ。でも、おかげで体はしっかり休まった気がする」

 挨拶を交わして三人で他愛のない雑談をしていると、残りのメンバーも階段を降りてきた。

「おはよう。皆、昨夜はしっかり休めたか?」

 低い声でそう尋ねてきたのは、やはり一番タフそうな熊獣人だ。

「三人は起きるのが早いわねぇ〜。私は13882番(少女)に揺り起こされるまで、ベッドから出られなかったわよ〜」

 小さくあくびをしながら、女エルフが席につく。

「昨晩は……その、なかなか寝付けなかったので、ボクは少しだけ眠いです……」

 少女は少し眠たげに目をこすりながら、俺たちのテーブルへと加わった。皆それぞれに水瓶から水を注ぎ、席を埋めていく。

「……そういえば、昨日すれ違った他の勇者パーティーが、任務の話をしていたのですが」

 狐獣人がふと思い出したように口を開いた。

「どんな話だ?」

「屋敷の地下に現れた、隠し通路の調査についてです。内容からして、おそらくあたし達が最初に見つけたあの地下室の穴のことだと思います」

 熊獣人の問いに、狐獣人が記憶をたどるように答える。

「なるほどな。他のパーティーが地下の穴を調べてくれるなら、俺たちは他の生存者の捜索と、外での狩りに専念できそうだな……と。とりあえず朝食を頼んでくる」

 熊獣人はそう言うと席を立ち、カウンターへ向かった。しばらくして、彼が運んできた出来立ての朝食を囲みながら、俺たちは話を再開する。

「生存者の捜索に注力できるのはいいけれど〜、食料確保の狩りも並行して行うなら、少し効率が悪いわねぇ。班を二つに分けた方が良くないかしら〜?」

 女エルフの提案に、俺はすぐに頷いた。

「そうだね。俺も11054番(女エルフ)に賛成だ。捜索の方はエリクさんたちの力も借りれば人員は増えるし、それと並行して外で動物の狩りを進められるなら、その方が確実に合理的だ」

「ボクも……賛成です」

「だが、半分に分けるとなると、ある程度の戦力バランスを考えなきゃいけねぇだろ? 主戦力である前衛のオレと07241番(熊獣人)は別々の班に分かれるとして、他はどう配置する?」

 女竜人が黒パンを咀嚼しながら、もっともな懸念を口にする。

「07241番(熊獣人)を『狩り班』の頭に、08511番(女竜人)を『生存者捜索班』の頭にする。そこを軸としてメンバーを振り分けるのはどうでしょうか?」

 狐獣人の提案に、熊獣人が大きく頷いた。

「そうだな。万が一、外の狩りで危険な原生魔獣に狙われた場合、俺の大盾による防衛線が必要になる。それなら、俺がメンバーを分けさせてもらってもいいか?」

 全員が了承すると、熊獣人は一同を見渡しながら告げた。

「『狩り班』の残りのメンバーは、11054番(女エルフ)と14210番(狐獣人)にしたい。理由は二つだ。まず、11054番の射手としての腕前は一級品だ。広大な外での狩りに、彼女の精密射撃を活かさない手はない。そして14210番は、外で何かイレギュラーがあった際、その脚力を活かして瞬時に街へ情報を伝達する連絡役を兼ねてほしい。もちろん、近接戦闘のサポート能力も高いからな。……どうだ?」

 熊獣人の采配に、女竜人が不敵に笑う。

「オレは異議なしだぜ。街の中より外の方が状況が変わりやすい。14210番の速さと、11054番の急所を的確にぶち抜く弓の腕を外に回すのはベストな判断だ」

「ボクも……賛成です!」

「俺も賛成。街の中の生存者捜索は、俺たちに任せてくれ」

 これで班分けは決まった。

 俺たちは各々の役割を頭に叩き込みながら、朝食を再開した。相変わらず硬い異世界の黒パンを、少し味の薄い野菜スープで流し込む。食事を終えた俺たちは席を立ち、それぞれの任務に向けて宿の外へと足を踏み出した。

今回も読んで頂きありがとうございます!(´▽`)

読者の皆様に、楽しんで頂けたら幸いです。

数日以内に次回を投稿する予定です!


「面白かった」「次回も読みたい」と思われたら評価・ブックマークをお願いします!

感想もお待ちしてます!

皆様の反応をモチベーションにして頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ