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魔法少女と呼ばないで  作者: どり
第4章 村(ザ ヴィレッジ)
24/50

24.戦略的転進(要は敗北)

 おお、気が付けば4章が完ではありませんか。

村の話、長かったですね。すみません。

でも、物語の発端ですから、しょうがないかな。

おつきあい下さいまして有り難うございます。

 ”獅子”地上軍の足音が立てる猛烈な振動に耐えながら、

僕は必死でグレネードランチャーの引き金を引いた。

高性能爆弾が立て続けに飛んでいく。


 効かない。

いや、それで一頭は吹っ飛んでも、すぐその後に続いてやってくる。

キリがない。全部を吹っ飛ばすだけの弾薬がない。

損害を省みず、どんどん突っ込んでくる。


「何よ!獅子っていうより、イノシシじゃない!」


『お嬢様、適切な表現ですが、状況に変わりありません』


 魔来子さんは上空から煙幕弾を落として、視界を遮っているけど、

前に進むしか脳がない奴らには効いてない。


『後退を、撤退してください!』

 魔来子さんの叫び声を聞いて、反射的に後ろを見た。

森が広がっているだけ。身を隠すような岩場も何もない平坦地。


「魔来子さん、すぐ迎えに来て!」


「何よ、ラバ!あんた、もう逃げ出す気?この、ヘタレ!!」

 抵抗する佑衣さんの手を引っ張って、走り出す。

もう片手には荷物と銃。

どう考えたって、”獅子”どもの方が速い。

魔来子さん、早く!


 僕の願いに答えるかのように、目の前に魔来子さんが着地!


「この先の岩場まで、佑衣さんを連れて、飛んでください!」

 そう叫ぶと、佑衣さんを押しつける。


「ラバ様は?」


「僕はここで時間稼ぎをします。佑衣さんを置いてきたら、迎えに来てくださいね」

 呆然と見ている魔来子さんの両腕の中で佑衣さんはもがいてる。


「ちょ、ちょっとラバ、ダメよ、こんなの、あたし、許さない!あたしも一緒に闘う!」


「早く!あいつらが来る!」

 魔来子さんが飛翔する。


「必ず戻ってきます。それまでご無事で!」


「お願いします。僕もここで踏みつぶされたくはないですから!」


「ラバ!ラバー!」

 佑衣さんの声が遠く、小さくなる。

代わりに大きくなるのは、獅子どもの足音。

なんか、夢で見たな、こんなの・・・・僕は一人で笑った。

でも、今度は夢と違うぞ。


「さて、オッフェンバッフの本懐、見せてやるとしますかね」

 そう僕はひとりごちた。

 さっきまで僕たちがいたところに、わざと置いてきた袋。

その中身は弾薬で一杯。どこをどう刺激してやれば爆発するのか、もう分かっている。

もう少し近づけ、ほら、後ちょっと・・・・・よし!


「雷よ、とどろけ!・・・落ちろ!!」


 全魔法力で獅子の足下に雷を落とす。そこには置いてきた現代魔法の弾薬に・・・火がついた。

猛烈な爆発が起きる。火柱、轟音、強烈な爆風。入っていた爆弾が誘爆してる。

 一緒に入っていた催涙弾も爆発した。

強烈な刺激にさしもの獅子も足が止まっている。

首を振るもの、地面に顔を擦りつけるもの、逆方向に逃げ出すもの・・・

兵士達も目をかきむしる者や、涙を流す者でいっぱいだ。


 催涙ガスを逃れた敵が矢を射ってくる。


「アイギスの楯!」

 空中に防御の光が集まり、矢を跳ね返す。

数本の矢が当たっても、現代魔法の防弾ベストが守ってくれている。


「火の精霊、姿を見せろ。そして燃え上がれ!」


「風の精霊、吹き荒れろ!その姿を現し、我が命を聞け!!」

 立て続けに魔法を発動する。

燃え上がった兵士達が木立と共に吹っ飛ばされていく。

喘ぎながら僕は片膝を付いた。


「はあ・・・・はあ・・・・魔法力、使いすぎ。もう限界・・・・」

 もうちょっと長持ちするやり方、勉強するんだった。

やっぱり授業をさぼっちゃいけない。

・・・あ、村の学校、もうないんだな、これが。

現れた魔来子さんに抱えられたとき、僕は半分気を失っていた。


   ○     ○     ○     


「バカラバ、バカラバ!」

 佑衣さんは泣きじゃくって、僕にしがみついてきた。

僕が死ぬつもりだって、勘違いしたらしい。

いや、僕が残って足止めするしかないでしょう?そう言ったつもり・・・・


「バカーッ!」

 至近距離で鳩尾に一発。ウゲ!効くっ・・。


「今度こんなことしたら、許さないからね・・・・いい?御主人様として下僕に言ってるのよ!分かった!?」

 はい。分かりました・・・・とほほ、苦しいのやら、うれしいのやら・・・・・


 三人は高い岩場の上。

足下には、爆発や火炎の跡が見えている。獅子どもの残骸も転がっている。


「文字どおりの”死屍累々”でございますわね」

 魔来子さん、ナイス。それ、シャレなんですね。

 

 その敵も撤退したようだ。

遠くには壊滅した村も見えている。


「これからどうしましょうか?ラバ様」


「この先に、村の子供達の遊び場だった洞穴があります。そこで一夜を過ごしましょう」


 その時だった。

微かな物音に、反射的に動いたのは佑衣さんだった。

彼女のナイフが僕の背後に飛ぶ。


 そこには少女が、その胸にはナイフが刺さっていた。

その子は音も立てずにゆっくりと崩れ落ちる。

佑衣さんの悲鳴が響いた。



 大丈夫です。この子は死にません。

今は死にそうですけど、ちゃんと元気になります。

うう、22話の後遺症(笑。


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