26話 休息
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
犠牲者の火葬を終えた俺たちは、エリクさんに遺骨や遺灰の回収を託した。屋敷内の安全を確認した後、彼が差し入れてくれた食事を囲む。
塩気の利いた肉と野菜を柔らかなパンで挟んだサンドイッチ。それに冷たい水は、疲弊しきった身体の隅々にまで染み渡るようだった。
この屋敷は魔族の襲来以前、ある貴族の邸宅だったという。所有者が最初の襲撃で亡くなってからは、避難所や集会所のような役割を果たしているそうだ。
幸いにも巨大ネズミ(アルビノ・グナッシャー・ラット)の侵入は免れたようで、室内は少し埃っぽい程度で荒らされた様子はない。
食事を終えた俺たちは、それぞれ空いている部屋で眠りについた。
あんな凄惨な光景を見た直後だというのに、驚くほど食欲があり、ベッドに横たわると同時に意識を失った。それほどまでに、俺は限界だったのだ。
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「14209番、起きて〜」
女エルフの間延びした声が、微睡を揺らす。
ゆっくりと目を開けると、すぐ間近ににっこりと微笑む彼女の顔があった。
「うわあっ!?」
反射的に飛び起きると、彼女はクスクスと楽しそうに笑い、俺のベッドの端から腰を上げた。
「おはよう。ぐっすり眠っていたみたいね〜」
「う、うん。おはよう……」
俺は早鐘を打つ心臓をなだめるように、深く息を吐き出した。
「今、どのくらい経ったかな?」
気恥ずかしさを誤魔化すように、窓の外へ視線をやる。
「私たちが寝たのが明け方だから、お日様の位置からして……大体お昼くらいかしら〜?」
どうやら六時間ほど眠っていたらしい。
ふと思い立ち、右腕を動かしてみる。寝る前は指先を動かすのが精一杯だった腕が、今は細剣を握る前のような確かな感覚を取り戻していた。
握り、開き、一本ずつの指の状態を確かめる。ククルの「調律」と休息が、確実に効いている。
「右腕の調子、戻ったみたいね。さあ、早くみんなのところに行きましょ〜」
「……そうだね」
彼女に促され、俺はベッドを降りて部屋を後にした。
出入り口付近の広間へ向かうと、既に仲間たちは集まっていた。熊獣人がエリクさんと熱心に言葉を交わしている。
「みんな、おはよう」
俺の声に全員が振り向く。
「14209番、しっかり休めましたか?」
狐獣人の問いかけに「自分でも驚くくらいにはね」と返すと、彼女は安堵したように微笑んだ。
女竜人と少女とも短く挨拶を交わし、俺は熊獣人のもとへ歩み寄る。
「おはよう、07241番。エリクさんも、こんにちは」
「ああ、おはよう。ちょうどいいところに来た」
熊獣人が、深刻な顔で頷く。
「何を話していたんです?」
「地下室で見つかった『穴』のことだ」
エリクさんが説明を引き継いだ。
「床が崩落して現れた穴なんだけど、大人が立って歩けるほどの高さがある。二人並んで進めるくらいの幅もあって、先は真っ暗で底知れないんだ」
「その穴を、俺たちが引き続き探索するかどうかを相談していたんだ」
熊獣人の言葉に、俺は少しの間沈黙して考えを巡らせた。
「……今は止めておくべきだと思います。俺たちの装備は現在修理と改修に出していて、身につけているのはすべて代用品です。それに、戦闘で14210番の短槍も壊れています。先に何があるか分からない以上、万全の態勢で挑むべきです」
俺の判断に、エリクさんは「そうだよねぇ」と困ったように頭を掻いた。
「この区画の避難民を安心させたいのは山々なんだけど……もし穴の先に『何か』がいた場合、今の街の兵士たちでは太刀打ちできない可能性が高いからね」
俺たち第32班だけでは、圧倒的に人手が足りない。
その後、全員で協議した結果、今後の方針は以下のように決まった。
• 第32班は装備の修理が完了するまで、避難民区画の調査、および王都外での野生動物の狩猟(食糧確保)を主目的として動く。
• 任務の連続による疲弊を考慮し、諸々の完了までエリクさんが「王」へ働きかけ、調整を行ってくれる。
刻印から下される任務は完全なランダムではなく、発行側である程度の設定が可能らしい。
といっても、任務のカテゴリー(討伐、採集、警備など)や、任務達成から次が発生するまでの猶予期間を調整できる程度で、詳細な内容までは指定できないとのことだが、今の俺たちにはそれだけでもありがたかった。
束の間の平穏を確保し、俺たちは一度、刻印持ち専用区画へと戻ることにした。
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