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魔法少女と呼ばないで  作者: どり
第7章 姉
38/50

38.指輪

 この指輪は魔力はないみたいだけど、本当はすごい魔力があるんですよね。だから心臓に直結しているという薬指にはめるんですよ。知ってました?

 アンジェリーヌ・エバ・オッフェンバッフ・・・

オッフェンバッフ!?


「ラバの名字じゃないの。それ・・どういうこと?」


 もちろん、オッフェンバッフは僕の家だ。

そして・・・アンジェリーヌは、忘れた姉のこと。


 ずーと昔、僕がまだ5才にもなっていないころ。

姉がいた。僕はその姉になついていたらしい。

でも、いつの間にか姉は消えてしまった。

僕は寂しくて泣いていたらしいけど、それは小さな頃の話し。


 だいぶ経ってから、ふと、姉のことを、両親に尋ねた。

返事は、どこかへ行ってしまった。

きっと死んだに違いないと・・・

両親の顔をよぎった表情に、ぼくはそれ以上聞いてはいけないと思った。

そして、できるだけ話題にすることを避け、忘れるようにしたんだ。


 その姉の名前が、ここで出てくるなんて・・・・

姉が消えてしまった訳は、伯爵が原因だったのか!?

でも、その姉は一体どこへ行ってしまったというんだ。

それは伯爵もわからないと言っているし。


「でも、どうしてその名を、魔来子さんが知っているの?」

 佑衣さんも訳が分からないという顔。

それは僕も一緒なんですけど。

魔来子さん、あなたは一体何を知っているんですか?


☆     ☆     ☆     


「これを・・・・・これをそなたに・・・・・」

 僕たちが呆然としている間に、伯爵はわずかに手を動かしている。

その指が持っているものを、魔来子さんの左手の指にはめている。


「あの、これは?・・・・・・なんということを。伯爵様・・・・・」

 魔来子さんはむせび泣いている。


「これでよい・・・・これでもう、思い残すことは何もない。ありがとう・・・・・

あの少女の面影を宿す淑女・・・魔来子とやら、深く礼を言う・・・・」


「伯爵様!」


 魔来子さんが涙声で叫んだ。

握りしめていた伯爵の手が、ゆっくりと下に降りる。

その手からは少しずつ、パラパラと土が落ちていき、やがて伯爵の全身が埃と化す。

全てが落ち着いたとき、そこには伯爵の服とうずたかく灰の山があるだけ。

その灰もふわふわと飛び散りながら、どこかへ消え去っていく。


「伯爵の未練が消えてしまった以上、もう土に帰ったということよ」

 オネクターブが無感情に言う。


 その声を聞いて、泣いていた魔来子さんがスクッと立ち上がった。


「オネクターブ、そなたは絶対に許しません!

伯爵の想いを愚弄したこと。伯爵の傀儡を作り、利用し、私利私欲のために伯爵の名を使ったこと。

伯爵の名で、村や南の国に侵攻し、多数の死傷者を出して、悲しみを広げたこと。

フェルゼンシュタインの名において、そなたに重罪を申し渡します!」


 そのリンとした声に、その場の全員が身動き一つできなかった。

何という迫力。

たしかに元々魔来子さんは迫力あったけど、さらに威厳が加わっている。


「な、何のこと?あんたに何の権利があって、そんなことを言えるの?」

 さしものオネクターブも目を白黒させている。


「これをご覧になってくださいませ」

 魔来子さんは左手をみんなに見せる。

その薬指には、金色に輝く太めの指輪が!

あんなの、いつはめたんだ?


「そ、それは、伯爵家の結婚指輪!」

 オネクターブの震える声。


「さっき、伯爵がはめていたのは、あれよ!」

 佑衣さんが叫ぶ。


 け、結婚指輪・・・・!?つ、つまり・・・・

「魔来子さん、結婚したということ・・・・なんでしょうか?」


 魔来子さんは微笑んでいる。

「ええ・・・気がついたら、無理矢理という感じはありましたけど、伯爵様にこの指輪を頂いてしまいました。

頂いた以上は、私はフェルゼンシュタイン伯爵の妻でございます。

本人が亡くなっているからには、未亡人でございますけど。

 妻である以上は、伯爵の権利、義務を負う責任があると思っております。

伯爵の名を汚すような者は、直ちに成敗せねばなりません。

オネクターブ、覚悟はよろしいですか」


「な、なにを、なにをあなたは言っているんですか?訳が分かりません!

伯爵は三年前に亡くなっているんですよ!その人と結婚できるわけないじゃないですか!?」

 頭を抱えて喚いている。


「その亡くなった人の想いを甦らせ、傀儡を作ったのはあなたでしょう。その傀儡の伯爵様から頂いたのですから、間違いなく結婚は成立ですわ」

 魔来子さんは言い放つ。


「皆さんの中で、この伯爵家の指輪に逆らうおつもりがあるのなら、今この場で出てきてくださいませ。私が根性を試めさせていただきます」


 僕はその時に、やっと周りに気がついた。

いつの間にか、扉の所に人垣が出来ていた。

朝議に来ていた家臣たちだ。

その家臣達も魔来子さんの指輪を見て、ひそひそ話している。

やがて一人が進み出てきて言う。


「我々家臣団は、指輪をお持ちのそなた、魔来子様を、伯爵の奥方と認めます。

伯爵が亡くなっていることが公になった以上、あなた様がフェルゼンシュタイン家のご当主でございます」


「な、何を言ってるんですか?そんなどこの馬の骨ともわからぬ女を奥方だの、当主だの、

なれる訳ないじゃないですか!?」

 オネクターブが青ざめている。自分の不利が実感できたようだ。


「あら、どこの馬の骨ではありませんことよ。私は、皆さんのよくご存じの女性でございます」


・・・いったい魔来子さんは何を言うつもりなのですか?

佑衣さん、魔来子さんって、いったい何者なんでしょうか?

 

さて、次回の予告。


 ひえ~、魔来子さんが奥方様になっちまったい。(笑)

 本当にこの話、どうなるんだ? 魔法少女はどこへいった?(爆)

  あ、いなくなってるんだっけ。(笑)

 次回: 第7章 姉 第39話 魔来子さんの過去 

 刮目して待てっ!

 (サブタイトルは変更する可能性があります。ご容赦下さい)


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